業火の第二次世界
シャリアちゃんねる
第1話 序章:試練の序幕
西暦2025年1月、防衛大学校 寮
冬の冷たい空気が窓の外から忍び込み、寮の薄暗い廊下を静寂が包んでいた。
その中で、岡本晃司は渋野忠和の部屋のドアをノックする。
「おはようさん、忠和」
「ああ、おはよう、晃司」と忠和が笑顔で応じる。
晃司は部屋に入り、ベッドに腰を下ろした。
「今年で俺ら4年は最後の学期やな。講義もこれで終わりや」
忠和も小さくうなずきながら答える。
「ほんと、あっという間だったな。色々あったけど、時間が過ぎるのは早いよな」
「ほんまや」と晃司が言葉をつなぐ。
「でもな、俺もこの4年間で、いろんなことを考えたんや。
特に、自衛官になるって決めたのには理由があってな」
「その理由、園田さんの影響だろう?」忠和は口元に薄い笑みを浮かべて言った。
晃司は一瞬驚いた表情を見せるが、すぐに照れ隠しのように笑った。
「やっぱりバレとったか。まあお前には、いずれちゃんと話すわ」
「でも、女の影響で進路を変えるってのは、どうなんだ?」
忠和の口調には軽い皮肉が混じっていた。
「そう言うなって」と晃司は肩をすくめる。
「一花かて、俺の彼女であると同時に、自衛官を目指す立派な防大生や。
その姿勢に影響を受けた部分もあるんや」
忠和は納得したようにうなずいた。
「確かに、人の影響は大きいよな。でも、女で思い出したが、
井上さんとはどうなんだ?最近あまり聞いてなかったけど」
忠和は一瞬迷ったが、正直に話すことにした。
「まだ紹介されて間もないけど、彼女、いい人だよ。
真面目だし、積極的だし、なんだか安心する」
「そっか、進展はこれからやな」と晃司が応じた。
「でもな、いい出会いがあると、毎日の生活に活気が出るもんやで」
忠和は小さく笑った。
「それはそうだな。でも、俺らの寮生活も思い出深いよな。
1年の時はゴミ扱い、2年でやっと下っ端、3年でようやく人間扱いだ」
「ほんまやな」と晃司は同意し、立ち上がった。
「そろそろ行こか、準備はできてるし」
二人が部屋を出ようとしたその時だった。
突然、周囲が暗くなり、奇妙な声が聞こえてきた。
「またこの時が来た。再び君たちに試練を与えよう……」
空間がゆがみ、目に見えない力が二人を包み込む。晃司は目を見開きながら、
忠和を振り返った。
「忠和、この感覚、俺には覚えがある。この後話すけど、しっかりしてや!」
しかし、その言葉も虚しく、二人は意識を失い、暗闇の中へと
吸い込まれていった。
防衛大学校の別の寮室
園田一花はベッドから飛び起きた。「おはよう、胡桃」
「おはよう、一花」と井上胡桃が返事をする。
「なんだか今日はよく眠れたなあ」と一花は気分良さそうに笑う。
「いいわね、私はちょっと寝不足かも」と胡桃がため息をついた。
「どうしたの?」と一花が心配そうに尋ねる。
「最近、よく眠れないことが多いみたいだけど」
胡桃は小さくうなずいた。「たぶん渋野さんのことを考えすぎてるんだと思う」
一花は目を丸くして笑った。
「やっぱり!胡桃らしいね。でも、そんなに真剣に考えなくてもいいのに」
「それがね、渋野さん、防大でもかなり成績が良いんだって。
それに比べて、私が相手にされるかどうか……」
「胡桃、そんなこと気にする必要ないよ」と一花は真剣な目で言った。
「恋愛なんて、なるようになるんだから。もっと自分に自信を持ちなよ!」
その言葉に勇気づけられた胡桃は笑顔を取り戻した。
「そうだね。一花に言われて、なんだか気が楽になったよ。ありがとう」
「よし、そろそろ出かけようか」と一花が立ち上がる。
しかしその時、不意に足元がふらつき、頭がズキンと痛んだ。
「君たち、今度は揃って出番が来た。使命を果たすがいい……」
「一花、これ、何?」と胡桃が震え声で言う。
「誰かが話してるみたいだけど……」
「私も同じ状態よ、胡桃」と一花は口元を押さえながら言った。
「でも、この感覚には覚えがある。もし後で話せたら説明する……」
しかし、胡桃も一花も耐え切れず、意識を失った。
彼らは試練の舞台へと導かれ、新たな運命を迎えることになる。
それがどのような物語を紡ぎ出すのかは、まだ誰も知らない。
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