第10話 1年A組

 教室に入ると十数人の生徒がいた。

 テオスの怪我をみた黄色髪の女子生徒が彼に近寄る。


「貴方大丈夫?なにかあったの?」


「教室に向かう途中でトラブルがあってそれで怪我したみたい」


「先生には報告したの?」


「うん。先生も入学初日から何やってんだかと呆れたよ」


「一旦彼を保健室に連れていこう。私、場所を知ってるから連れていくね。先生にあたしと彼のことを伝えといて」


 彼女はテオスを連れていった。


「あれ君もしかして試験の途中で帰された子?」


 真面目そうな顔をしている男子がリンに声をかける。


「そうだけど」


「まさかあなたと同じクラスになるなんて」


 返事をすると彼は嬉しそうな表情を浮かべた。


「ボクはオーリーといいます。あの時同じグループで試験を受けていた者です」


「同じグループということはもしかして…」


「はい。あなたが人形を粉々にした瞬間を見ました」


「やっぱり」


 ボクは頭を抱えながらうずくまる。


「マジカタいしで出来た鎧ごと粉々にするなんてホントにすごいですよ」


 マジカタ石

 ふざけた名前をしているがとてつもなく頑丈な石。どのくらい頑丈かというと戦車の砲弾やロケランでようやく傷が付くほど程。こんなに頑丈な石だが魔法にはあまり強くなく火球(ファイヤーボール)や水球(アクアボール)を数発当てるだけで削れる。


「あの時は拳に魔力をためて放ったのですか?そのようにはみえなかったのですが」


「魔力をためる?そんなことしてないよ。試験官に急かされて焦っちゃった勢いで殴ったから」


「「「「「えーー」」」」」


 オーリーだけでなく他の生徒も驚いたように声をだす。


「魔力なしの打撃で粉砕したなんて…。どんなパワーしてるのですか」


「そんなこと聞かれてもできちゃったからねぇ」


 ガラガラ


 オーリーと話をしていると教室の扉が開いた。髪の毛がボサボサで目の下にクマがある男性が入ってきた。


「はーいお前ら席につけー」


 やるのない気声で指示を出す。生徒は各々の席に座る。


「まずは初めまして。ここの担任になったグリスだ。趣味はギャンブルだ。よろしく」


 趣味がギャンブルって教師としていいのな


「授業の前に順番に自己紹介してくれ。名前と趣味もしくは好きなことやものを言ってくれ。まずはお前から」


 グリスはオーリーをみる。


「オーリー・セタールです。趣味は読書です。よろしくお願いします」


「よろしくー。次の人ー」


「テオス・オーパーです。好きな食べ物はジャガイモを使った料理です。よろしくお願いします」


「よろしくー。次ー」


「ベールトゥエラ=フローラル。名前が長いのでベールと呼んでください。皆さんよろしくお願いします」


 1人目、2人目と自己紹介していく。


「最後のやつーよろしくー」


 ついにボクの番だ。


「リンです。趣味?は部屋の中でダラダラすることです。よろしくお願いします」


「ずいぶんと変わった趣味を持ってるなー。とりあえず自己紹介お疲れ。次は授業について説明するぞ。この学園では魔法、化学、武道、家庭、歴史の四つを学ぶ。それぞれどんなことを習うかはこれを読んでくれ」


 グリスは生徒に紙を配る。


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各授業の説明


 算数

 数字の簡単な計算から難しい計算まで学ぶ学科。将来的に役に立つかというと微妙ということで不人気


 魔法

 攻撃魔法、防御魔法、召喚魔法について学ぶ学科


 化学

 化学兵器の使い方・対処法について学ぶ学科。化学現象も学ぶ


 武道

 化学兵器以外の武器の取扱、体術などを学ぶ学科


 家庭

 料理、裁縫について学ぶ学科。ほとんど男子生徒の苦手な科目代表


 歴史

 帝国や世界の歴史を学ぶ学科

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「各科目は紙に書いてある通りだ。面倒だからあまり詳しくは書いてないが、やればわかる」


 この人もあの人ユウリ大佐と同じで適当な人だ。


「何か質問はあるか?ないなら今日は終わり!それぞれに寮の部屋の割り振りの紙を渡すからよく確認してから行ってくれ。寮で起きた問題は教師ではなく寮の管理者に報告してくれ。今日はお疲れさん」


 グリスは教室からでた。

 その後リンやクラスメイトも教室から出て寮に向かっていった。

 


 リンは1年生の女子寮の自分の部屋である110号室に入る。


「これが寮の部屋」


 部屋の中にはベットやクローゼット、エアコン、テレビなどが置いてあった。


「今日はもう疲れたしお風呂に入って寝よう」


 リンは早めのお風呂を終えベッドに入り眠りについた。



 誰かの気配を感じて身を覚ます。

 ベッドのすぐ横に視線をやるとベールがたっていた。

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