第16話

あとティーナに手を貸してくれそうな人は家族ぐらいしかいない。


王妃にユーグの弟やその婚約者、宰相など何人か頭の中に思い浮かんだ人はいるが、その人達も陛下と同じようにユーグの言いなりになっている気がした。



唖然としていたティーナは気持ちを整えて、少し早口になりながらも次の策を打つ。



「私の悪評が広まるとクイーズ家の名にも傷がつきます。父や兄に迷惑がかかるのではないでしょうか?」



今ならまだ修正が出来る。


ユーグに連れていかれて牢屋に入っている身ではあるけれど、釈放されて行き違いがあったと各方面に説明すれば互いに傷は少ない。


王太子妃の立場に戻してもらえれば、挽回の可能性は十分にあるはずだ。



父や兄だってその方が喜ぶだろう。


ティーナが目標に向けて頑張っていたことも知っているし、王太子妃の家としての誇りも持っていた。


ティーナの立場が上がるほど、彼らが手を広げられる幅も伸びる。その逆になってしまえば一緒に地に落ちるだけだ。



「問題ないよ。彼らには良い地位を用意して納得してもらったから」


「ですが、私が牢屋に入っていることは多くの貴族が知っています。父達への風当たりが強くなると思います」


「それも大丈夫。ティーの記憶を人々から抹消するために上書きでいくつか噂を流すつもりだから、ティーが心配するようなことは何一つないよ」



どうにか理由をつけてここを逃げ出す糸口を見つけ出そうとするけど、迷いなくティーナの問いに答えるユーグに綻びは見つけられない。



この後もいくつか気になることを質問したが全て準備を終えているらしく、すんなりと返答される。


ティーナが色目を使って誑かした男が万が一にもティーナを探し出そうとしないように書類上、辺境地にある修道院に向かったことにするらしい。


その修道院はユーグが既に買収済みでティーナがそこにいなくても、存在していることにしてくれるそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る