夢の辺境
katura
志月
柊志月は、平凡な高校生だった。目立たない存在で、いつもクラスの隅で静かに過ごしている。家族も特別なことはない。父親は日々忙しく働いており、母親は彼がまだ幼い頃に病気で亡くなった。それ以来、志月は父と二人三脚で生活しているが、家の中はどこか空虚だった。母親の存在が無くなった家は、どこか冷たく、家族の温もりが欠けているように感じていた。
学校に通う理由も、特別な目的があるわけではない。ただ義務感から、そしてある種の習慣として、毎日学校へ足を運ぶ。彼の通う学校では、特に目立つこともなく、普通の生徒として過ごしている。日々の授業を受けるだけで、他の生徒との接点はほとんどない。友人は一人、神楽坂という少年がいる。彼は社交的で、志月にもよく話しかけてくれるが、志月はその温かさを感じる一方で、どうしてもその関心を受け入れきれない自分がいた。
志月は、何か心の中で満たされない思いを抱えていた。自分が何をしたいのか、どうして生きているのか、その答えが見つからない。無気力に過ごしているが、その状態に慣れているわけではない。むしろ、いつも何かが足りないと感じていた。だが、それが何なのか、どうすればそれを見つけられるのかもわからない。
放課後、クラスメートたちが楽しそうに帰る中、志月は一人、学校の門をくぐった。神楽坂が「一緒に帰ろうか?」と声をかけてくるが、志月は笑顔で軽く断り、そのまま足早に歩き出す。彼の歩く道の先には、特に何が待っているわけでもなかった。家に帰ると、父親はリビングで仕事をしているだけで、夕食も一緒に取ることなく、それぞれが自分の時間を過ごすだけだ。
その日も、他の普通の日々と何も変わらなかった。夕食後、志月は自分の部屋に戻り、ベッドに横たわる。枕に顔を埋め、目を閉じると、何も考えずに眠りに落ちようとする。だが、眠りに入る直前、ふと心の中でひとつの問いが浮かぶ。
「このままでいいのだろうか?」
その問いに答えることなく、志月はそのまま意識を手放した。彼の意識は、すぐに夢の世界へと導かれるのだった。
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