ひまわりの家

犬飼ココア

第1話 新たな入居者

 小さな町の外れにある「ひまわりの家」は、朝の柔らかな光の中に包まれていた。介護施設のスタッフたちは、毎日入居者たちのために忙しく働いている。そんな中、新たな入居者である佐藤明子さんがタクシーから降り立った。彼女は長年一人で暮らしてきたが、年齢と共に体力が衰え、一人での生活が次第に困難になっていた。


 花が咲き誇る庭を通り抜けて、明子さんは緊張した面持ちで玄関の扉を押し開けた。迎えに来たのは、介護職員の山田花子だった。花子はいつもと変わらぬ明るい笑顔で、「佐藤明子さんですね。お待ちしておりました」と声をかけ、軽く頭を下げた。明子さんは少しだけ安心した表情を見せたが、不安な気持ちはぬぐいきれない。


 「では、こちらへどうぞ」と花子が案内する。施設内は明るく清潔で、スタッフや他の入居者たちの笑顔があふれていた。廊下を歩きながら、花子は明子さんに施設の設備や日々の活動について説明した。「朝はみんなで体操をし、お昼には栄養バランスの取れた食事を楽しんでいただけます。午後は趣味の時間やお茶会があり、皆さんそれぞれのペースで過ごしています。」


 明子さんはゆっくりと頷きながら話を聞いていたが、心の中では自分がここでうまくやっていけるのかと不安を感じていた。花子はその表情を見逃さず、「ご心配なことがあれば、いつでも私たちにご相談くださいね。私たちは皆さんが安心して過ごせるよう全力でサポートします」と優しく声をかけた。


 やがて、明子さんの部屋に到着した。窓からは庭が一望でき、陽の光が差し込む明るい部屋だ。花子はカーテンを開けながら、「ここが明子さんのお部屋です。少しでも気に入っていただければ嬉しいです」と言った。明子さんは窓の外の景色を見つめながら、小さく微笑んだ。


 その日の夕方、明子さんは施設の中庭で他の入居者たちと一緒に過ごすことになった。最初は遠慮がちだったが、花子が間に入って紹介してくれたおかげで、徐々に打ち解けていった。皆が集まるお茶会では、明子さんは自分のこれまでの経験や趣味について話し、笑顔が絶えなかった。


 こうして、明子さんの新しい生活が「ひまわりの家」で始まった。初めは不安だったが、スタッフたちの温かいサポートと、入居者たちとの楽しい時間を通じて、明子さんは次第にこの場所を「家」と感じるようになっていった。そして、彼女の新しい日常が、ゆっくりと、しかし確実に始まっていった。

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