君の才能で世界を救ってみませんか
室町幸兵衛
プロローグ
第1話 惑星トーテキのケンタール
俺の名前はケンタール・カスタド。惑星トーテキ生まれのトーテキ育ち。みんなからはケンタと呼ばれている。
現在の年齢は2万9千……数えるのが面倒くさいので、分かりやすく29歳にしておこう。
職業は、廃棄された部品や使わなくなったモノを拾い集め、それらを組み合わせて面白い物を制作するというジャンク職人をしている。たまにマニアックな人から製作依頼が舞い込む事もあり、それで収入を得ている。
少ないながらも自力で稼いでいる以上働いていると思うのだが、家族は俺の仕事内容を理解しておらず、未だ無職だと思っている。
会社へ行く事もなく、起床時間も自由。家の中に籠りっきりでモソモソ制作しているため、周り近所からは「長男なのに働かないごく潰し」と噂され、母親からは「頼むから真っ当に働いて欲しい」と泣きながら懇願された。妹からは「引きニート」と揶揄されている。
ふ、ふざけんじゃねぇ!
性格を一言で表現すれば、面倒くさがりで怠け者。ただし、正義感だけは人一倍ある。頼まれれば嫌と言えない性格で、それが災いする事も度々である。
趣味はアニメ鑑賞と妄想。特に妄想に関しては、自分でも呆れ果てるくらい色々なシチュエーションを生み出してしまう。ちょっとでも油断すると夢の世界へタイムスリップし、人の話を聞かなくなるという特技を持っている。
彼女は……。
ついこの間、フラれてしまった。理由は「毎回、爪の間が黒いから」だった。
基板類や油をイジるため、どうしても爪の間に汚れがついてしまう。デートの際はシャワーを浴びて爪ブラシで擦って綺麗にするのだが、細かい汚れが落ちない時もある。付き合った当初からそうだったのに、1年後にそんな事を言われても……。
たぶん、新しい男が出来たのだろう。と推測する。
現在、彼女絶賛募集中である。
以上がザックリした俺のスペックだ。
毎日ふしだらな生活を送っていたある日の事だった。
俺の元へ一通のメールが届いた。
『来たれ、未来の若者! 君の才能が世界を救う』
内容が1ナノも分からない謎のメッセージが届き、その横に小さな文字で、
『只今、参加者には粗品贈呈中』
と書かれていた。
メッセージの送り主は、我が星の惑星調査団からだった。
何度か仕事を依頼された事があり、まんざら知らない間柄でもない。簡単に言うとお役所的な所で、このメッセージから推測するに人員募集だと思われる。
別に星の仕事にも役人にも興味はない。このままスルーしようかと思ったが粗品という文字に引っ掛かった。
惑星調査団は我が星の中でもエリート中のエリートだ。難しい試験を乗り越えてようやく辿り着ける最難関の施設である。ここに就職出来れば将来安泰という親も喜ぶ花形職業だ。そんな施設がメールだけで人員を募集する事はない。
という事は、惑星を上げての一大プロジェクトの可能性が高いと思われる。
トーテキの花形職業である調査団が満を持して立案した企画という事は、粗品と言えども粗末なモノではあるまい。もしかしたら凄いモノが配られるかもしれない。見た事もない金銀財宝とか、結婚相手とか……。
参加は自由で、やるやらないも自由。話を聞くだけでも見学だけでもOKらしい。
妄想が膨らみ、粗品に目がくらんだ俺は「話を聞くだけ聞いてみよう」と思い、参加してみた。
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