第15話 レイスとバイク/ケネスの調査報告

 ユウリは修理の終わったバイクを受け取るためにレイスの研究室に赴いていた。


「おーいバイク受け取りにきたぞ」


「少し待っててください」


 研究室の奥から顔色が優れないレイスがバイクをおしながら出てきた。


「なんかお前顔色悪くね?オレみたいにちゃんと寝ないと体に悪いぞ」


「むしろ貴方は寝すぎですよ。この前なんて一日中寝てたじゃないですか」


「4時間ぐらいは起きてたぞ」


「逆に4時間しか起きてなかったんですね。まぁそんなことよりバイクお返しします。思った以上に損傷が激しくて大変でしたが何とか修理できたよ」


「ぶっ壊した奴が奴だからなぁ」


「まぁバイクもそうですが魔物の死体も持ってくるとは思ってませんでした。正直びっくりしましたよ」


 魔物の死体を持って歩き回り更に死体をレイスに渡したのか?怖っ


「その死体はどうしたんだ」


「研究のために預かりました」


 レイスはサラッと返答した。


「魔物とは死体を受け取るお前も持ち運んだマリーもおかしい」


「あなた失礼ですね。用が済んだんならさっさと出てってください」


 レイスは不機嫌になりユウリを研究室の外にだした。


「バイク修理してくれてありがとうなー」


 研究室の外から感謝を述べた。


 レイスは奥の部屋に戻りアルウネラの死体を見つめる。


「全く失礼な方ですよ。けどマリーさんがこれ魔物の死体を持ってきてくれたのは助かりました。おかげで人類を進化させる手段が見つかったのですから」


 レイスは不敵な笑みを浮かべながら新しく手にいれた実験材料を見つめる。その目線の先には入学式の日にテオスをイジメていた2人の姿があった。


「マリー中佐ー」


 1人の男が大きな声を出しながら廊下を走る。


 男の前方から真剣が飛んでくる。後ろから壁にヒビが入る音がする。


「ひっ」


「ケネス少佐うるさいですよ」


 ケネスの前方から腰に鞘を携えたマリーが歩いてくる。


「うるさいという理由で真剣を投げてこないでください」


「それはごめんなさいね。そんなことより調査は終わった?」


「言われた通り調べてきましたよ。そのリンちゃんって子について」


 ケネスはマリーに2枚の紙を渡す。


「ケネス少佐、本当にこれで全てか?明らかに紙の数が少ないんだけど」


「本当に調べましたよ。その結果がそれです」


 マリーはケネスにリンの調査をお願いしていた。そして調査結果をまかせ、ケネスから渡された情報の少なさにおどろく。


「親や生まれた場所、本名すら分からないなんて困ったわね」


「その子が元々いた場所は魔物に襲撃されて誰もいないんですよね?」


「えぇそれで軍で少し面倒みた後に学園に入学させたの」


「まだ幼いのに魔物のせいで両親や帰る場所を失うなんて可哀想ですね」


「そんな人たちを出さないためにわたしたち軍が戦ってるの」


「質問なんですけどなんでリンちゃんに調査したんです?正直必要がないと思うんですけど」


「あたしもレイスさんに頼まれただけだからわからないわ」


「レイスさんって最近ずっと研究室に籠ってますよね。一体何について研究してるんでしょうか?」


 マリーがリンを軍に連れてきた日以来レイスはアルウネラの死体と一緒に研究室に籠っていた。


「わたしレイスさんとあまり話したことがないから分からないわ。ユウリ大佐や斑鳩大佐ならなにか知ってるかも?あの2人はレイスさんと仲がいいから」


「そんじゃあ今度俺2人に聞いてみますよ」


「ケネス少佐ありがとう。いけないそろそろ仕事に戻らなきゃ」


「俺も仕事に戻ります。また何かあったらよろしくお願いしますね。あっマリー中佐ー刀忘れてますよー」


 ケネスはマリーに真剣を忘れてることを伝える。マリーは大きな声をだすケネスに対して鞘を投げ、ケネスはその場に倒れるのだった。

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