第2話

いっくんのサラサラな黒髪を風が弄ぶ。そんないっくんの首には彼が世界で一番大切にしているカメラがぶら下がっていた。


穏やかな顔で私を見つめるいっくんのはいつもいつも私に優しい。




「こんな日向にいたらだめだよ」


「大丈夫だよ。ちゃんと飲み物も持って来てるし」


「…ちょっとだけだからね」


「はーい」




季節は、夏。


ジリジリと照りつける太陽の熱は私から体力を奪っていく。だけど一日中家の中に篭っていたらここに来た意味がない。それは前と同じ生活だ。



家の中でただじっとして、決まった時間になったらお腹が空いてもいないのにご飯を食べて寝て、時々お母さんと病院に行く。その繰り返し。そんなのはもういやだ。




「ねぇ、さっちゃん」


「うん?」


「…もう、あの街には戻らない?」




いっくんが懐かしそうに私の隣にあるブランコに座るとキッ、とブランコの座る部分を支えている金属が擦れる音がした。



隣をちらりと見るといっくんも私を見ていて、その瞳はとても寂しそうな色をしている。


いっくんは私の答えを知っていた。


私がここに来た理由も伝えてある。

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