第25話 巨大な怪物

 (ここはどこにしょうか?私は何をしようとしていたのでしょうか。魔人に何かをされたのは覚えているのですがそれ以降の記憶がない。一緒にいたユウリさんがいません。いえ今そんなことよりも目の前の少女達を倒さなければ)



 レイスが街に向かうと門の前に人影が見える。


 (あの人達は誰でしょうか?)


 疑問を浮かべていると無数の砲撃が彼が襲う。ユウリから連絡を受けた街にいたグリスと結花が迎撃の準備をしていたのだ。


「撃て」


 結花の合図と共に背後に並んでいた軍人が砲撃を始める。放たれた弾はレイスの体をすり抜ける。


「実弾ではダメージが与えられないのか。なら魔法で攻める」


 実弾が効かないと判断したグリスは魔法での攻撃を指示する。


雷柱サンダーピラー

岩弾ロックバレット

氷槍アイスランス

龍火ドラゴニックファイヤー


 放たれた魔法はレイスの体に当たら煙が巻き起こる。


「効いたか?」


 煙が晴れると体を膝を地面に付けるレイスの姿があった。


「魔法が効いた?!」


 結花とグリスは彼の姿をみて驚く。しかしそれはレイスも同じだった。



 この体の私がダメージを受けるとは。どういうことです?先程食らった攻撃ですらダメージを受けなかったのに。


 先程と今回で違った事…まさか


 グリス、結花、レイスはどの攻撃が有効なのかを理解する。


「あいつに有効な攻撃分かったかもしれない」


「グリスも気づいたみたいね」


電撃火走りエレクトロニックファイヤー


 結花が地面に手を叩きつけると、電流が流れる。


 レイスは向かってくる電流を炎道フレイムロードで相殺する。


「電撃を炎で打ち消した。やっぱり電気の攻撃は効くんだ」


 弱点を見つけた2人は仲間に共有する。有効な攻撃が分かった彼らは雷や電気を用いた攻撃を始める。

 レイスは攻撃を防ごうと魔法をぶつけるが全ては対処できずにダメージを負う。


「効いてる。これなら」


 攻撃が効いている様子を見て緊張感が少し緩んだ時、突然後ろにいた軍人達にと共に後方に吹き飛ばされる。レイスの何らかの攻撃を受けたのだ。


 (誰だか分かりませんが私の邪魔をしないでください。少し時間を食ってしまいました。急いで街に向かわないと)


 レイスが街に入ろうとすると後方から狙撃される。マリーが森からライフルで狙撃したのだ。



「え、もしかして命中した?」


「命中しましたけどダメージはなさそうですね」


「標的がデカイとはいえ、それなりに距離あるのによく当てるよな」


「ライフルは得意なので」

 

 (先程の人達といい、彼女達といい私の邪魔をしないでください)


 レイスは怒りの声を上げながら体中から棘のような物を飛ばす。棘は森と街両方に飛んでいき、森の木や街を破壊する。


 この上にいたマリーは衝撃により下に落ちる。


「大丈夫か」


「かすり傷ができただけです。それよりも街の壁が破壊されて迎撃に出ていたグリス達も倒れてしまいました」


「まずいな、マリー可能な限りあいつの逸らしてくれ。俺とユウリ、ケネスで街に向かう」


「わかりました。私も後から行きます」



 一方その頃街のテントでは、オペラ、ベール、テオス、オーリーが生徒達を対応していた。


「さっきの大きな音何?外で何かあったの?」


「落ち着いて、さっき先生が外に行ったでしょ?何もなければもうすぐ戻ってくると思うからそれまでここで待とう?」


「あれ、リンちゃんは?」


「さっき眠いから寝ると言って奥のスペースに行きましたけどいないんですか?」


「テントの中探したけどいなかった。どこに行ったんだろ?」


「まさかとは思うけどさっきの音で起きてそのまま音の原因の所に行ったんじゃ」


「原因って壊れた建物の方ですか?」


「多分門の方に行ったかもしれない。だって今すごい速さで走って行ったのが見えた」


「いやまさかね」


 4人が苦笑いしていると何かがテントの横を通る。外に出て確認するとリンだった。


「あいたた」


「リンちゃん?!だ、大丈夫?」


「大丈夫、大丈夫。さっきあのデカイのに突っ込んだんだけど飛ばされちゃって」


「デカイやつ?」


「ほら後ろ」


 後ろを振り返り門の方を見ると巨大な怪物がいた。


「え、何あれ」


「さぁ?わかんない。けど大きな音の原因はデカイあいつで間違いないと思う」


「もしかして戦おうとしたの?」


「うん」


 リンは当たり前かのような顔をしながら返事をする。


「うんじゃないよ!早く逃げないと」


「逃げても追ってくると思うよ、それにほら攻撃くるよ」


 数本の巨大な手がリン達に向けて伸びてくる。テオスとオーリーが岩石壁ロックウォール唱え手を防ぐ。


「手が伸びてきたからびっくりしたね」


「皆さん早くここから離れましょう。リンさんも早く…っていない?!」


 周囲を探していると遠くに飛ばされる彼女の姿が目に入る。


「今の数秒の内に何があったんです?まぁ何となく予想はつきますが」


「えっとテオスさんとオーリーさんが攻撃を防ぎ私達が離れようとした時にリンさんが巨大なアレに突っ込んでそのまま飛ばされました」


「本当に何やってるの」


 ベールはため息をつきながら頭を抑える。


「リンちゃんは後で探すとして、とりあえず逃げよう」


「ひとまず学園を目指しましょう。あそこなら他の場所よりは安全なはずです。テントの中にいる人達にも伝えてください」


 4人はテントの中にいた人達に話し、学園を目指して移動する。


 (今逃げているのは学園の生徒でしょうか?よく見えません。お願いです逃げないでください。私はただ守りたいだけなんです

 どうして止まってくれないんですか。この姿のせいですか?)


 レイスが生徒達を追おうとするが射撃をそちらに気が逸れる。

 街の門にはユウリ、斑鳩、ケネスの3人が立っていた。


「よし追いついた。街への被害はそこまで出ていな」


「グリスと結花達のお陰だな」


「正門で倒れていた皆さんも命の危険はなさそうです」


「それにしてもここに来る直前にリンが飛ばされたのを見たんだけど見間違いか?」


「子供が巨大な怪物と戦う訳ないだろ、それよりも子供達を守らないと」



海水の檻ウォーターケージ


 魔法を唱えると水が巨大な檻を作り閉じ込める。


 (嫌かもしれませんがその中で静かにしていてください)


大地砕破ガイアクラッシュ


 ユウリ達の足元から巨大な岩石が打ち上がり、空中に飛ばされる。


電光乱反射ライジングミラーレイ


 無数の鏡が現れ、そこに電撃が放たれる。それは鏡を反射しながら襲う。

 防御魔法を使うが死角から襲いくる。


「これ防御魔法じゃ防げない。ユウリお前のよく分からん攻撃でどうにかできないか」


「俺もそうしたいけど、速すぎて捉えらない。鏡を破壊出来れば何とかできるんだけど電光のせいでできない」


「鏡を破壊すればいいんですね?」


 ケネスは1つの鏡に向かって発砲する。銃弾は通常よりも早く、そして回転しながら鏡に当たりそのまま跳弾して全ての鏡を破壊した。


「鏡は全て破壊しました、お願いします」


氷槍アイスランス

光り輝く剣シャイニングソード


 レイスは右手を前方に出し大きな盾に変形させ防ぎ、左手をハンマーに変形させ振り下ろす。

 地面に叩きとけられた彼らに追い打ちをしようとしもう一度左手を振り下ろすが誰かに止められる。


「お待たせしました」


「思ったより来るのが早かったな」


「大佐達が危ないと思って急いで来ました。んんん、とりゃ」


 マリーはレイスの拳を振り払う。


「えぇまじか」


「なんというか流石マリーだな」


 (力でダメなら魔法でどうです!)


火炎竜巻フレイムトルネード

水撃破ウォーターインパクト

風刃ウインドカッター

土弾ランドバレット


 拳を振り払われたレイスは力技では無理だと思い魔法を放つ。


「相殺するための魔法を撃つ魔力足りねぇ」


「すまないが俺も魔力が足りない」


「自分もです」


氷槍アイスランス

聖光の一閃ホーリーレイン

雷の矢ライトニングアロー

岩弾ロックバレット


 魔法が彼らに迫った時、片手に子供を持った1人の女性が現れ魔法を放つ。


「グリシャ総帥来たんですか」


「うん、武器が見つかったから来た」


 彼らの目線は彼女の手に向けられる。


「あのその子供は?」


「ん、この子?さっき武器探してる時に軍入ってきてそのまま連れてきた」


「リンじゃねぇか。なんで軍の施設に?」


「あのデカイ奴に突っ込んだら吹き飛ばされちゃった」


「え、なんで戦おうとした」


「寝てる時にうるさかったから静かにしようと思って」


「あの子お前と一緒の思考してるな。同居してた時に思考が移ったか?」


「んな訳ないだろ。ないよな?」


「俺に聞くなよ」


 グリシャがパンっと手を叩く。


「話はここまで。あの大きいのを何とかするよ」


「それなんですけど実はレイスさんなんです。信じられかもしれないですけど」


「レイス?あれが?なんであんな姿に」


「それは分からないです」


「まぁ本人に聞くのが1番早いか」


 彼女は背中から持ち手が銃のグリップの形をしていて剣の刀身の中心が銃口のようになっている剣を取り出す。


「あの戦う前に離してください。服が伸びます」


「ごめんごめん。今離すね」


 彼女はリンを地面に近づけそっと手を離す。


「そうだ」


 何か思いついたのか拳で、もう一方の手のひらを叩く。


「リンちゃんだっけ?お願いがあるんだけどいい?」


「なんですか」


「一緒に戦ってくれる?」


「待ってください。こんな子供を戦わせるなんて危険です」


「ケネス少佐の意見に一理ある。だけど今まともに戦えるのは私とこの子しかいないの。貴方達3人は体力も魔力もないんでしょ。それなら例え子供でも戦えるなら手を借りたい」


「総帥、いくら貴方がいるといえど子供があんな巨大な敵と戦うなんて無茶です」


「ごちゃごちゃうるさいわね。あたしがやるって言ったらやるの。それにこの子もやる気満々みたいだよ」


 ケネスが視線をリンに向けるとやる気満々の顔をして銃を持っていた。


「リンちゃん、アレが魔物より強くて危険な事は分かってるよね?もしかしたら死ぬ可能性もあるんだよ?それでも戦うの?」


「戦う。ここに連れて来られる途中に友達が捕まってるの見たから助けないといけないしそれに早く帰って寝たい」


 ケネスは自分の持っていた銃をリンに渡す。


「使っていいの?」


「銃一丁じゃ厳しいかもしれないから貸しておくね。ちゃんと返してね。それと壊さないでね」


「気をつけます。総帥さん」


「準備が出来た?じゃあ行くよ」

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