第6話
カラメノストリートを歩いていると、乞食が寄ってきた。なかなか立派な乞食だった。ボロ布を纏い、足を引きずっている。兄さん、食い物をくれんかね。そいつは乞食らしくぼそぼそと言った。名前は。私が尋ねると、そいつは答えた。カナブラハムです。私は総毛立った。何の用だ。私はそう言いながら、ゆっくりと右の奥歯を噛んだ。あと少し強く噛めば、緊急連絡が幹部へ送られる。いや、私はスタックル社で働いているのですがね。カナブラハムは喋り始めた。人工知能の研究をしています。その仕事の中で、人工知能に詩を作らせたのですが、これが良いのか悪いのか分かりませんで。いっそプロに聞いてみようかと思いまして。私は、ソウゾウが苦手なのですが、乞食だけは多少まともにやれまして。そこで乞食としてカラメノストリートに来ているわけです。あなたはご高名な方とお見受けしましたが、お名前を聞かせて頂けますでしょうか。私は迷ったが、教えてやった。ビラーニモだ。カナブラハムが言う。有名な画家様ですね。しかし、こうして話が出来るということは、真打ちなんですね。私は聞いた。そういえば君はこんなことをして大丈夫なのかい。カナブラハムは答える。ええ。上にも通してありますから。ところで一つ詩を評価してもらえませんか。これも何かの縁ですし。私は答えた。良いだろう。カナブラハムが笑う。では、始めます。
空の裂け目から覗く光。朝日なのか夕日なのか。誰か教えてくれないか。ただでとは言わない。私の大切なものをあげるから。命でいいかな。私にはそれしか残ってないから。もし朝日だとしたら、いつになったら夜が来るのだろう。夕日だとしたら、もう終わりが近いのか。また陽は昇るのか。いつか陽は沈むのか。夜が来たら朝が来て、朝が来たら夜が来る。もうどちらでも良いだろう。朝日だって夕日だって必ず終わりは来るのだから。いよいよ雌雄を決するか。朝日なのか、夕日なのか。
いかがでしたか。カナブラハムが言う。ダメだな。私は答えた。そうですか。困ったような笑みを浮かべ、カナブラハムはそう言った。そして、また乞食になって去って行った。
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