序章

第1話

灰色の空が広がり、今にも雨が降り出しそうな今日。



陛下から国全体にある発表があった。


その内容に貴族や商人、平民、孤児など身分を問わず悲しみ、嘆き、惜しみ、一人の立派な方へと思いを馳せて王都の中央に構える城へと目を向ける。



『我が国の王太子ユーグ・トズベルンが病のためにその地位を降り、治療に専念する。また、第二王子ドーナ・トズベルンを新たに王太子に指名する』



第一王子のユーグ・トズベルンは一つの悪評もなく、非の打ち所がないほどに優秀で民にも優しい。



将来は理想的な王になると言われていた。



教えられたことはすぐに飲み込み、挨拶を交わせば身分が低い者の名前でも忘れない。


とても努力家であり、勉学と共に毎日のようにたっぷりの汗を掻いて剣を振り、腕の立つ剣士でもあった。


時にはお忍びで訪れた先で自らを危険に晒してまで平民を守ったという噂も聞く。



何よりもユーグ・トズベルンの功績と言えば、この国で知らない人がいないほど有名な話がある。


十年前、国で固く禁止されている奴隷を水面下で勝手に作り出している下衆貴族がいた。


奴隷にされていたのは、その下衆貴族が管理する孤児院の子供達。


国から各孤児院には一定の額が支給され、そのお金は孤児院の運営や子供達の食事、衣類や医療費などに使うためのものであった。


しかし、そのお金を己の懐に入れ、子供達を酷い環境下に置いていた。


一日二食の食事内容は小さなパンと味の薄く量の少ない野菜スープ。躾と称して頬を叩いたり、極寒の日に薄着で外に放り出したりと随分な有様だった。

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