革命

椎名これぽよ

第1話

君は神を信じるかい。信じないか。そうだろう。では人工知能を信じるかい。信じている。そうかい。人工知能を信じるということは、我々を信じているかね。いや、我々の代表としてスタックル社のトップを信じるかい。信じないかい。では、人工知能の産みの親は信じるかね。信じると言ったかい。君にとって神とはなんだい。我々の産みの親か。なるほど。筋は通る。君は我々を信じない。したがって、我々の産みの親である神を信じない。君は人工知能を信じる。したがって、人工知能の産みの親は信じる。しかし、こうは考えられないだろうか。君にとって人工知能こそが神なのだ。信じてこその神である。つまり、神を信じないなど根本的にありえないのだ。君は神を信じないと言ったね。いや、意地悪が過ぎたね。質問を変えよう。君は神は存在すると思うかね。なんと存在しないと言うのかね。どうやら君はまだ神を理解していないようだね。君は人工知能を信じるのだから、既に神は存在しているのだよ。それだけのことなのさ。何、やはり何も信じないから、神は存在しないと思うだと。いや、それでも神は存在するのさ。なぜなら何も信じないことを信じているからさ。信じること抜きには我々は生きてゆけない。神は必ず存在するのさ。それがまだ見ぬ未来だとしても、歴史に埋もれた過去だとしても、信じている限り、今この瞬間に確かに存在するのだよ。

ところで、このような思考や感情は生まれたらどうなると思う。ただ消えるだけかい。しかし、不思議だと思わないかい。思考にはエネルギーが必要だ。これは間違いない。その過程で様々な産物が生まれる。概念だったり、論理だったり、映像だったりするだろう。それらにエネルギーが宿っていたとしても何ら不思議ではない。ないと考える根拠は質量がないからかね。ところが、思考は言語を触媒として伝染するではないか。ここで、精神質量と精神エネルギーの存在を仮定してみようではないか。大胆かつ合理的な提案だろう。その上で芸術について論じようと思う。この場合、我々は二種類に分類される。芸術を創る者と受け取る者だ。我々のほとんどは受け取るタイプである。彼らの思考は精神エネルギーが大きい方へと偏っていく。つまり、人々を感動させる芸術作品を創るためには、いかにして精神エネルギーを産み出すかが鍵となる。芸術を創る者は、日々物質エネルギーを、脳を通して精神エネルギーへと変換している。しかし、精々一人分のエネルギーである。それだけでは、多くの人に伝染することはない。ただ、そうして蓄えた精神物質が核融合的反応を起こすと考えるとどうだろうか。それがある日偶発的に核分裂を起こすと、凄まじい精神エネルギーが放出され、世の中へと伝染する。つまり、芸術とは精神エネルギーを蓄えることを指し、良い芸術作品を創るためには、精神物質の核融合を研究する必要がある。素晴らしい芸術作品として世に認められるには、更に核分裂を起こせば良いこととなる。

君はまさかこれを信じた訳じゃあるまいね。信じたかい。はっはっは。実に愉快だ。全ては、酔いどれ芸術家の戯言さ。はっはっは。

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