田中とソドムの新生活
くろたこ4
プロローグ
第1話 憂鬱な月曜 困難を添えて
ピピ... ピピピ... ピピピ... ピピピ
けたたましい警報音が朝が来たことを告げる。しかし、まぶたは重く閉ざされ、いつか警報が鳴り止止んでくれることを祈り、暗い夢の底に意識を落とそうとする。しかしいくら待てどもその警報は鳴り止んではくれない、全く誰がこんな事をしたんだ?犯人へ向けての怒りが湧き上がる。しかしその怒りは霧散して消える、なぜならスマホのアラームを自信たっぷりに設定したのは自分自信なのだから。
眠気でボヤける目を擦りながら、自身のモジャモジャの黒髪を撫で付ける男 田中蒼太、田中はスマホを手に取りアラームを止め、心の中で静かに嘆く、なぜ人は己を過信してしまうのだろうか、寝る前は6時起きとか余裕だと思っていたが、いざ朝が来たら6時に起きることの難しさに驚嘆である。二度寝したくてたまらないという怠惰な欲求を抑え、時間を確認する、今日は月曜つまり大学がある。学費を大量に払う身分の田中にとっては講義には絶対遅れてはいけない、ん?
…、7時、?
どうやら6時には本当に起きれなかったみたいだ、バッチリ二度寝をしていたようだ、アパートの窓からサンサンと差し込む日光が心地いい、この心地いい光のせいで二度寝していたのかもしれない、そう思うと日光が何だか憎らしく見えてきたが、今はそんなことを考える時間はないバスは7:30の便を逃したら1時間後、大学は8:40から1時限目の講義が入っている、ダメだ、身だしなみを整える時間はない、田中は最低限の準備をして、自分の頼りない手足を必死に動かしバス停まで走る。だがしかし工学部の学生でインドアの田中にはそんな素晴らしい脚力は無い、結果汗をダラダラと流し、何とかバス停まで徒歩10分の公園まで来た、汗だくの額をぬぐい、時間を確認する。スマホには7:15と表示され、安堵する。「少しこの公園で息を整えよう」田中は公園に入り座れる場所はないかと探す、静かな公園だ、人の気配がまるでしない、あたりにベンチはないかと見回していると、「貴様くさいぞ」後ろから田中は声をかけられ思わず振り返る。
そこには真っ白な長髪の髪と肌に紅色の綺麗な瞳とワンピース、そして角と尾の生えた少女が鼻をつまみながら立っていた。苛立たしいと言った様子であり、ほかにも気になる点は随所に見受けられるが、何をも置いて、田中はあまりのその現実離れした美しさに目を奪われ疑問が吹き飛んでしまった。
「おい、聞いているのか!」少女に見とれて、固まっている田中に、しびれを切らしたのか怒声が飛ぶ。その声に驚いた田中の体がビクッと縮み思わず頷く、「よし、いいだろう、であれば余の縄張りから直ちに出て行くがいい」田中が頷いた事を了承と勘違いした少女が、腕を組みふんぞりかえっている。縄張り?最近の子はそういう遊びが流行っているのか、さらにただのコスプレとは思えない、実際に動く尾、というか本当にこれはコスプレなのだろうかどうやって動かしているんだろう、他にも色々疑問は浮かぶが、田中の中の本能は警笛をあげている、逃げろと、そうしなければ死ぬと。そのため今浮かんだ疑問は一旦飲み込み、田中は少女の指示に素直に従う。「失礼しました〜」と言って公園の敷地から出ようとするとゴツンッと何かにぶつかる「イッ!」顔面を平たい何かにぶつけた衝撃で声が漏れ何とか鼻を押さえながら持ち直す、田中は公園の敷地と歩道の境に手を伸ばし何にぶつかったのか確認する、壁?、温度は感じないが確かにそこに何か平たく硬いものが公園の敷地を境界にしてある。しかし全くの無色透明で近くで見ても本当にそこに壁があるのか触らないと認識出来ない、どこか通れるところはないかとペタペタと壁を触って探す「貴様、ふざけているのか?」少女が低い声で咎めるよう田中を睨む。いや、ふざけてはないです田中は何とか出口を探そうとさらに必死に手を動かす。背後からはバシンッバシンッと田中を催促するように尾で地面を叩く音が響く。その音が響くたび田中は自分の生命の終わりへのカウントダウンが進むようで汗が噴き出る「貴様!、ゲートかキーを使って入ってきたのであろう?ならばなぜそれを使わない?」そんなものは知らない、田中は眉を顰め少女の言葉を咀嚼し考えを一度巡らせるが全くわからない、田中はゆっくり後ろを振り少女に向き直る。もう一か八かだ「あのー、キーってアパートの鍵でも大丈夫でしょうか?」田中はポケットからアパートの鍵を取り出し最終的にボケた、いや、ボケるしかこの異常な出来事をうまく消化する方法を田中は持っていなかった。しかし渾身の田中のボケは少女の眼光をさらに鋭くさせるだけだった「おちょくっているのか?」少女の尾の動きがピタリと止まり田中は蛇に睨まれたカエルのような気持ちになる。「余の前でそんな戯言を言える羽虫がいるとはな」少女の顔から表情が消え面のようになる、その刹那、田中の眼下に少女の顔が迫り、少女の手が田中の胸を貫き田中の心臓を抉りガブリと嚙る。「ふむ、これは…」少女は何かを確かめるように田中の心臓をモチャモチャと咀嚼する。少女は田中の心臓を咀嚼し飲み込むと楽しげな笑みを浮かべる。「これは傑作だな、本当にただの羽虫だとはな」楽しげに笑いながら少女は心臓を握り潰し田中の死体を一瞥する。田中の死体には胸の中心にぽっかりと穴が空いていてまだ血が溢れ出ている「しかし何故..ん?」田中が少女のワンピースの裾を片手でグッと掴む。少女の顔には動揺の色が浮かぶ、次の瞬間田中は叫びながら顔をあげる「ああああ死ぬかと思った、!」「ギャァァァァ」少女が田中の声に驚いて容姿相応の悲鳴を上げる「なっ何で生きているのだ貴様ァァ!!」少女は尻餅をつき田中から逃げるべく後退ろうとするが田中が少女のワンピースの裾を掴んだままのため逃れることができずジタバタするだけに終わる、田中は少女のワンピースの裾を掴んで離さないために怯える少女とそのワンピースの裾をガッチリ掴んで離さない成人男性と言う一見事案のような絵面が完成してしまった。
少女の瞳は涙で潤見始めている。田中は体を起こし自分の胸元を慌てて確認する。しかし田中の胸元には傷はない。「よかったぁ夢かぁ」田中は安堵の声を漏らし、胸を撫で下ろす。少女は田中を驚嘆の表情で見ている。
「それで、あのー、どうやってここから出るんでしょうか…」田中がなぜか申し訳なさそうに少女に聞く、「貴様、何者だ」少女は田中を強く警戒し、鋭い視線を向ける。田中は何が何だかよく分からず、取り敢えず深呼吸をして、状況の整理を始める。まず公園に入って臭いと言われて、公園から出て行けと言われて、ってあれ踏んだり蹴ったりじゃないか?コレ、まぁそんなことは今はいいはず、だよな?、その後透明の壁に当たって、フレンドリーなジョークをかましたら意識が途絶えて、..ダメだ全くわからない、何がなんなんだ
田中は状況を整理したがそれでも何が何か分からず取り敢えず聞かれた事を答える「えっと、田中と申します、大学生やってます。」少女は何故か一度トドメを刺したのに元気な様子の田中を不審に思い、田中の返答をよく咀嚼しているようだ、「ふむ?」しかし、田中の返答はよく分からなかった様子だ。少女は小首をコクッとかしげる。「貴方は?」少女は田中を警戒してか小さい声で喋る「おしえない…」少女はプイッとそっぽを向いてしまう「ぇぇ」田中の口から悲しそうな声が漏れる。「それでは、あの、そのゲートとかキーとか言うのを使わずにこの公園から出る方法ってありますかね?」田中はそっぽを向く少女になるべく優しい声で喋る。「そんな方法はない」横目で田中の様子をチラチラ確認しながら少女は答える。田中はその様子を見て、ひょっとして少女も自分を怖がっているのでは無いかと考える、確かに少女は何かを警戒しているようで神経が尖っているのだろう。田中はその辺りに気を回すことが出来なかったと思い、まずは自分は敵ではないと示すために、もう手遅れな気もするが、何かしら少女の気が引けそうなものを手持ちの通学用のバッグの中を探す、田中の通学用のバッグの中は参考書、教科書、パソコン、USB、筆記用具、ダメだ何もない、一人でバッグの中をあさり慌て始めた田中の様子をじっと見て、見かねたのか少女はまた鋭く視線を田中に向け口を開く「貴様本当にケモノではないのだな?」鋭く低い声だ。まるでこれが最後のチャンスだぞと言うようだ。しかし田中には何のことかよく分からず首を傾げ目が点になる。その様子を見た少女は呆れたようにため息をつくと「もうよい、余が狭量であった」と少女が手をひらひらと振るその瞬間張り詰めていた空気感が少し緩む「羽虫の一匹や二匹見逃してやる、少し待て」そういうと少女は立ち上がりワンピースについた土を払い落とすと、右手を頭上に掲げゆっくりと手を握っていく、すると少女の角が赤く発光し始め、完全に少女が手を握った時角の光が一層強くなり周囲の透明な壁に突如ヒビが入り空中にヒビが浮いてるようなまるで空間自体にヒビが入ったような光景になり砕け散る。その瞬間少女の頭上から大きな黒い口が歯をぎらつかせて落ちてくる、その大口を本能的に不味いと悟った田中はとっさに少女の左手を掴み公園の外に素早く突き飛ばす。しかし田中は少女を突き飛ばしたことで大口に反応が出来なかった。少女は田中のとっさにとった行動に呆気にとられ、次の瞬間には、上半身を噛みちぎられた田中の姿が少女の目に映り「ぁぁ」とか細い間の抜けた声が少女から漏れる。
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