俺のハーレムパーティーは絶望をも乗り越えるので問題ありません!
雪村灯里
第1話 俺はぶっとい玉の輿に乗る
薄暗くて、カビ臭いダンジョンの最深。
古い宝箱の鍵が『ガチン』と鳴いて、重い蓋が開く。俺達七人は宝箱を囲んで、中身を
「これが、ユニコーンの角!」
お宝は、30cm程の細長い棒。円錐状で大理石のように白く、表面に刻まれた模様が美しい。手に取ると、白く淡い光を放った。
時間差で、メンバー達から歓声が上がる。ハイタッチしたり抱き合ったり。空間は喜びで満ちた。
「スペード様? 宝が無事に見つかって良かったです!」
耳をくすぐる可愛い声が、俺の名を呼ぶ。隣で美しい金髪がサラリと揺れた。
彼女は聖女・ルクシア。慈愛に満ちた
「これで、姫様の病が治せますね!」
そう、ユニコーンの角には解毒作用がある。毒に侵され
姫を治せば、あのジジイ……ゴホン。国王も、俺を
つまり、王族の仲間入り! ぶっとい逆玉の輿で 将 来 安 泰!! 地位と名誉を手に入れた俺は永遠にチヤホヤ!! 夜も美女が押し寄せるだろう!!
ああ、楽しみ過ぎて
俺は溢れそうな
聖女・ルクシアの白く華奢な手をそっと握り、彼女の目をじっと見つめる。
「ルクシア様のお力添えで、このダンジョンに入れました。あなたが居なかったら僕はここまでたどり着けませんでした」
これで落ちない女はいない。聖女ルクシアは驚いて頬を染めると、目を伏せて控えめに微笑んだ。
「そんな
このダンジョンの正式名称は忘れたが、別名『ユニコーンの檻』。清らかな乙女の存在が、文字通り鍵となっている。
18年間、聖女の塔で純潔を守った彼女が居なければ、このダンジョンに入れないし、脱出もできない。何とか彼女と周囲を口説き落とし、今に至る。
しかし、こんな薄暗いダンジョンの中でも、彼女は美しい。このダンジョンを脱出した
熱を帯びた目で見つめ合う俺達。そんな甘い時間は、赤毛の女騎士によって打ち切られた。
「スペード様? 軽々しく、ルクシア様に触らないでください」
女騎士ソロアだ。彼女はルクシアを抱き寄せるように俺から引き離す。嫉妬を孕んだ夕日色の目が、俺を睨みつけた。
おっと、いけない。
真面目なソロアは、聖女ルクシアを守る騎士。
聖女をこのダンジョンに連れて行く条件として、彼女の同行が課せられた。
「すまないソロア。嬉しくてつい」
彼女は俺と同じ25歳。美人だが真面目で融通が利かず、無愛想なのが玉に傷。長い髪を高く後ろで結い、火龍のアーマーを纏い己を律している。
だが! その
俺とソロアのやり取りを見ていた人物が、妖艶な声で悪戯っぽく笑った。
「ふふふ、スペード。喜ぶのはまだ早いわ?」
振り返り声の主を見ると、古参メンバーの元
彼女は手にしていたピッキング道具を仕舞うと、俺に向かい『ね♡』と軽く首を傾けた。顎のラインで切り揃えられたミステリアスな黒髪がさらりと揺れる。黒革の眼帯で隠されていない、緋色の左目をニコニコと細めていた。
「ソロアさんの言う通りよ? ココを出てからたっぷり喜びを噛みしめないとね? それに、私達も頑張ったんだから沢山褒めて貰わないと。ねぇ?」
彼女のセリフを聞いたメンバー達が、うんうんと頷く。
みんな俺と聖女を見てたのか? 危なかった!
2歳年上のアワリは冷静で、心情を読むのに長けている。このパーティーのバランサーだ。
そんな彼女は、昼も夜も年上の余裕と包容力で俺をフォローしてくれる。
「ああ、すまない。帰るまでがクエストだな。姫様を救うために、早く帰ろう」
俺はユニコーンの角を守る為に、身に付けていたストールを巻いた。それを背負っている鞄の中に仕舞い、立ち上がると……
――ガチッ
不気味な音が部屋中に響き、ギギギと奇怪な音が鳴りだした。この音を聞いてアワリが慌てだす。
「トラップよ! みんな! 早くこの部屋から出ましょう!!」
その言葉と共に、部屋の奥の隠し扉が勢いよく音を立てて開き、モンスターたちが溢れ出た。俺達が入ってきた扉を見ると、静かに閉じようとしている。
「マズイ! みんな急げ!!」
俺の声で弾かれたように、全員出口に向かって走り出す。しかし、魔物の触手がルクシアへと伸び、彼女は足を掴まれ転んでしまった。
「きゃっ!」
「「ルクシア様!!」」
俺とソロアは剣を握り、ルクシアに襲い掛かろうとするモンスターを切りつけた。ソロアがモンスターを薙ぎ払っている間に、転んだ彼女を抱き起す。
「怪我はありませんか?」
「ええ、ごめんなさい」
モンスターめ! 俺の将来の婚約者になって事を!!
「三人とも早く!!」
出口からアワリが叫ぶ声が聞こえた。残りのメンバーも扉が閉まらない様に抵抗している。
だが、モンスターの数が多い。また背を向けて駆け出しても、捕まるのがオチだ……剣を握り締めた時、ソロアが叫んだ。
「二人とも行ってください! ココは私が」
「バカを言うな! そんなことしたら……」
「部屋を出てください。私は覚悟をもってここに来ています。聖女様と姫様を頼みます、スペード様」
彼女は真顔で言い放つと、
ダンジョンでは、一瞬の判断の遅れが命取りになる。俺は剣を仕舞い、ルクシアを抱き上げて走り出した。
「いやっ! ソロア!!」
ルクシアを抱いたまま、閉りゆく扉の隙間に飛び込んだ。同時に扉を抑えていた岩が音を立てて砕ける。
彼女を守りながら転がり、すぐに起き上がって振り向くと、魔物の群れに飲まれてゆくソロアと目が合った
「ソロアーーッ」
彼女は「愛してます」の言葉と笑顔を残し、扉は無情にも閉ざされた。
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