第6話 モヤモヤ

鷺巣美弥という少女に告白された。

そして萌が不愉快そうに走って行った。

何故?、と思いながら俺は萌と一緒に帰宅する。

その途中でいつものコンビニの前を通りかけた時に萌が「お菓子買って行って良い?」と聞いてくる。

俺は頷きながら店内に入る。


「はいさーい」

「式守。はいさーい」

「式守さん」

「はいさーい。萌さん」


褐色肌のクソ元気な女子が俺達を迎える。

相変わらずだなコイツ、と思いながら俺は式守を見る。

式守は俺達を見ながら「元気ないねー?」と萌に言った。

よく分かったな。


「え?!げ、元気無いかな」

「無いよー。いつもの萌さんじゃないねー」

「...そ、そうかな。アハハ」


萌は少しだけ困惑しながら式守を見る。

そんな式守に聞いてみる。

「どう元気がない?」という感じで、だ。

すると式守は「うーん。なんだかよく分からないけど落ち込んでいる様に見えるさー?」と答える。

え?落ち込んでいる?


「...?...どういう事だ?萌」

「え、えっと...大丈夫。落ち込んでないよ」

「???」


よく分からないが萌はそう答えた。

それから式守に対して萌は「大丈夫だよ。...私は元気だから」と答える。

式守は「え?そうなの~?」と言いながら首を傾げる。


「...私は元気だから」


そして萌はニコッとしてから「式守さん以上に元気だよ」と言いつつ力こぶを作る。

式守はその反応に目を丸くしてから「そうか~」と返事をする。

何だか変に違和感がある。

だけど今はそれを追求出来る様な雰囲気ではなかった。



俺達はお菓子を買ってから飲み物を少し買って大きく手を振る式守に挨拶をしてから店を出る。

それから歩き出す。

すると萌が「今日はゴメン」と言ってきた。

俺は「?」を浮かべて萌を見る。


「...逃げちゃってゴメン」

「別に構わないんじゃないか?...逃げても俺が捕まえるよ。家族だし引き離したりしないさ」

「...ありがとう。翔也」


それから静かになる萌。

そして俺達は歩いてからお菓子を食い歩きをした。

家に帰って来る。

すると...萌がこう聞いてきた。


「翔也。...鷺巣さんに...返事するの?」

「ああ。回答を保留にしているからな」

「...そうなんだね」

「俺としては付き合っても構わないかなって思うけど...せっかく俺の事を好きになっている女子だしね」

「...そ、そうだね」


萌はそう返事をしながら顔を上げて笑みを浮かべる。

そして鍵を開けてから室内に入る。

それから俺はお茶を飲む。

萌も欲しそうだったのでお茶をあげた。


「ありがとう。翔也」

「ああ。構わない」

「...」

「...」


何だか萌の雰囲気がおかしい気がするんだが。

だけど纏まった答えが見つからないからそれは言い出せない。

俺は鞄を置いてから萌を見る。

そして萌は「美味しいね。お茶」と笑みを浮かべた。


「...そうだな。やっぱり上手だよな。お前の母親のお茶の作り方」

「だね」

「...なあ。萌」

「何?翔也」

「...何でお前はあの時、逃げたんだ?」

「...え」


その言葉を放った時。

萌はまるで瞬間凍結でもするかの様に固まった。

だが直ぐに「...それは分からないね」と苦笑する。

俺は「?...そうか?」と反応する。


「...女の子に追及は禁止だよ」

「そうだな。...すまない」

「...うん」


萌も分からない様な感じの返答しかしない。

答えが結局見つからない。

まあそれならそれでも良い様な気はする。

何か...心が知りたがらないし。

一体なんでそうなっているのか分からないけど。


「萌。何か悩み事があったら相談してくれよ?」

「あ、うん...」

「お前らしくないから」

「...そうだね。ありがとう。翔也」


それから萌は柔和な顔をしてから「じゃあ勉強でもしようか」と言ってくる。

うぇ...確かにな。

勉強しないと中間考査も有るしなぁ。

それに大学の入試。

そう考えながら俺は嫌々ながらも勉強をした。



正直な話。

私は...翔也から逃げた理由が分からない。

あの告白の現場を見てから嫌気が差したから逃げた。

そうとしか言えないけど。

何で?


「...」


私は翔也をチラッと見る。

すると翔也は「うん?どうした?」と反応した。

そんな翔也の顔をまじまじと見る。

翔也は「???」という感じで真っ赤になる。


「何をしているんだお前は」

「あ、ゴメン。翔也」

「いや。良いんだけどそんなまじまじ見つめられると流石に」

「そうだね。ゴメン」


それから私は翔也から視線を外す。

すると心臓がバクバク高鳴っている事に気が付いた。

私は意味不明なまま勉強をする。


そうしていると翔也が「なあ。萌。この問題分かるか?」と聞いてきた。

私は「ああ...そこは数式を当て嵌めてXが...」と言いながら翔也にくっ付いた。

その瞬間、私は飛び上がるぐらい熱を感じた。

というか静電気を指でも感じるぐらいの熱さだった。


「...!?」

「...萌?」

「あ、う、うん。ゴメン」

「何をしているんだ?お前」

「あ...い、いや。何でもない」


今まで何ともなかった様な感じの感情。

何だか...風邪でも引いたのだろうか。

そんな事を感じながら私は翔也に改めて咳払いして勉強を教えた。

翔也は真剣に聞いてくれた。

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