第17話

「そんなわけないよ!」

「でも、さ、でも!」

 彼はそわそわした。


「薬局に行って検査薬買って来ようよ! 近くに遅くまでやってるとこあったよね!?」

 私は黙ってうつむいた。

 もう検査薬は試したあとだ。


「……明日、病院に行くから」

「ホントに? 絶対だよ!」

 カズはうれしそうに跳ねてリビングに戻る。

 私はため息をついた。




 翌日、私は産婦人科に行った。

 落ち着かない気持ちで問診表を書いて尿検査を受ける。

 呼ばれてから診察室に行くと、カズは憑いてきた。

「最低、憑いてこないでよ」

 小声で文句を言う。


「だって心配だもん」

 カズはくねくねと体をくねらせて、結局憑いてくる。

 診察室に入ってすぐ、カズは怒り出した。

「この医者、男じゃないか! 女医のところ探そう!」

 うるさい、と私は黙殺した。


 この! この! と殴ろうとする彼が見えた。その手は全部スカッと空振りしていた。

 問診のあと、独特の内診台で器具を挿入されて検査を受けた。


「なにこれ、なんで、なにしてんの!?」

 ほんと、黙っててほしい。おかげで気がまぎれたけれど。


「ああ、赤ちゃんいますね。画像、わかります? 心臓が動いてるのが光の点滅でわかると思いますが」

「はい」

 医者の言葉に、私は驚いて画像を見た。

 ちかちかしている点滅に、思いがけず胸がどきどきした。


「これ? これが俺の子供!?」

 画面にカズがかぶりついて、急に見づらくなった。

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