第14話宇宙科学
紅茶を堪能していくと、紅茶も美味しく思える。
うーん、美味しい。
妹がここでも開発者ならではの開発箇所を解説する。
「本物の高級茶葉の味にしたら現実の商品に影響が起こるかもしれないから、本物よりも味を落としている」
「気を遣ったってことか」
妹の見解に舌を巻く。
「そう。美味しかったりすると、舌が肥えて生活に支障が出る」
脳は食べ物を美味しく感じているから、現実の食べ物の味が変わるのは大変なのだろう。
更に設定を教えてくれる。
「この猫獣人の設定は金持ちだけど、買ったモノは大切にする」
「猫を探して欲しい依頼は裏設定に裏打ちされてるんだね」
攻略本の様だ。
案内妖精の方が近い役割をしてくれてる。
飲み終える前に猫獣人は私に話を持ちかけた。
居なくなったのは5日前。
1日に一度は必ず戻っていたのに、この5日戻ってないらしい。
「もしかしたらなにかに巻き込まれたのかと。あの、お金ならいくらでも払います!ですから、私の猫を探し出してください」
高性能AIのために感情移入してしまいそう。
演技じゃない、悲しんでいることが見て取れる。
「任せてください。なんとかやってみます」
選択肢が出てきて、はいを選ぶとまた口が勝手に話す。
それにしても選択肢に【一億出せるのか?】というのがあったんだが、そういう要素があるなら、押してみたい。
こういう奇抜な選択肢、凄く好き。
妹は姉の気持ちを良く分かってるなあ。
「お願いします」
老人猫に見送られて我々は早速外へ。
老人猫からは猫が良く行く場所について聞いておいたのでそこから回る事になった。
「あのビックベン、上に猫が乗ってる」
ロンドンの有名な時計塔には現実とは違うものが鎮座していた。
銀色の猫像がメタリックな丸みでこちらを見下ろしている。
まるまって寝ているので、癒された。
「あのビックベン猫も、多分いつかなにか活躍すると思われ」
「えー、なにそれ。面白そう」
このゲームもみんなにしてもらえたら楽しそうなのにね。
VRはVRでも架空科学の方だからなー。
「このゲームを買わせるにはVRデバイスも必要。面倒い」
今現在、VRの技術力はまだまだ。
今の所、視界が頼りのもの止まりとなっている。
エマのVRデバイスは技術力を10以上飛び越えた先の代物だ。
オーバーテクノロジー。
「エマのゲーム専用にしちゃえば?それなら、他のところからなにか言われても、無理って突っぱねられるし」
そう言ってもエマは面倒そうだった。
彼女はあくまで姉に向けて作っているだけで、他の人たちにやらせるつもりなどないのだから渋っていた。
私の贈り物は単に母親の道場のCMをつけるためだけのおまけだった。
「まあ、エマの自由だよ。私の贈り物を配信してくれただけでも五の字五の字」
そういえば、そのゲームが注目されて過ぎてインタビューとか、企業がエマを探しているらしい。
開発元は不明になっている。
開発者がなにか言うことはない。
地球のゲームをしている人達が予測しているのは大手のゲーム会社らしいが、急に出てきたので人外の関与ともかなり疑われているのだとか。
「文章量が人間業じゃないってさ」
膨大な量、膨大な設定、膨大なジャンル。
「事実。AIに作らせた」
エマはそのAIにゲームの情報を取り込ませただけ。
「AI自体を作って使用しているから、制作速度と品質がすごいんだよね?」
「うん。宇宙科学を詰め込んだ」
猫の通る場所を目指して、トコトコ歩く。
床屋で猫獣人達が整えている。
栄えてるな。
「それと、大手のゲームが面白くて私なりに作った」
と、急に告白してきた。
「どのゲーム?」
「剣を振り回す」
エマは剣を振る仕草をする。
私はエマから昔からある会社のゲームの名を聞き、さもありなんと納得した。
「タイトルはstar hall reading。星の声を聞け」
「ふええ」
「対応プラットフォームは全て」
「やりたい。エマも前作やりこんでたよね」
「もち。関連作品全部プレイ済み。テストプレイしたけど半分くらい」
「VRは?」
「VR化もすでに終わらせてる」
それもしようと笑みを深める。
2作品とも神作だった。
続編があるならやりたい欲を爆発させてたんだけど、できないから燻ってたんだよね。
そうと決まればニャーロックのゲームも力が入る。
猫探しは店に入っては待ち人に目撃者を募る。
「探偵業は地味だし、華やかさに欠けるね」
「やろうと思えば事件を起こせるけど、無秩序になる」
「それはちょっと。無法地帯は勘弁」
露店で食べ物を買う。
せっかくここにあるし。
「はい、ネズミ型のパイ」
「嬉しくない食事」
ここでネズミがまんま現れるよりはマシかもね。
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