第10話 緊張の再会

駅に着くと、改札の前で少し周りを見渡した。


まだ華乃の姿は見えない。


心臓が妙にドキドキして落ち着かない。

別に初めて会うわけでもないのに、何なんだこの緊張感は。


ポケットからスマホを取り出して、華乃にメッセージを送ろうとしたその時――


「輝人。」


背後から聞き慣れた声が聞こえた。


振り向くと、そこに華乃が立っていた。


「……華乃。」


昨日の夜、電話で話したばかりなのに、こうして直接会うのはすごく久しぶりな気がする。


華乃は少し恥ずかしそうに俺を見つめながら、小さく笑った。


「待たせちゃった?」


「いや、今来たとこ。」


自然とそんなセリフが口をついて出る。


華乃は、いつも通りの制服姿だけど、髪がいつもより少しだけ整えられている気がした。


「……なんか、雰囲気違うな。」


思わずそう言うと、華乃は一瞬驚いた顔をして、それから少し頬を赤らめた。


「そ、そう? 変わってないよ、別に……。」


「いや、なんか……かわいい。」


自分で言っておきながら、言った瞬間に少し後悔した。


……やべぇ、なんか俺、変なこと言ったか?


「……っ!」


華乃は一瞬固まって、目を丸くした。


「あ、いや、変っていう意味じゃなくて、なんかこう、いい感じっていうか……。」


俺が慌てて言い直そうとすると、華乃はうつむいて、小さく笑った。


「ふふ……ありがと。」


顔を上げた華乃の目が、まっすぐ俺を見ていた。


「……久しぶりに会えて、嬉しい。」


その一言が、ストレートに胸に響いた。


「俺も。」


俺たちは、お互いに少し照れながら笑い合った。


避けられていたはずの相手と、こんな風に並んで歩く日が来るなんて――


やっぱり、人生って何が起こるかわからない。

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