第三話 鬼ヶ島の異変

桃太郎、犬彦、猿丸、そして雉之助。彼らは、ついに鬼ヶ島の海岸へとたどり着いた。荒波が岩を叩きつける音が響き渡り、空には不気味な雲が垂れ込めている。その景色は、これから始まる戦いの厳しさを物語っているかのようだった。


「ここが鬼ヶ島か…」 桃太郎は見渡しながら言った。


「思ったよりも静かだな。もっと賑やかな地獄絵図を想像してたぜ」猿丸が冗談めかして言う。

「油断するなよ。静けさほど危険なものはない」犬彦が低い声で警告した。


「空から様子を見てくる」

雉之助は羽ばたき、空高く舞い上がった。彼の目には鬼ヶ島全体が見渡せる。だが、その光景に彼は違和感を覚えた。


「なんだ…これは?」


## 鬼の住処


雉之助の報告を受け、一行は鬼ヶ島の奥深くへと進んでいった。そこに広がっていたのは、彼らの想像とはまるで違う光景だった。


「村…?」

桃太郎たちの目の前に広がっていたのは、荒廃した村だった。崩れかけた家々、草に覆われた道。そして、その中をさまよう巨大な影――それが鬼だった。


しかし、鬼たちは暴れているわけではなく、ただゆっくりと歩いているだけだった。その姿にはどこか哀愁すら漂っている。


「これが鬼?なんだか様子がおかしいな」猿丸が首をかしげる。

「確かに…凶暴というより、むしろ悲しそうだ」犬彦も同意する。


桃太郎はその光景を見て胸騒ぎを覚えた。「何かがおかしい。この鬼たち、本当に悪者なのか?」


## 最初の戦い


突然、赤い鬼が桃太郎たちに気づき、大きな咆哮を上げて襲いかかってきた。その巨体と力強さは圧倒的だった。


「来るぞ!」犬彦が吠える。

「やるしかない!」桃太郎は腰に差した刀を抜いた。


犬彦は俊敏な動きで鬼の足元を狙い、猿丸は木々を利用して高所から攻撃を仕掛ける。一方で雉之助は空中から鋭い突撃を繰り出した。そして、桃太郎はその力強い剣技で鬼に立ち向かった。


激しい戦闘の末、一行はついにその鬼を倒すことに成功した。しかし、その瞬間だった――。


## 鬼の記憶


倒れた鬼から、不思議な光が溢れ出した。そして、その光が桃太郎たちを包み込むと、彼らの頭の中に映像が流れ込んできた。


それは、鬼自身の記憶だった。


鬼になる前の彼らが、美しい歌声を響かせていた記憶だった。しかしその歌声は突然途絶え、映像が変わる。彼らは冷酷かつ強大な者たちに抗い戦ったが敗れた。負けて鬼に変えられていく彼らは苦悶の表情を浮かべる。そして、言葉を奪われる瞬間の苦しみ、絶望が桃太郎たちの心に流れ込んできた。


「うわあああ!」

桃太郎たちは頭を抱え、その苦しみに耐えようとする。犬彦は唸り声を上げ、猿丸は歯を食いしばり、雉之助は翼を震わせた。


やがて、映像は途切れ、その鬼は静かに息を引き取った。桃太郎たちは膝をつき、息を切らしていた。


「これは…鬼たちの苦しみ…」

桃太郎は震える声で言った。

「こんなにも辛い思いをしていたのか…」

犬彦もまた、言葉を失っていた。

「ひどい…こんなひどいことをするなんて!」

猿丸は怒りを露わにした。

「俺たちは…一体何をするべきなんだ…?」

雉之助は空を見上げ、問いかけた。


## 疑念と決意


桃太郎たちはその場で立ち尽くした。これまで信じてきた「鬼退治」という使命。その正義が揺らぎ始めていた。


しかし、桃太郎はやがて顔を上げた。「まだ全てが分かったわけじゃない。この先に進めばもっと真実が見えてくるはずだ」


犬彦も頷いた。「そうだな。このまま引き返すわけにはいかない」

猿丸も言う。「俺たちはここまで来たんだ。最後までやり遂げよう」

雉之助も答える。「真実の先に、歩む道があるはずだ」


こうして、一行は改めて前へ進むことを決意した。鬼達の正体とは。そして真実に向き合う桃太郎たちの運命はどこに向かうのか。この時まだ誰も知らなかった。


---

次回、「蘇る運命、覚醒の時」


鬼が被害者?

冷酷かつ強大な者たちは何者なんだ?

桃太郎たちがんばれ

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