第18話日本橋

母も他の人たちと同じくエマのゲームをしている。

うちの娘が作ったんだぞと暴露しそうになっている母を、シバくのが最近の妹の悩みの種らしい。

まあ、評価されているから余計にウズウズしているのも分からなくもない。


母の録画をテレビにセットし、プレイスタート。

映像をシークレット前まで進め、母とシークレットの出会いを見る。


「ゲームの世界観でソードマスターと呼ばれる男。ひたすら戦闘に特化した生活と、味覚が可笑しくなりそうな程の作物をぐちゃぐちゃに耕して育てたのが、シークレット出現の条件?」


エマが映像を粒さに観つつ、メモを取る。

いやいや、そんな母親しかしないような方法で。


「この男、やたら話しかけてきて、無視しても話しかけてくるので、切りつけたのだ」


「いや、遊び方ッ」


どこの世界観に恋愛ゲームと牧場ゲームを金揃えた主人公が問答無用で切り付けるってんだ。

ナターシャは思わず突っ込んだ。

鈍感という単語で説明できない思考に早々に疲れそうになる。


『ぐあ!』


ソードマスターが易々と切り付けられる。

これって、想定されてないんじゃない?


「ねえ、エマ……」


「ソードマスターの戦闘力は現在、ゲーム内屈指。ママみたいな戦闘お化けでもない限りやられない」


「キャラクターを怪我させたらどうするの?」


「そんなの決まってる。捕まる」


「ああ。警邏が来たが全員倒した」


「指名手配ルートじゃん!」


「指名手配?ああ、だからか」


母は正解を得たサカナみたいな顔をして、笑みを満開させる。


「更にやってくる奴らが増えて生活が楽しくなったんだ」


1人だけ異次元な遊び方してる。

ザワッと顔が深刻になる。


「隠居した暗殺者の生活やめよ?」


己はなんのゲームをしているのか思い出した方がいい。


エマがハッとなる。


「そうか。マーマ自体がゲームのルートから外れてるんだ」


エマは本来のやり方と違うルートを開拓してしまったのだと、気づく。


「そんな修羅の道を行くプレイ。勿体無いからやらないよ」


エマによれば、警邏の戦闘力もかなり強めに設定していて、なにか倫理観に抵触するとやってくる人達。

ナターシャはみたことがない。

もしかして街に行けば思い出すかも。

捕まればペナルティが科せられる。

簡単に捕まるルートを選択する人は居ない。

サブアカとかでやってる人の動画を見たけど、速攻捕まってしまい、ろくに生活もできなかった。


「警邏がドミノみたいに倒されちゃった」


録画を見ていると、警邏やバウンティハンター達がやってきては母に襲いかかるが、母は軽く倒す。


「本当はこの人達、悪くないのに」


警邏を倒す母が悪いことをしたのに、ひっどい場面。


「バウンティ認定されたら外すことって出来るの?」


「罪よりも遥かに凄い英傑並のことをすれば免除される」


母が楽しく倒したり、作物を育てたりしているのを見る。

因みに家族特権で3Dとフルダイブを選べる。


ソードマスターという攻略対象を引き当てた母と攻略対象者の会話は当然ながら噛み合わない。

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