第35話シマエナガAI
VRが順調に売れていると聞き、エマは満足そうにしていた。
主に母の道場でだが。
しかし、道場の敷地内なので外で売ってみたら噂のVRだと知った人たちの口コミ、又は拡散で爆売れしていった。
安堵したエマはホテルの室内でナターシャにゲームのカセットを見せる。
「これ一緒にやりたい」
レーシングゲーム、土管のおじさま系をやりたいと言われてすでにゾンアマにて買っているものを見せられる。
私もすっごく久しぶりすぎて操作などすっかり忘れていそう。
ナターシャはエマにコントローラーを渡される。
まさかのハンドルの方のコントローラー??
ええ、普通のコントローラーの方が良いよ。
これじゃあ全く出来そうにない。
エマに普通のコントローラーが良いなぁ、というとプロコントローラーに変えてくれる。
景気良く変えてくれたのだから、私も気を張る。
負けたくないので頑張ろう。
エマに接待プレイが可能かというと、全く必要でない。
それくらい、うちの妹は凄いのだ。
普通の妹の年齢ならば負けるのもやろう。
しかし、この子に関しては例外というわけ。
ゲームを始めると今のゲームはカラフルだなと感心する。
関心と共に彼女は姉に語る。
「私の好きな動物にAIを入れて、執事にした。ナターシャ姉の好みの性格に設定しておいた」
「はい?なに?え?」
混乱に陥り、甲羅を当てられて高速スピンする。
「いや待って、待って待って!」
「シマエナガがビジュアル的に良かったから、これ」
「ゲームしてる最中にやることじゃなくない?」
一時停止して、エマに向き直る。
「シマエナガだ!」
まんま、冬バージョンのシマエナガだった。
「いや、ゲーム中にさらっと言う事じゃないよね?ゲームしてない時に出すべきじゃない?どうしてこんな変な時に」
「え?片手間だから出した」
「さ、さいですか」
彼女にとってはそうでも私は片手間じゃない。
それを全く配慮されず、シマエナガという生物に似た生体AIの子をどうしたら良いのだろうかと悩む。
鳥型なのは分かる。
シマエナガっていうのは寒い地域に住む野鳥。
飼えはしないが、この子は生体生物なのでシマエナガではない。
それに模した生物なので法律にも引っかからない。
連れ歩けるからこそ、AIを入れたのだろう。
今後の相棒が何かにしておけば良いと言われた。
起動させるよと言われて待つ。
すると、鳥は一度羽ばたき妹のて 手の中で器用に起き上がる。
よっこらせ、と言いそうなくらい上手く。
それを見ていると、シマエナガはこちらを粒らな瞳でジッと見つめてくる。
多幸感が凄い。
「お前が主人か?」
某アニメのセリフが放たれた。
こう言う時何も言えないんだね、良く分かったよ。
「はい、そーデス」
棒読みになる声をなんとか一オクターブ上げて行く。
しかも、シマエナガがお前って。
言葉悪いな。
「俺様に設定した。ナターシャ好きだよね?」
「いや、好きなのは乙女ゲーに限った事であって、現実的に好きなのは平凡な男性っていうか。俺様は論外だよ」
一番選びたくない性格だが、シマエナガの見た目のせいで許される。
可愛い許す、となる。
口調も荒っぽいけど可愛いにコーティングされていて、ありだ。
「名前決めないとね」
「カッコいいのにしろよ」
キュー太郎とかどうかな?
と提案してみても、キュー太郎はイマイチな反応どころかなんの反応もない。
「ダサい」
「えっ、可愛いよ?ねえ?」
妹に同意を得ようとするが酸っぱい顔を浮かべて首を振る。
「9点」
「なんの点数?」
「名前付け」
「じゃあ、エマ考えてみてよ。出会ったばかりなのに名前とか言われても急に良い名前は付けられないって」
「アーサー」
「シマエナガにアーサー……」
一応この鳥は日本の野鳥に分類されてるんだけどなぁ。
違和感ある。
やっぱりキュー太郎で良いんじゃないのかな。
「シマエナガに決めてもらおう」
キュー太郎に素直に付けられたい名前を聞く。
絶対そっちの方が色々恨まれる事なく、終わらせられる。
「どれ?」
「アーサーで良い」
2人してシマエナガに接近して決めさせる。
「本当はアーサーが良いが、キュー太郎にする」
「2択から選べって言ってるんじゃなくて、自分で決めれば良いんだよって意味だから」
そんな命令をしたわけではないんだけど。
「合体させてアーサーペンドラゴンで良い」
エマが無体な事をいう。
いやっ、いやいやいや!
酷っ。
(キュー太郎が良いよ、それで良い)
「キュー太郎、決まりっ」
キュー太郎にしました。
「キュー太郎!」
「仕方ないからそれでいい」
「これ、私の好きなタイプの性格なの?」
「うん。性格診断したら答えはコレ」
彼女は自慢げに鼻息を荒くする。
「いつの間に診断したの?」
私は知らないよ。
ナターシャはシマエナガを見ながら可愛すぎてずっと見ていたくなる。
エマが可愛く頷く。
「シマエナガは好き」
妹が自分の好みを推してきた。
私も前から好き。
「私も好きだよ。可愛いよね」
キュー太郎は羽を繕う。
「お前の世話をするのか?」
唐突に言われてキョトンとなる。
「いや、私は私の世話をできるから。大丈夫」
鳥に世話されるってなに?
元地球人として、あまりお世話にならないように私も勉強せねば。
とは言ってもズボラの意識があるから、それも三日坊主かもしれないが。
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