第47話花火の代わり

祭りの荒らしをしにきたんじゃない。


したいわけでもないのだ。


私は二人に次に行こうよと伝える。


これ以上なにかあったらとんでもない汚名が降りかかりそうな予感がした。


金魚掬いは無いのかと聞かれるが、今は冬なので室内でも無い限りないだろうと述べた。


やりたいのなら春とか夏とかの祭りで探した方が良い。


キュー太郎を見てみたら、ふくふくしていて、まさに冬にぴったりだ。


シマエナガの冬バージョンだから、雪の中が一番映える。


可愛いor可愛いor最高!


ヨーヨー釣りはある。


ただ、ヨーヨーはゴムだから分厚いヨーヨーがある。


それをやりたいと言われて、エマとヨーヨーを釣る。

初めてやるので普通に無理だった。

一個も取れなかった。

こういうのって身体能力とか関係ないんだね。


エマは2回目で取れた。

私は流石にヨーヨーを惜しくは感じないので、エマが喜ぶのをみて楽しむ。

店員さんが宇宙人なのか、見た目が子供なせいなのか、単にいつものことをしているからなのか、ヨーヨーをくれた。

あるある。


昔もこういう時はヨーヨー屋さんは取れなくとも一つ絶対にくれるんだよね。

お金は多分ヨーヨー代なので取れなくても一つ渡すのがヨーヨー屋の暗黙のルールなのかもしれない。


「ありがとうございます」


釣り糸を返却。


「いいよいいよ。宇宙人がヨーヨーしているのなんて初めて見たから、お礼お礼」


気の良いおじさんで、私は唐突に己が地球の子供になった心地になる。

そういうのを、過去に舞い戻るっていうのかなぁ。

懐かしさと、地球人の温かさを思い出す。


外は寒いっていうのに、地球はいつでも包み込むように迎えてくれる。

そうだった、そうだった。


原点回帰したくなる。


ナターシャはキュー太郎にヨーヨーを見せる。


「ぽよぽよしているな。どうやって、遊ぶ?」


検索すれば直ぐにわかるが肉眼で見て学ぶのも良い経験になる。


彼にヨーヨーを譲渡。

母は非常に欲しそうにしていた。

後でというか、今いってこればいいのでは?


誰もダメって言わないから。

ジュスティヌ〈母〉に行ってこい的なことを言い、背中を押すと待ってましたという勢いでヨーヨー屋にUターンしていく。


それを見送り、二人は次なる屋台を巡る。


勘違いで終わらないほど、屋台から「赤髪の子達」と声が掛かる。


名前を知っているかは知らぬが、意図して私達を指名している屋台の主達は、私たちに食べてもらおうとしたり、遊んでもらおうと呼び込む。


「因みにお母さんは誰かと語るのが好きだから、ああなる」


横を向けば人の壁と話し込む母親。

こうしてみると有名人みたいな人が来てしまった風景に見えるね。

私達の場合はレア感が強い。

怖いもの見たさってものもあるのかもしれない。


ヨーヨーは無事取れたらしく3つ手にぶら下がっている。

遊び方を教えてもらったのか上下にシェイカーしていた。


父はゆったり見ている。

髪が赤いのでやはり目立つ。


屋台を全体的に周り込み、堪能。

色々まけてもらったから何かした方がこちらもしっくりくるかもしれない


夜も近くなりわたしはここら一帯に魔法をしかけた。

ふわり、ふわりと雪が降り出してあくまで緩やかに降るように調節。

人々が上を見上げて冷たくない雪に首を傾げ出す頃、祭りの委員会に予め言っておいた放送が鳴る。


──ポンポンポーン


放送の鈴が鳴ると寒い空間に声が響く。


「とある宇宙人の方が今からサプライズを行います。祭りに来てくださっている方々は空を是非見上げて下さい」


放送が終わるタイミングになり、私は空を見上げて白い息も空中に浮かぶ。


「ナターシャ、エマもやる」


「お、ありがとう」


母もするぅ!と仲間外れにされたくない母と薄く笑って同じく上を見上げる父も同じように魔法をかけてくれるらしい。

四人でするのならば時間が延長出来るね。


優しいほかほかした気持ちになりながら、上を見ると雪が徐々にふわふわと光出す。

イルミネーションにしてみた。


どちらかというと灯籠のような淡い光。

いつまでも見られるように目に優しい色にしておいたよ。


「綺麗ね」


「雪のイルミネーション?」


「凄い。これって魔法なのか?」


「パパ、雪が光ってるよ」


ここに来て祭りを楽しんでいる人たちの声が聞こえる。

雪を口に入れる人がいる。

光が溶け出して舌が淡く色付く。

無害なので食べても平気だ。


慌ててチキンの入っていた容器に入れる人がいるけど.溶け出して淡く光って直ぐに消える。


「これじゃあかき氷を食べた後になっちゃっただけね……」


子供らは雪を捕まえようとあちこち飛び跳ねてはキャラキャラと笑う。


「ゆきっ」


「捕まえたぁ」


キュー太郎も嘴をぱくぱくさせて嘴をゲーミング色に染めていた。


「無味」


ただの雪なので味なんてしないよー、って私は楽しくなった。


まるでホタルのようだなと思い出した。


「ほー、ほー、ほーたるー」


ホタルの歌を歌えばエマが真似をして追随してきた。

ホタルを見せてあげられることが難しい現代だけど、擬似体験はさせてあげられたようだ。

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