第17話 スライムの少女
5月の下旬のある日の夜中に1組のカップルが暗い街を歩いていた。
「ねぇあそこのカフェ新しいメニューがでたみたいなの。今度2人でいってみない?」
「おっいいね。行こう行こう」
「グスン…グスン…」
するとどこからか子供の泣き声のような声が聞こえる。
「なにこの声…」
「子供の泣き声?一体どこからだ」
辺りを見回すがそれらしい人影は見当たらない。
「なんか気味が悪いな」
「ねぇなんか怖いし離れよう」
「そうするか」
カップルの背後を何かが通る。
「ねぇ今何か通らなかった?」
「ちょ、怖いこと言うなよ」
「絶対に何か通ったって。早くここから離れようよ」
「そこのステキなお2人さんに聞きたいことがあるの」
先程までいなかったフードを被った人物が二人に声をかける。
カップルは驚きつつも声をかける。
「君こんなよる夜遅くにどうしたんだい?親に虐待でもされてるのかい?」
男性が質問すると謎の人物は被っていたフードをとり自身の姿をみせる。
「ひっ」
2人はフードをとった人物の姿をみて逃げ出す。
「あっまた…」
悲しそうに一言呟くとそのまま暗闇に消えた。
「なんか最近夜に不審者が出るらしいから夜に出かけるなよ。まぁ夜に出かけるやつはいないだろうが一応の注意喚起だ」
グリスが帰りのHRでクラスの生徒たちに伝える。
「私たちが入学してからこういうの多いよね。行方不明の件もそうだけどこの前の講座の時なんかも不審者が学園にきたし」
「軍の人達も対処しきれてなのかな?」
リンたち新入生は4月の初旬に入学し早くも2ヶ月が経過した。同時に帝国内の事件は2ヶ月間も続いているということになる。
「隣のクラスのカールとニールが行方不明らしいよ」
「B組の生徒だよね。確か入学式当日に問題起こした」
「うん。その2人が街に魔物が現れた日に行方不明になったらしいの。噂だと魔物に殺されたんじゃないかって」
「そういえばあの日なんで魔物が現れたんだろ?街は軍人さんが巡回してるから異変があればすぐに気づくはずだよね」
「うーん。なんでだろうね?」
「おーいカリンとネルさっさと帰れーじゃないと俺が帰れない」
「はーい。グリス先生またねー」
「先生じゃあねー」
「気をつけろよー」
手を振る2人に手を振り返しす。
グリスは2人の会話を聞きあの日パチ屋の前で遭遇したサキュバスのことを思い出す。
「あのサキュバスあの時俺に何か言ってたけど何て言ってたんだ?」
「グリス先生今いいですか?」
教室の扉の先から結花が声をかける。
「大丈夫だけど俺に用事か?」
「用があるのはあたしじゃなくて軍の方です。あなたに聞きたいことがあるそうです」
「めんどくさっ、俺は早く帰って休みたい」
「つべこべ言わずさっさと行け!」
グリスは結花に引きづられながら客室前にきた。
「着いたよ」
「着いたよじゃねぇよ。尻が痛てぇわ」
「おい」
軽い喧嘩をする2人に1人の男が声をかける。
「あ?誰だおまe……。お前ユウリか?」
「他の誰に見えんだよ。俺以外に仕事中に居眠りする奴がいたか?」
「いないな」
「いや確認の仕方もっといいのありませんでした?」
結花は心の声をつい漏らす。
「ないだろ。グリスもそう思うよな?」
「同意見」
「えぇ……」
「おっと忘れるところだった。グリスお前に聞きたいことがあるんだ」
「そういやそれで呼ばれたんだっけ。結花この部屋の中に入ればいいのか?」
「そうだよ。さっ早く入って」
部屋に入った3人はゆっくりと椅子に座る。
「それで何について聞きたいんだ」
「魔物が現れた日のことについて聞きたい」
「わかった。その日は…」
数分後
「グリス貴重な情報ありがとう」
「別に気にするな。こんな情報でも役に立つなら喜んで話すぜ」
「そんじゃあ俺は軍に戻るわ」
「またなー」
「彼学生の頃とあまり変わってないね」
「俺達もだけどな」
日が暮れ始めオレンジ色の光が照らす道を走るユウリ。軍の施設の少し前にある川の近くにいたフードを被った人がいた。ユウリは気に止めず通り過ぎようとしたがその人物は彼に声をかける。
「あの…話…いいですか?」
「別にいいけど可能なら早くしてくれ。このままだと今日も残業するはめになる。あと話をする時は相手に自分の顔をみせた方がいいと思うぞ」
「……」
軽く頷きフードをとりユウリに顔をみせる。人間だと思っていたその人物は人間ではなくスライムの少女だった。
「あなたは逃げないんですね」
「仕事の関係上魔物と沢山触れ合ってるからな」
「あたしの話し聞いてくれますか?」
「いいけどその前に俺の質問に答えてくれ。最近この辺りでお化けをみたと報告されてるんだがお前のことか?」
「あたしのことだと思います。迷惑かけてごめんなさい」
「俺は別に気にしてないけどな。それでお前の話しって?」
「信じられないかもですけど聞いてください。実はあたし元々人間だったんです」
「バカ言うな。元人間の魔物なんて聞いたことねぇぞ」
「そうでしょうね。だってあたしは人為的に生み出されんたんですから」
「おい待て。今人為的に生み出された…って言ったか?」
彼女の言葉にユウリは耳を疑う。彼女は静かに「はい」と答える。
「一体誰が」
「名前は分からないですが特徴は覚えています。白衣を羽織って体調が凄く悪そうな男の人でした」
特徴を聞いたユウリの頭には1人の人物が思い浮かぶ。
「…レイスか」
「お願いします。どうかあの人を止めてください」
「わかった。元々あいつには用があったんだ。お前もきてくれ」
「わかりました」
「おまえ名前は?俺はユウリ」
「あたしはロゼリアです」
「そんじゃ早速いくぞ。っとその前に連絡だけ入れとくか」
ポケットから通信機のようなものを取り出し誰かと連絡をとる。
「…ザ……ザ……」
「なんか調子が悪いな」
「こち…ら…帝国……のオペレーターの…です」
「オペレーターが出てくるとは予想外だ。出掛けていたユウリだけどもうすぐ軍に戻る」
「ユ……大佐…すぐに…もど…てください。レイスさんが…」
「すぐにいく」
「ロゼリア悪いが急いでいくぞ」
ロゼリアをお姫様抱っこしユウリは軍の重い扉をこじ開ける。
扉の先には無数の魔物とそれと戦う仲間たちの姿があった。
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