公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧

　なんだかくすぐったい。

　私は、顔に触れる柔らかな感触に気がつき、ぼんやりと目を開けた。

「起きたか」

　大きくてふかふかなベッドの中で目が覚めると、エリック様の美しい顔がすぐ上にあった。

　彼は枕に肘をついて上半身を起こし、隣で寝ている私を見下ろしている。

　くすぐったく感じていたのはエリック様の漆黒の長い髪だったのね。

　彼はその綺麗な髪を無造作に下ろして、カジュアルな白いシャツを纏っていた。

　ボタンがはだけて、筋肉質で褐色の逞しい胸元が露わになっている。

　エリック様の寝起き姿はいつもに増して艶やかで格好良い……。

　えっっっっ？！寝起き？！？！？！

　よくよく見てみると、私も夜着の薄いドレス姿で横たわっている。

　私の身体の片側には、エリック様の逞しい身体が薄い布越しに感じられて、それに気づいてしまうと同時に急に心臓が跳ね上がった。

「無事でよかった」

　彼はそのアイスグレー色の瞳を甘く輝かせながら言って、私の頬にそっと手を添えて綺麗な顔を近づけてくる。

　えっ？！！ち、近い！

　く、唇が！触れてしまうよ！

　っていうか、この状況は一体何なの〜〜〜〜？！？！？！

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