第10話

「お嬢様、旦那様がお呼びです」


 メイジーが部屋に居た私を呼びに来てくれた。


「お父様、お呼びですか?」

「あぁ、リア。そこへお座り」


 私はお父様に促されるように座るとお父様は頬笑んでいた。


「先程、ラストール公爵から謝罪の手紙が届いた。リアはどうしたい?」

「特に思うことはありません。強いて言うのなら、私に関わらないで欲しいくらいでしょうか」


「そうか。分かった。公爵家からは謝罪を受けるだけにしておこう。そしてマリーナ嬢と言ったかな?


 彼女は普段から爵位や婚約者候補の筆頭という立場を盾に他の候補者達や苦言を呈する者に過激な牽制をして回っていたようだ。


 彼女はライアン殿下に咎められ、婚約者候補を辞退し、の修道院に向かうらしい」


「そうですか。ライアン殿下の婚約者が早く決まると良いですね」

「ああ、そうだな」


 私はこれを機に父に将来の事を話すことに決めた。


「ところでお父様。私、王宮魔導師になりたいです。そうすれば王宮で生活する事になり、自分の身の安全も守れますし、殿下と婚約をしなくても良いでしょう?


 私もお父様やお兄様のように王宮で働きたい、人々の役に立ちたい。


 私も貴族の端くれですからいずれは結婚したいとは思っています。けれど、お兄様のような素敵な方と結婚がしたいです。お父様やお母様のような温かで愛に包まれている家庭が欲しいのです」


 お父様の頬が緩んで今にも溶けてしまいそうだわ。


「そうか。リアの気持ちは分かった。すぐに王宮魔導師の試験申請を出しておこう。リアは過去前世に実際に現場で働いていたのだから充分実力はあるのだろう。光属性持ちの保護も兼ねて試験はすぐ行われると思う」


 父にとって私の将来は心配なものだろう。侯爵令嬢という立ち位置で婚約者がこの年でもいないのは珍しい。


 私としても貴族である以上将来は父が決めた相手と結婚するのは当たり前だと思う。


 ただ、数が少ない光属性持ちの私が婚姻し、活動が出来なくなると様々なところで影響が出るため慎重にならざるを得ないのも理解している。



 公爵家からの手紙が届いた日の翌日、早くもクラスではマリーナ様が王子妃候補を辞退し、学院を辞めたという話で持ち切りだった。


 クラスメイトから聞いた話によると、マリーナ様は以前から問題を起こしていたようだ。


 主催される王子妃候補者達のお茶会はお茶を掛けるのは序の口で水魔法で水たまりやぬかるみを作り、令嬢たちを転ばせたり、突き飛ばしたりするなど過激なことをしていて相当有名だったらしい。


 ライアン殿下の婚約者候補達はマリーナ嬢が脱落し、平穏になるかと思いきや、他の候補者達もマリーナ様と似たり寄ったりだそうで当分の間争いは続く様相を呈している。


 女って恐ろしい。


 マリーナ様が王子妃候補を辞退するとなると、権力好きなアイラは絶対に黙っていないはず。アイラをどうやって黙らせたのかしら。


 入学当初からゴタゴタで毎日大変だったけれど、マリーナ様がいなくなり、クラスに平和な日々が訪れた。


 私はというと、長期休み前の試験も難なくクリアできた。一位ではなかったけれど、五位には入っていた。父も母も褒めてくれたわ。もちろん兄は毎回一位で涼しい顔をしている。


 ライアン殿下の側近になるほどだものね。


 優秀過ぎる! と、ごねると兄はふふっと頬笑みながら躱してしまった。私はいつまでたっても兄に勝てる気がしないわ。


 それと長期休みに入ったら王宮の魔導師の試験も受ける事が決まった。魔導師の試験は基本的に三年生の後半で受ける物だけれど、光属性持ちの保護という観点から試験を受けることになったのかもしれない。


 きっと試験は大丈夫だと思いたい。


 学科試験は復習で何とかなるし、実技試験の光魔法は大丈夫。


 前世は学院卒業前から実地訓練と称して治療に駆り出されていたし、卒業後も結婚する直前まで働いていたもの。


 水魔法はまだ訓練を始めたばかりで実際に使えるかといわれたら難しい。

 その辺りはおいおい訓練するしかないよね。

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