章の締めくくり

志月は目を覚ました。部屋の天井がいつもと同じように広がっている。静かな朝、太陽の光がカーテンの隙間から差し込んでいるのがわかった。何もかもが、普通の一日が始まったように思える。


けれど、心の中では何かが違っていた。


夢の記憶が鮮明に残っていた。昨晩見た、あの異常な戦場の光景、戦士としての自分、そしてあの不思議な少女、夢月の顔。彼女の言葉が、今も頭の中で響いていた。


「これが現実と夢の境界だ。」


その言葉が何度も繰り返し、志月の心に刻まれている。昨晩、夢の中で感じた痛み、恐怖、そしてあの無敵のような力を振るった感覚が、夢の中の出来事だったはずなのに、どうしても現実のもののように感じられる。まるでその世界から引き戻されることなく、今もどこかで戦っているような気がしてならない。


「ただの夢、ただの夢だよな。」志月はつぶやく。自分にそう言い聞かせるように、深呼吸をして身体を起こした。


いつもの朝。いつもの部屋。いつもの光景が目の前に広がっている。でも、彼は気づいていた。このまま何も変わらない日常が続くはずがないことを。


志月はベッドから降り、制服に着替える。そのとき、ふと部屋の片隅にある鏡が目に入った。自分の顔を映してみる。鏡の中の自分は、昨晩の夢で見た人物とは違っているはずだ。だが、鏡の中の自分の目に映るのは、どこか異質な感覚を抱えた顔だった。


それを見て、志月は少しだけ目を背けた。今はそれに触れるのが怖かった。自分に何が起こっているのか、何が変わり始めているのか、その答えを見つけることができないまま、ただ普通の一日が始まるだけだ。


「行こう。」


志月は鏡を背にして部屋を出た。昨日までと変わらないように見える世界に一歩踏み出す。だが、心の中で、彼は感じていた。これからの自分には、何か大きな変化が待っていることを。


この世界における現実と夢の境界。それを突き止めなければ、何も始まらない気がしていた。志月はその思いを胸に、足を進めていった。


その時、心の中でひとつの疑問が浮かんだ。


「このままでいいのだろうか?」


その問いは、誰も答えをくれない。すべては志月が自分で見つけなければならない答えだ。


志月は静かに息を吐き、外の空を見上げた。どこか遠くの空に、何かが待っているような気がしていた。

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