餌と野獣
みかん畑
野獣
野獣が目を覚ました。
初めは首だけをもたげ様子を見ているようだった。
その濁った瞳には歪んだ世界が写り込む。
野獣が立ち上がった。
空腹が餌を求めよと叫ぶ。
野獣の瞳には愛してやまない人の姿が写る。
野獣は襲い掛かる。
しかしその餌に蝿が一匹止まった。
蝿を追い払った野獣の瞳に映るのはただ穢れた餌だったもの。
野獣は吠えた。
襲ってくる空腹の苦しみに耐えられず。
蝿と穢れた餌を踏み潰したそれは歪んだ世界にただ彷徨う。
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