第13話 過去にて ― 第一幕

再会の知らせ

園田一花と井上胡桃は、軍令部の自室で待機していた。午前中から伝わる静寂の中で、二人はそれぞれの思いを抱えながら過ごしていたが、やがて永野総長からの呼び出しが入る。互いに目配せをして立ち上がり、永野の執務室へ向かった。


「失礼します、総長」一花が静かに声を掛ける。


「失礼します」と胡桃も後に続いた。


永野修身総長は、柔和な笑みを浮かべながら二人を出迎えた。その表情からは、何か重要な知らせがあることが伺えた。


「落ち着いて聞きなさい。連合艦隊の山本長官から電話があった。驚くなよ。岡本少佐が戻ってきているそうだ」


一花は目を見開き、思わず息を呑んだ。「岡本少佐がこの世界に…? 本当ですか?」


胡桃も驚きの声を上げた。「それと渋野さんまで?」


永野は二人の反応に目を細め、少し茶化すような口調で言った。「まるで恋人を待つ少女のようだな、二人とも。まあ、彼らは大和を出発し、明日の朝にはここに到着するだろう」


一花は顔を赤らめ、「またそんな風にからかわないでください、総長」と抗議するが、胡桃は気まずそうに笑うだけだった。


静寂の夜

その夜、一花と胡桃は再び自室に戻ったが、興奮のせいか互いに眠れず、深夜の静けさの中で会話を交わしていた。


「一花、起きてる?」胡桃が小声で尋ねる。


「起きてるよ。どうしたの?」一花が応じた。


「なんか眠れないんだよね。あんたもそうなんでしょ?」胡桃の声には少しの焦りが混じっていた。


「うん、まあ…」一花はため息をつく。「胡桃、正直に言うけど、晃司さんのことを考えると落ち着かなくて」


「やっぱりね、岡本さんがいなくて不安だったんでしょ?」胡桃がからかうように笑う。


一花は少しムッとした表情を浮かべたが、すぐに反撃に出た。「胡桃だって渋野さんのことが気になって仕方ないんじゃない?」


図星を突かれた胡桃は目を伏せ、小さな声で答えた。「…まあ、そうかも。でも渋野さんが私をどう思ってるのか分からないから、余計に考えちゃうんだよ」


「大丈夫だよ、胡桃。渋野さんもきっと気づいてる。もしまだ気づいてなくても、いつか絶対に伝わるよ」と一花が励ます。


「ありがとう、一花。…なんか気が楽になったかも」と胡桃は小さく笑った。


朝の準備

翌朝、日の光が差し込む中、二人はそろって起床した。


「おはよう、一花」胡桃が声をかける。


「おはよう、胡桃。眠れた?」一花が尋ねると、胡桃は笑って頷いた。「まあ少しはね。普段の睡眠不足が効いたのかも」


二人は軽い朝食を済ませると、永野からの呼び出しを待った。やがて、総長室へ来るよう命令が下り、二人は再び執務室へと向かった。


再会

執務室の扉を開けた瞬間、目の前に立つ二人の男性に一花と胡桃は息を呑んだ。それは岡本晃司と渋野忠和だった。


「岡本少佐、渋野さん…本当に来られたんですね」一花が感極まった表情で言う。


「よう、園田中尉。井上さんも元気そうで何よりだ」と晃司は軽く笑いかけた。


忠和も微笑みながら、「井上さん、またこうして会えて嬉しいよ」と声を掛けた。


胡桃は嬉しそうに応じた。「本当にこんな世界で再会するなんて、信じられませんね」


未来の仲間たち

永野は四人のやり取りをしばらく見守った後、微笑みながら口を開いた。「さて、四人が揃ったところで、私はこれで退室しようか?」


「いえ、総長。やはりここは総長の執務室ですし、私たちが外に出ます」と晃司が提案した。


「そうか、遠慮せず話をしてきなさい」と永野が促すと、一行は執務室を後にし、軍令部の外へ出て行った。


友情と未来

軍令部の建物を後にした四人は、近くの広場に腰を下ろし、これまでの出来事やこれからの計画について語り合った。久しぶりの再会に、それぞれが抱えていた不安は徐々に薄れ、笑顔が増えていく。


「これからどうなるんだろうな」と忠和が呟く。


「未来なんて分からないよ。でも、こうしてまた会えたことに意味があるんだと思う」と一花が静かに答えた。


胡桃も頷きながら、「私たちは未来から来たけど、ここで何かを変えるために呼ばれたのかもしれないね」と言葉を添えた。


晃司は空を見上げながら言った。「なら、俺たちのやるべきことをやるだけや。この時代に生きる限り、全力でな」


四人の心はひとつになり、新たな旅立ちへの期待と覚悟を胸に秘めていた。

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