第3話再現

自室でのんびりしながら小説を読んでいるとエマが遊びに来た。


「ナターシャ!ナターシャ!聞いて!惑星が見つかったの」


やけにテンション高いな。

いつも惑星を見つけても冷静にデータ収集するのに。


「どうしたの?そんなに良い惑星なの?」


「もう!ナターシャ!地球だから!」


「……マジ?」


エイプリルフールじゃないよね?

え?

本当に地球?


「どええええ!?」


「ね?どええ!だよね」


「地球あったんだ……知らなかった」


「ナターシャって知らずに言ってたの?」


「いやー、エマたちにはあくまで空想の話のつもりで聞かせてたっていうか」


モニョモニョというと、エマはぱちぱちと目を瞬きさせる。

改めてみるとビクスドールみたいに可愛いよ。


「えー?私達は存在してると思っていたけど」


「そうなんだ。見つかったのなら良かった」


この時、あまりの驚きに呆然となっていて、無難な感想を言うので精一杯だったのだ。



***



地球へ着くまでと、地球に到着して暫くはそこへ停止して、どうするか家族会議を開く。

母が凄くワクワクした目でこちらを見ている。

ナターシャから聞いている地球に降りたくてたまらないのだろう。

ご飯を待つ犬のように澄んだ目だ。


エマはナターシャの補佐をする為に、メガネをかけたスタイルでホログラムデータを見ながら解説。


「地球。水が豊富にある惑星。こんなに水があるのに知名度がないのは銀河同盟に未加入。及び、科学力が同盟の加入域に到達していないから」


「異星人の形跡があるんでしょ」


父に聞くと頷くので、目を閉じる。

形跡があるといっても破壊行為などは確認されておらず、技術革新などを分析して調べたところ、ナターシャの知る地球の技術と乖離してない。

つまり、自分が居なくなって数百年とかではないと確信した。

もう少し調べたい。


「ナターシャ!私は降りるぞっ」


「マーマ、ナターシャの意見が先だよ」


エマが母をなだめる。

意見と言われても、降りようと決めるほか無さそうだ。


「言いたいこと、調べたいことがある」


「ん?」


ジュスティヌが優しく問いかけてくる。

こういうところ、本当にポイント高い。


「シマエナガはいるの?」


「「シマエナガ?」」


「フクロモモンガに、マヌルネコ。エゾモモンガ、パンダにハムスターは?」


エマがデータを操作して調べてくれたら、名前のヒットがあったらしい。

ホッ、よかった。


「地球には宝石が有るそうじゃないか」


「あるけど、希少だからね」


「なあにっ。買い占めれば良いだけだ」


からりと笑うジュスティヌ。

買い占めたら怒るのではないかと、少し心配になる。

地球の話はあくまで私の架空の世界という方法で教えていたのだが、なんだかごっちゃにしている気が。

それは間違いだと何度もいうが、幻想から抜け出せないらしく、夢見ている。


「エマはたこ焼きと餃子食べたい」


エマが食べ物の話に食いつくのは知っていたが、そんなに食べたいのなら食べに行こうね。

彼女の要望に両親はお腹がちぎれるくらい買ってやろうと笑う。

ちぎれるとか語呂悪っ。

両親がこんな風だから、エマの口癖が普通になるように頑張ったのである。


「地球ではどうやって稼ぐ?」


3人に向けて聞くと、エマはううん、と悩む。

ジュスティヌが挙手する。


「母は地球で道場をやる」


「父さんは宇宙のステーション施設があったら、機械技術でもやるかな」


今はエマの担当になっているが、父もだ技士としての腕はある。

必要不可欠なスキルだったのだろう。


「私は……」


「ナターシャは料理人になろっ」


「え?」


「地球の食べ物うちで作って」


「カップラーメンがギリギリの私には無理だよ?なにいってるの?」


本格なものを作らせようとしないで?


私のことを料理の美味しい家族と思い込んでいる3人に断固拒否した。


「私はなにやろうかな……見た目レアリティ高いから、見た目を活かした仕事を」


「私とダンジョン星に行って母を壁に自動アタックさせれば、稼げるんだから私となにかのんびりしようよ」


エマの提案にジュスティヌは「それって母が全部やるのと一緒だぞ?」と微笑んでいる。

ジュスティヌにとってダンジョン星のモンスター討伐は簡単な事なのだ。

いや、今ダンジョン星のことは良いんだよ。


「地球に行ってからゆっくり考えれば良いさ」


父がそう締めくくる。

父は派手なの好きじゃないから、母みたいに戦闘でお金を稼ぐのは好まない。

私達も頷いてそうしようと決めた。

うちにはお金は潤沢にあるから、働かなくても大丈夫なんだけど、その星で働くことによって、楽しさが違う。

星を折角訪れたのだから、その星の良さを体験しに行くのが旅の醍醐味。




会議が終わりエマがニヨニヨして私を見ていた。


「おねえちゃん。実はね、話にあったゲームを再現出来るようにしたから、やってみてほしいの!」


母が仲間に入りたそうにこちらを見ている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る