ホラー短編集|オリジナル作品

紫水 翠菜

近所の神社

これは私が12歳の夏休みに体験した話です。


当時、私は団地に住んでいました。

団地の前には小さな公園があり、近所の女子2人と遊んでいたときのことです。


「ねぇ、暇だから肝試ししようよ」とA子が木の棒を持ち、砂で落書きしながら退屈そうに言いました。

土曜日の13時頃、明るい時間帯に肝試ししようと言うA子に私とB子は「こんな明るい時間なのに肝試しなんて怖いわけないじゃん!」と笑い合いましたが、人数が少ないこともあり正直退屈していたのでA子の話しにのることに。


肝試しをする場所は、私たちの中で''近所の神社''一択。

その神社は団地から徒歩2分くらいの場所で、明るい時間帯でも遠くから見るだけで怖くなるような異様な雰囲気を放っています。


申し訳程度の遊具と、こぢんまりとした能舞台があり、管理しているのかも分からないような廃れ具合。

過去に1度神社で遊んだことがありましたが、恐怖心に圧倒されてしまい数分も持たず、そこから神社付近には近づかないようにしていたので、私たちの肝試しにはぴったりの場所でした。


神社に着くと、やはり異様な雰囲気に包まれており、どこか近づきがたい。

ひとりひとり能舞台の扉をノックして戻ってくる予定でしたが、あまりにも怖く、足がどうしても進まないので3人で行くことに。


神社の敷地に足を踏み入れると、空気が重く、真夏の昼間だというのに肌寒いような感覚が襲ってきました。

ゆっくりと能舞台に近づき、A子がコンコンコン…と3回扉をノックすると、コン…コン…とゆっくりノックが返ってくる。


私達は悲鳴をあげ、急いで神社の外にでました。

2人はその場に座り込んでおり、私は仰向けに寝そべりながら顔を隠し、ガタガタと震える。

その様子を見たB子は、「ねぇ、どうしたの?」と声を掛けてくれましたが、私は顔を隠したまま「目の前にいるの…」と言いました。


''女が目の前にいる''

直接見てはいけない、脳内に青白い顔、目が真っ黒な女が私の顔を覗き込んでいる映像のようなものが流れてきた。


2人は急いで、霊感のある友人C子に連絡してくれ、来てもらうことに。

C子も近所に住んでおり、3分くらいで私たちのいる神社へ来てくれた。


私が動けないので、A子とB子は寄り添ってくれました。

女の顔がどんどん薄れていきましたが、あまりにも怖くて3分がとても長く感じた瞬間だったのを覚えています。


C子は「もう顔を隠さなくても大丈夫だよ」と声を掛けてくれ、私は安心してC子を見ました。

するとC子の母親も来ており、心配そうに私達を見ていた。


C子とC子の母親が塩を撒き、背中をバンバンッ!と叩き簡易的なお祓いをしてくれました。

その後、C子の家にお邪魔し話をすることに。

私達が事の経緯を説明するとC子は「目がくり抜かれた女がいた。だから目が真っ黒だったんだと思う。しかも強い霊だからもう2度とあの神社には行かないで欲しい」と私達はこっぴどく叱られました。


C子いわく、私は環境や人に敏感で霊的なものを感じやすい。さらに気が弱く優しいので霊がちょっかいをかけにくるから、良くないと思ったら行かないほうがいいと言われました。

あれから、あの神社や良くないと思った所には近づかないようにしています。

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