第3話 ツェリェよりー絵葉書の向こうに広がる冒険
親愛なる孫たちへ
ババは今、スロベニアのツェリェという街にいるの。
ここは「ツェリェ伯爵」と呼ばれる貴族たちが治めた歴史ある街で、古城が今もそびえているの。
でもね、この街にはただの歴史じゃなくて、少しミステリアスで悲しい伝説が残っているの……今日はそのお話を書いて送るわね。
ツェリェに着いてまず訪れたのは、街のシンボルでもあるツェリェ城。
高台にあるこの城は、かつてスロベニアで最も強大な貴族、ツェリェ伯爵家が暮らした場所よ。
だけど、この城には「悲恋の伝説」があるの。
お城の案内人のマルコさんが、静かに話してくれたわ。
むかしむかし、この城にフリードリヒ二世という伯爵の息子がいたの。
彼は下町の貧しい娘ヴェロニカと恋に落ちたけれど、身分の違いから父に大反対された。
それでも二人は愛を貫き、ひそかに結婚したのよ。
でも、怒った伯爵はヴェロニカを捕らえ、なんと城の塔に幽閉してしまったの。
その後、彼女は「魔女」の烙印を押され、処刑されてしまったんですって……。
マルコさんは最後に
「今でも霧の濃い夜には、ヴェロニカの涙のように冷たい風が城を吹き抜けるんだ」
と言ったわ。
ババは思わず、塔の窓をじっと見つめてしまった。
もしかしたら、ヴェロニカの悲しみが、今もこの城に染みついているのかもしれないわね。
そんな少し切ない気持ちのまま城を後にすると、マルコさんが
「気分を変えて、この街の温かい味を楽しんでほしい」
と案内してくれたの。
向かったのは、小さな家族経営のレストラン。
そこで、ババは「ポハニ・シル」という料理をいただいたのよ。
これは、スロベニア風の揚げチーズ。
外はサクサク、中はとろりとしていて、パンと一緒に食べると最高だったわ!
あなたたちも絶対に好きな味よ。
帰ったら一緒に作ってみましょう。
食事のあと、マルコさんに
「もう一つ、面白い場所があるよ」
と連れて行かれたのが、
「プリンセス・ヴェロニカの泉」という場所。そこには、小さな泉がひっそりと湧いていて、地元の人は
「この水を飲むと恋が成就する」
と信じているの。
だけど、おばあちゃんは不思議なことに気づいたのよ。
泉の近くの石に、かすかに何かの文字が刻まれていたの。
「これは何?」
と尋ねると、マルコさんは目を丸くして
「そんなものがあったのか?」
と言ったの。
でもね、よく見たら、古いスロベニア語で「真実の愛は永遠に」という言葉が刻まれていたの。
もしかして、フリードリヒが愛するヴェロニカのためにこっそり残したメッセージかしら?
……そんなふうに思ったら、泉の水がキラリと光った気がしたわ。
こうして、ツェリェでの一日は過ぎていった。
この街は、ただの歴史都市じゃなくて、愛と哀しみ、そして不思議な魔法が息づく場所だったの。
ババは、お城の絵が描かれた素敵な絵葉書を買ったから、これにこの手紙を添えて送るわね。
次の街の絵葉書も楽しみにしていて!
愛をこめて、ババより
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