第2話 かぞく
私の家庭は複雑だ。誰もがそこを否定はしないだろう。どんなに人付き合いの上手な人が精一杯気を遣っても、「そんなことないよー」とフォローすることはムリだろう。
先程の私と
私には二歳上の葉月と晴太の他に、四歳上と八歳上に二人の兄、そして五歳下と七歳下に二人の妹がいる。
すごいでしょう。私たちは七人兄妹なのだ。
もっと驚かせてあげよう。
双子の葉月と晴太以外、全員父親が違う。
大抵の人が、ここで顔色を変える。眉をひそめる。そうでしょう、そうでしょう。
私たち兄妹は皆、お母さんは同じ人。でも私はあまり顔を知らない。赤ちゃんの時に今住んでいる家(祖母の家)に預けられてから、母は帰ってこない。現在も行方不明。音信不通のままだ。
私の記憶に唯一強く残っている母は、一番下の妹を抱っこして玄関先に立っていた。やけに線の細い、だけど地面にどっしりと仁王立ちした若い女。あれは下の妹を捨てにやってきた日の光景なのだろう。あの時の母の顔は、今の私よりも少女みたいだった。
私たちは皆、そんな感じで母から手放され、祖母の家で祖母のユカちゃん(ユカちゃんと呼ばないと本人が怒るのだ。おばあちゃんだなんて、口が裂けても呼べない)と母の弟に当たる叔父とジロパパ、三人の大人に育てられているというわけだ。
私が『信頼できる大人』と評したジロパパは、上から二番目の兄・
ジロパパは私たち兄妹が暮らしている家とは別の家に住んでいるが、近所だからよく世話を焼きに来てくれる。自分と全く血が繋がっていない他の子どもにも優しいし、ちゃんと叱ってくれる。勉強だって見てくれる。聞いても決して教えてくれないけれど、金銭的な援助だって随分してくれているようだ。
私の家庭の複雑さ具合、分かっていただけただろうか。
外からコソコソ言われることとか、偏見とか、そういうのは慣れた。学校の中で陰口のネタにされがちだということも承知している。
上の兄姉たちから、そういう処世術は色々伝授してもらっていた。兄妹の中で私が一番根暗で強く言い返せない性分をしていることを、皆心配してくれているのだ。
でも、案外大丈夫。友達も普通にいるし、外から見た家庭環境が複雑でも家族仲は良い。素直に家族が好きだと言えるし、家は居心地いい。一人部屋はないけどね。
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