プロローグ 地球が狙われてるニャ! ②

🐾2 ネコになりすました宇宙人は地球人にモフモフされて任務忘れています



 タンデュたちがニンゲンの住処すみかに入り込むのは簡単だった。哀れな子猫の姿でか細く鳴いてじっと見つめる。勝率100%!先発隊のメンバーは街に散らばりニンゲンを次々と懐柔かいじゅうしていった。


 ん?猫の姿とはどういうことかって?彼らは細胞を変化させ体を思い通りに変えられるのだ。地球よりも数歩先に進んでいる科学技術により、変身(トランスフォーメーション)そして擬態(ミミクリー)が可能なのである。地球の人間ならばそれを〝魔法〟とでも呼んでしまいそうな、相手に全く異なる姿に見えるように装う技術を、この異星人たちは獲得していた。


 それにしても〝化け猫〟もとい〝猫化け〟はうますぎる。どうもこの惑星地球の〝ネコ〟という生き物と、侵略者たちはどこか似ているらしい。ぱっと見は地球のニンゲンと同じような体つきで二足歩行だが、ニンゲンと違うのは見ためのバランスが四頭身のずんぐりむっくりなところ、そして耳の形や体毛の感じ、それに手にある肉球などはむしろ〝ネコ〟に近い、いや〝ネコ〟そっくりと言った方が良いかもしれない。だからなりすましは簡単だったというわけだ。とにかくタンデュたち先発工作部隊はニンゲンの生活に入り込み、地球征服のための調査を開始したのだった。



「ルルヴェ隊員の言う通りですねぇ」

「ニンゲンは本当にこの惑星の支配者なんでしょうか」


「ニンゲンの〝ネコ〟とやらへの態度はまるで下僕げぼくですよ」

 ルルヴェ率いる調査部メンバーたちの定例報告会ではそれぞれ入り込んだ家のニンゲンの様子を報告し合っている。


「こんなにおおぜいで集まって怪しまれませんか?」

 部下の一人が心配そうに言うのにルルヴェが笑う。


「大丈夫よ。この惑星のネコたちは定期的に夜中に集会をするらしいの」


 それにしても、とメンバーの一人があくびをしながら呟いた。

「あんまり待遇がいいんで何か体がなまっちまいますよ」

別の隊員も言う。

「私、この惑星に来てから絶対太ったと思うの」

 オレも私も、と声が続く。

(いかん。このままでは隊員たちの士気が・・・ ふわぁ〜)


 タンデュは思わずあくびの口を塞いだ。タンデュも試しにネコになりすまし、ニンゲンの家に入り込んでみたのだが、確かに待遇が良すぎるのだ。

 

 食事は最高級グルメだしおやつも日替わりで出て来る。寝床はあったかくてフカフカだし、毎日のようにブラッシングしてくれて撫でなでもされるから気持ち良くてすぐ寝てしまうのだ。この惑星を侵略するより、このままモフモフ生活で良くない?などと思ってしまうのは私だけではあるまい。

 他のメンバーも同じ事を考えていたのか、タンデュと目が合うと慌てて視線を逸らしたりしている。

(さて、〝ネコ〟という生き物がニンゲンを手玉に取っているのはわかったが、どうしたものか・・・)


 

  手が浮かばないまま、気づくとこの惑星に来てから半年が過ぎようとしていた。

「報告がないが、調査は進んでいるのか?」

 アラームの音で目が覚めたと思ったのは本部からの呼び出し音だった。いかん、最近すっかり朝寝の癖が・・・

「おはようございます。ザンレール司令官どの!」

司令官がイライラしているのは明らかだった。まずい!のんびりねこライフしていたことはバレないようにしなければ。


「はい!今日にでも報告するつもりでありました。調査は順調ですぐにでも侵攻作戦にかかれます」


「それは頼もしい。では作戦終了次第結果を報告しろ」


 どうしよう、どうしよう、どうする、どうする? とにかく作戦会議だ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る