第23話 任務地にて
永野総長との別れ
東京の軍令部を離れる日、一花と胡桃は永野修身総長の執務室を訪れ、これまでの感謝を述べた。
「永野総長、長い間お世話になりました。これから新しい任務に就きます」
一花が丁寧に頭を下げると、胡桃も続けた。
「総長、短い間でしたが、本当にありがとうございました」
永野は微笑みながら彼女たちに手紙を差し出した。
「二人とも、これが最後の手助けだ。草鹿任一学校長宛の嘆願書だよ。そして、井上君、これが君の正式な少尉辞令だ」
胡桃は目を輝かせながらその辞令を手に取り、一花と共に再度頭を下げた。
「何から何までお世話になりました。ありがとうございます、総長」
「うむ、これで惜しみなく送り出せる。気をつけて行ってきなさい」
永野は穏やかな声で送り出した。こうして、二人は江田島に向けて旅立った。
海軍兵学校への到着
翌日、広島の江田島にある海軍兵学校へ到着した二人は、早速下士官に軍令部からの命令書を見せ、学校長の草鹿任一に案内された。
「お久しぶりです、草鹿学校長」
一花が挨拶をすると、草鹿は懐かしそうに笑みを浮かべた。
「やあ園田君、久しぶりじゃのう。永野総長から話は聞いておる。君がここで働くとは頼もしい限りじゃ」
一花はすかさず胡桃を紹介した。
「こちらが、私の未来の防衛大学校の同期生である井上胡桃です。ここでは少尉として着任します」
胡桃も続けて挨拶をした。
「初めまして草鹿学校長。園田一花と防衛大で同期の井上胡桃と申します。この度、女性士官養成の一環で少尉に任ぜられました」
草鹿はにこやかに頷き、二人から命令書と永野総長の嘆願書を受け取ると、内容に目を通した。
「なるほど、君たちが中心となって、この女性士官養成を進めていくのか。頼もしい限りじゃ。さて、君たちの職場や寝室を案内しよう。ついてきたまえ」
職務内容の説明
草鹿は歩きながら二人に任務内容を説明した。
「女性士官候補生は5名、そのうち3名が兵科で、君たちは歴史と法律を担当することになる。下士官候補生は30名以上おるが、2学級に分け、それぞれ担任を任せる。どちらの学級が良い成績を収めるか、君たちの腕の見せどころじゃのう」
一花は深く頷きながら質問を投げかけた。
「校長、体力技能の訓練についてですが、私たち防衛大では男子と同様に厳しい訓練を受けておりました。女性の指導者がいる方が生徒たちも安心するかと思いますが、私たちが担当してもよろしいでしょうか?」
草鹿は少し考えた後、頷いた。
「そうか、それならば君たちにも一部訓練を任せることにしよう。ただし、必要に応じて男性教官も補佐につけるようにする」
胡桃も追加で確認を入れる。
「校長、私たちは静岡の牛尾実験所に派遣される予定もあります。その際、学校を留守にすることになるかと思いますが、その点については?」
草鹿は命令書に目を通しながら答えた。
「その件も承知しておる。君たちが留守の間は、代行教官を立てるので心配せんでよい。必要な場合、男性教官が君たちに同行することも手配しておく」
岡本教官との再会
話が一段落すると、草鹿は思い出したように言った。
「ああ、そうじゃ。岡本教官を呼ぼう。彼も君たちの話を聞いたら喜ぶじゃろう」
数分後、岡本誠吉教官が現れた。
「やあ、一花君。久しぶりじゃのう。君がまたここに来て働くことになるとは心強い」
一花はにっこりと微笑み、胡桃を紹介した。
「こちらが防衛大の同期生、井上胡桃です。ここでは少尉として一緒に働くことになります」
胡桃は丁寧に頭を下げた。
「初めまして、岡本教官。園田一花とは寮のルームメイトで、岡本少佐とも未来でお世話になっています」
岡本は彼女たちを暖かく迎えた。
「よろしく頼むよ。君たちがここでどんな活躍を見せてくれるか、楽しみじゃ。困ったことがあれば何でも相談してくれ」
寝室への案内
その後、草鹿は二人を寝室に案内した。
「ここが君たちの部屋じゃ。お互い個室にする予定じゃが、慣れるまでは一緒の部屋でもかまわんぞ」
胡桃が一花を見て提案した。
「最初は一緒の部屋にしましょう。一花」
一花も賛成し、草鹿に伝えた。「そういうことです。慣れたら個室に移ります」
任務の開始
草鹿から詳しい説明を受け、二人は職場や生徒たちの状況を確認し始めた。そして、女性士官候補生と下士官候補生の教育が、ついに幕を開けた。
日本軍の歴史において新たな試みとなるこのプロジェクトに、二人の手腕が大きな期待を寄せられていた。未来と過去をつなぐ架け橋として、彼女たちは静かにその役割を果たし始めたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます