第21話イベントと金カボチャ

ミステリー要素のイベントが明日、始まる。

企画段階のことを知れるのは製作者の身内の特権だよね。


「畑、広くしよう」


アップデートされた新作の種を蒔く。

実装するタネが無くなったら、ファンタジーのタネになっていくんだよね。

金のカボチャが実装され、かぼちゃの馬車を作れるようになったり、カボチャ系のアイテムや武器関連で使えるようになる。

更なるアイテムの追加。

ユーザーらはスタッフが居るから出来ていると思ってるが、AIが働いているとは夢にも思わないだろう。

あと、金カボチャの品評会が追加された。


「金カボチャ、リアル寄りの見た目」


試食してみた。


「かぼちゃのごった煮の味がする……」


甘い砂糖と醤油。


食べ過ぎたり出来ないから、美味しくは食べられるけど、数は胃に入らない。

架空だからお腹は満たされない。


かぼちゃを育て終わり、キャラクターに会いにいく。

会いにいくと鍛冶屋の男が片腕をぶら下げていた。

骨折した時のビジュアル。

どうしたどうした。


「骨折?キャラクターが骨折って斬新」


話を聞くと野菜屋のキャラクターとお酒を飲んだ時に、足がもつれて畑に体が落ちて、片腕にヒビが入ったのだとか。

鍛冶屋なのに迂闊を通り越して、宇宙に行きそうになる。

おまけにヒビを入れてからまだ1ヶ月なので、痛いんだそう。

これ、看病イベント?


私は無理だなと思い、高いポーションを彼の腕にかけた。

酔っ払ってしまった末のヒビにポーションなんて勿体無い。

おまけに、なにもしなかったら好感度が下がりそう。

正直、私からの好感度が下がったんだが???

下がったら下がったでふざけんなってなる。

一体全体、鍛冶屋は鍛冶屋の自覚がないのだろうか。


治った腕を機敏に動かす鍛冶屋イベントを完遂させ、次はこのゲームの面白みにあげられるオープンワールドの世界を堪能する。

ありとあらゆることができる。

冒険者として冒険することだって可能。


モンスターと呼ばれるキャラクターを倒して、それを金銭に変えたり出来る。

基本ソロのゲームなのだ。


「登場人物達を連れて行きたくなるね」


どう見ても一般人なんだけどね。

オープンワールドらしく、他の国や街が点在している。

勿論、なにもない場所もあるが、結構ぎっちりとなにかあるのだ、このゲーム。

NPCもいるのだが、かなり豊富にクエストが飛び込んでくる。


「お、雪原の国みっけ」


移動用アイテムのバイクで走っていると雪原の中に国を見つけて、そこをポイントとして向かう。


ーーブオオオン


「モビーで行きたいなぁ」


雰囲気出るよね。


「って、シカ!?」


突然、なんの気配もなくシカのシルエットが出てきてバイクを止める。


(イベント?)


止まると、シカはこちらに寄ってきて口を出す。


「すみませぬ。シカ煎餅は持っておらぬか?」


トナカイじゃないよね?

なんで、シカ?

分布が異世界。


「持ってません」


「そうでごさるか、それは失敬した」


といって、去っていく。

唖然と見ているとハッとなる。

AIの生成だから、なんでもありなんだな。

ゲームだし、現実でも稀にこんなところにいるの、珍しくなんていうことは、あることだし。

ござる言葉のシカ、試しに攻略サイトの掲示板で見てみたけど、同じような人は居なかった。

相変わらず誰一人として同じイベントがない狂気っぷりに、さすがだと笑う。


「宝箱」


シカと話したところに宝箱があった。

中を開けるとアイテムの説明文に、シカの命を奪わずにおいたお礼と書いてある。

この世界、宝箱とかアイテムは製作者イコール世界の管理者からの贈与という風に考えられている設定なのだ。


「シカ、イベントだったか。アイテムは、シカ煎餅!」


これ、あげたくてもすでにシカは居ない。


テレポーテーションポータルが設置されている場所は、あそこか。

意味深なデザインがあるモニュメントのところ行って、跳べるようになる箇所を増やす。


このモニュメントは、この世界の創造した製作者イコール宝箱を、設置したりする生命体が作ったと言われるワープシステム。

ワープできるようにしておけば、いつでもここに跳べる。


このゲームの評価が大体、異世界転生をしたようだと言われているのが良く分かる。


「会話も今の所同じの聞いたことないし、本物の人間っぽいし、イベントもありすぎて攻略サイトでも追いつかないし」


エマに聞いたら24時間シナリオやイベントが作られ続けていて、コンプリートは実質不可能なのだと教えてくれた。

コンプリートが不可能ならば、コンプリートの実績などの功績はない。

他のコンプリート要素はあるものの、シナリオやイベントは実績を作っても意味がないと、個数で実績を解除させている。


ということだ。

そういうのもゲームを作っているAIにやらせているので、具体的なことは改めて見ないと、エマもわからないという。

エマもエマで新鮮な気持ちでやりたいから、実績を確認なんてネタバレを見るのと同じだろう。

だから、知らないままで良いと言っている。


「よくよく考えたらオーバーテクノロジーで作ったからか」


兎にも角にも、自分だけネタバレし過ぎるのは嫌なのだ。

エマのセリフを思い出しつつ、イベントなどを進める。

雪国は寒いが人はたくさんいた。

ゲームならではの景色。

行幸だ、と妹なら言うかと。

国によって雰囲気は違う。

始まりの国は緑のたくさんある国で、初心者らしいところだ。


四季をまず国に当てはめて作るのは今や当然のように行われている。

この国が冬をテーマにしているのは考えるまでもない。


「でも、シカ出てきたし、季節と関係ないなあ」


冬の国はもう直ぐお祭りが行われるらしい。

ちょっと待って?

そんなのどこにも載ってなかったよ。

地球のSNSの呟きにも、エマにも。

なあんにも聞いてない。

ちみっと妹に聞こう。

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