三人の魔女には弟子がいる

午後五時半のご飯

第1話

 この物語は暗い森の奥の奥から始まる。始めに、魔女は三人いた。


 一人目はエリーザ。若葉のような緑の髪が肩までの緩いウェーブを描く、すらりと背の高い女性で、全身ツギハギの肌を持つ。藁よりも軽い頭の中に、考える蟲を飼っている。

 二人目はジャンヌ。黒髪に碧眼を持つ彼女は、普段は四本腕の大鎧の中にいる。背中から首にかけて蒼く燃え続ける火傷痕を負い、美しい顔をいつも不機嫌そうにしかめている。

 三人目はレオナルド。鬣のように豊かな白髪を腰のあたりまで伸ばし、銀色に濁った眼は、白いレースの包帯で隠している。透けた腹の内側に、小さな星屑を住まわせている。


 魔女の異形は、ある願いを叶える為、魔神オズワルドと契約した時の代償だった。

 エリーザは聡明な頭脳を。

 ジャンヌは心臓と生き血を。

 レオナルドは五臓六腑の殆どを、畏敬すべき魔神に捧げた。

 彼女達は血縁者でもなければ、もともと知り合いですらなかった。ただ同じ神を信仰し、同じ日にサバトに参加しただけだ。そこで魔女狩りに捕まって、狭苦しい檻に閉じ込められ、口にするのも憚られるような酷い拷問を受けた。支えとなったのは、世間では異教とされる信仰と、同じ檻に入れられた同志の少女達だけだった。

 霧に覆われた処刑前日の夜、三人で手を取り合って檻の外へ逃げ出すことが出来たのは、彼女たちの信仰する神の思し召しだったのか、それともただの僥倖だったのか。異形の魔女達は人間に追われ、生き延びる為に森の奥へと辿り着いた。今は湖のほとりに屋敷を構えて、誰にも知られず、息を潜めて暮らしている。

 



 エリーザという魔女は、毎日毎日同じ時間に同じ行動を取る、機械仕掛けのような女だった。

 彼女は魔神との契約で脳神経の大部分を失っており、代わりに与えられた【脳蟲】が肉体への司令塔を担っていた。普段の生活をルーティーン化し、予め定められた命令を時間通りに実行するだけ。そこにエリーザの意思や感情は関与しない。何か異常事態が起こった時、彼女はコンコンと自身の頭をノックして、脳に巣食う蟲に指示を仰ぐのだった。

 その日も昨日と同じように、朝の5時きっかりにエリーザは目が覚めた。夜型のジャンヌと寝坊助のレオナルドはまだ眠っている。エリーザは信仰する神への祈りを捧げた後、顔を洗って、お手製のストライプシャツとエプロンに着替え、軍手と長靴を身に付けた。

 早朝の畑仕事はエリーザの仕事だ。魔女の屋敷では庭に畑を作っており、彼女たちはそこで野菜や薬草を育て、自給自足していた。植物の成長を促す魔法は、緻密な魔力操作と時間と集中力を必要とする。それは細かい手作業が全く苦にならないエリーザにとって、最も得意な分野だった。

 さて、エリーザの畑には大きく実ったカボチャがごろごろ転がっている。今が収穫時だ。魔女たちは皆、じっくり煮込んだカボチャとセロリとベーコンのスープが大好きだった。パンプキンパイやプリンにしても良い。

 食いしん坊な脳蟲の指示通りに、エリーザが畑に入ったのは6時丁度だったが、その直後に彼女の手が止まったのは予定外だった。

 侵入者が居たのだ。

 畑で一番大きなカボチャの上に、魔神オズワルドが腰掛けていた。


「やぁ、おれの忠実なる使徒、エリーザ」


 エリーザは驚いたような表情で、信仰する神の御姿を見つめる。咄嗟に頭をノックする。彼女の脳蟲が大慌てで司令を下すや否や、エプロン姿の魔女は膝が汚れるのも構わず跪いた。

 オズワルドは、顔を持たない異形の神だった。

 より正確に言うと、彼はかつて赤いマネキンのような美しい顔を持っていたが、今はそこだけスプーンでくり抜いたみたいに、まぁるく失っていた。断面は光を通さない深淵の色で、目も鼻も口も、何も無い。その代わり、頭部の上空に後光のような幾重もの黒い輪っかを浮かばせており、その邪悪な光は相手の心を見抜くと伝えられていた。


「…ああ、人間に捕らえられた時の傷は癒えたかな」

「はい、主様」

「あの時はおれの助け無しに、よくぞ試練を耐え抜いたね。流石におれの教えを乞うただけのことはある、聡明な魔女だ」

「有り難いお言葉、感謝致します。全ては主様のお陰です」


 実のところ、この残酷な魔神は、エリーザ達が魔女狩り軍に囚われていたことなど、対面して心を覗くまですっかり忘れていた。彼の力をもってすれば、人間達から三人の使徒を救い出すことなど、造作もないことだっただろう。しかしあの時、オズワルドはそうしなかった。

 何故か。それは面倒くさかったからである。

 彼は生きた人間など、殴れば音の出る玩具ぐらいにしか認識していなかったし、死んだ人間は音の出ない玩具だった。契約して魔女に堕落させた乙女に対しても、可愛い野良猫を餌で釣って気紛れにいたぶりたい、程度の愛情しか持ち合わせていなかったのだ。


「今日は頼みがあって来たんだ」

「はい、何なりと」

「お前は物分りが良くて助かる」


 魔神は黒いマントを翻して、そこからぼとぼとと濡れた物体を畑に落とした。

 エリーザは目を見開く。


「それは…」

「おれの仔だよ」


 エリーザの畑を血で汚したそれは、赤子のバラバラ死体だった。いや、正確に言えばそれは何人もの人間のパーツ、魔神と契約した人間から摘出した臓器や血肉の残骸だったのだ。


「お前達の塊と、おれの魂をかけ合わせたら、全く新しい人類が出来るかと思った。面白い試みだろう? しかし生命構築術式が狂ったのか、不純物が混じったのか、そもそも人間の器ではおれの魂濃度に耐えきれないのか…? 何もしてないのに、完成直前で壊れてしまったんだ…」

「おいたわしい…」


 命を悼む振りをする魔神と、心から冥福をお祈りする魔女。

 父(仮)と母(仮)の想いを一身に受け、爛れた肉塊はぴくぴくと痙攣してみせた。


「あら、まだ生きているのですか?」

「辛うじてね。我が仔ながら中々生き意地汚い」


 オズワルドはこの、汚らしくて死臭に満ちた呪われた我が仔の始末に悩んでいた。思い付いて作ってみたはいいものの、時折痙攣するだけで何の役にも立たない。いっそ燃やしてしまえばいいのだが、せっかく人間たちと契約して獲得した素材でできた「失敗作」だ。それがまだ生きているのなら、最後まで観察し記録を付けるのが研究者の役目だろう。

 だがしかしこの魔神、致命的なまでの飽き性かつ面倒臭がりなので、失敗作にそれほどの時間と手間暇をかけていられないのだ。


「それならば、エリーザ達が引き取ります」


 脳蟲の司令を受け、エリーザはそう答えた。跪いて、泥塗れの肉塊を拾い集める。


「主様の仔にしてエリーザ達の子。肉の繋がりは血の繋がりです。うちで育てましょう」

「そう言ってくれると思った」


 オズワルドは優しく微笑んで(少なくともエリーザにはそう感じ取れた)、畑のカボチャの上に落ちた仔の心臓を拾い上げた。「ジャンヌの捧げた心臓だわ」とエリーザは脳の隅っこで気付いたが、魔神の呪いを受けたその臓器は、かつてジャンヌの体内にあった時よりずっと小さく、硬い石炭のように萎れてしまっていた。


「では、さらばだ。案山子の下の仔、カボチャ畑の泥被り。お前に名無しのドゥの名を授ける」


 魔神の言葉でドゥとは「存在しない名」という意味だ。それを名付けるという事はつまり、「お前に付ける名前は無い」という、人の親としても創造主としても最悪の侮辱行為だった。

 しかしそれでも、名付けの儀式には違いない。魔神に「無名」を賜った仔の心臓は、どくりと薄紫色に燃え上がり、父から母の腕へと投げ渡された。



 肉塊、改め「名無しのドゥ」は、三人の魔女の屋敷で暮らすようになった。

 ドゥの血肉は、魔神に薄紫色の炎を与えられた瞬間から、つやつや透明な皮膜に覆われていた。

 お陰でバラバラの肉塊は一箇所にまとまったが、ちょっとした衝撃で膜が破れると、中身は飛び出してしまう。つまり、家中赤黒い血で汚れ、肉は腐り落ち、形容し難い悪臭に見舞われるのだ。

 綺麗好きで鼻のきくレオナルドは毎度発狂しかけたが、大工仕事が得意なジャンヌが手押し車を作ってやったので、その問題は解決した。手押し車にはエリーザが鴉達から集めた柔らかな羽根とハーブを敷き詰めており、柔らかなベッドを手に入れた名無しの仔は、その皮膜が破れることは滅多に無くなったのだ。


「坊やは血肉でできたスライムみたいで、可愛いのう」


 匂いの問題が解決すると、元来心優しく人懐っこい魔女であるレオナルドは、名無しの仔を可愛がるようになった。

 控えめに言っても蠢く肉塊、死体人形の袋詰め、揺籃を覗く度に形状が変わっているグロテスクな赤ん坊は、誰がどう見ても「可愛い」の形容詞からは掛け離れた怪物だった。

 しかしレオナルドには、魔女狩り軍の拷問を受け、無理やり両眼を潰された過去がある。盲目の魔女にとって、名無しの仔の美醜はあまり重要ではなかった。ただお喋りした時に、皮膜に包まれた小ちゃな手を一生懸命に伸ばしてくれる健気さと可愛らしさが、レオナルドの腹の底に残った僅かな母性本能を擽るのだった。


「良いかね、名無しの坊や。もしお前さんが森で道に迷った時、南南東の空に愚者の星が出ていたなら、まず黒い犬を探すといい。そいつに付いていけば、必ずや家に帰れる」


「濃い霧が出てきたのう。こういう日は変身術の訓練をするに限る。…ん? やり方を知らんのかね? 構わん、儂が一から教えてやろう」


「儂の腹の星屑が気になるかね? これは臓物を捧げた代わりに、魔神殿から賜ったものよ。儂は盲の魔女だが、星の光は感じ取れる。こやつらを駆使すれば、お前さんの輪郭もぼんやりと視えるぞ」


 レオナルドは名無しの仔に対して、歳の近い姉のように楽しく接した。

 彼女は仔に、様々な事を教えた。得意の星占いから、狩りの仕方、変身術に護身術。特に変身術の訓練で、彼女が真っ白なライオンに変身して遊ぶのが、名無しの仔のお気に入りだった。

 名無しのドゥは、魔女からいくつもの魔法の呪文を教わったが、あまり意味はなかった。何故なら、それを唱える口と声帯が繋がっておらず、ぶっ壊れているからだ。故に肉塊のどこかからヒューヒューと、死にかけの木枯らしみたいな微かな音が出るだけで、当然魔法は使えない。仔はそれを歯痒く思っていたが、レオナルドは別に気にしていなかった。


「あぁ、クソ。また手押し車の取っ手が折れてるじゃん。レオの奴、いつになったら手加減ってのを覚えるわけ?」


 ジャンヌはいつも不機嫌そうな顔をした、口の悪い魔女だった。しかし彼女が心の底から怒る事は少なく、家族の生活と健康を案じる優しさをもっていた。

 彼女は以前まで、手製の煙草を好んで吸うような愛煙家だったが、名無しの仔を育てるようになって以来、きっぱり禁煙していた。


「なぁに? お腹すいたの? 悪いけど、私料理とかそういうの得意じゃないの。エリーザに頼んでよ」


「私は人間だった頃、王宮騎士団で騎士として働いていたの。だから魔法より剣の方が馴染むんだよね。魔女の癖に、って感じ」


「君にも剣を教えてあげたいけど、ムリ。せめて腕がないとね。…私の腕? これは主君より賜った業火の腕。私の体は怪我したら、血の代わりに蒼い炎が生えるんだ。変でしょ」


 ジャンヌは名無しの仔に対して、古くからの友人のように接した。

 腕のちぎれた仔には剣術の代わりに、人間の暮らしや生態、兵役制度や武器装備、戦争とその歴史について教えた。仔の為に、木彫りの人形や可愛いベッド・メリーをこさえてやったのも彼女だ。

 ある日、名無しの仔がレオナルドと一緒に庭で昼寝していた時、森の魔物であるハーピー族が群れで襲いかかってきたことがあった。仔は死を覚悟したが、それを救ったのは、裏庭で薪割りをしていたジャンヌだった。彼女は四本の腕から繰り出される剣技で、魔物達を撃退した。あっという間の出来事だった。

 名無しの仔はそれに感激し、彼女に剣を教わりたいと願ったが、腕のない身では到底叶わない。仔はそれが悔しくてやりきれなかったが、ジャンヌには伝わらなかったようだ。


「おはようございます、名無しのドゥ」


 三人の魔女の中で、エリーザは、最も献身的に仔の世話をした。毎日毎日同じ時間に名無しの仔を起こし、抱き上げて手押し車に乗せ、崩れた口から食事を与えて、排泄の世話をして、血に汚れた皮膜と肉のすきまを洗い、ベッドを整えてから寝かしつけた。眠れない夜には小鳥達と共に子守唄を歌った。


「今日のご飯は、庭で採れた黒カブと白魚豆、山羊の乳で作ったスープです。…口に合う、かしら」


「あら…、手押し車から落ちてしまったのね。大丈夫、泣かないで。大した怪我じゃありませんわ。エリーザが治してみせます」


「ドゥをあやしていると、なんだか不思議な気持ちになりますわ。以前にも、誰かが悪夢をみて泣くのを慰めていたような。あまり覚えていませんが、エリーザもかつては人間でした…もしかして、子供が居たのかしら?」


 常日頃ぼんやりしているエリーザの行動は大抵、頭の中にいる蟲が指示を下すことで実行されるプログラム反応だったが、時折何かを不思議に思ったり、考えたり、過去を思い出そうとしたりする事がある。それは脳の片隅に残った、かつて人間だった頃の聡明なエリーザが現れるようだった。

 何にせよエリーザは、血の繋がった母のように、名無しの仔に接した。

 仔の世話をする為に一日の半分を費やし、残った時間を、彼女は畑仕事や針仕事、薬の調合や料理などにあてていた。ぼんやりしている癖に働き者の彼女は、滅多に休まず動いており、またひけらかす程の知識もない(…少なくとも本人はそう思っている)ので、仔に何かを教えるということは無かった。

 しかし名無しの仔にとっては、それで充分だった。人間の子は親の背を見て育つという。

 文句ひとつ言わず血に汚れたベッドを掃除し、甲斐甲斐しく自分の世話をしてくれるエリーザ。いつか彼女の役に立ちたいと願っては、絶望的に不自由な自分の器に絶望し、打ちひしがれるのだった。しかしエリーザ本人はそんな事、知る由もない。




 さて、名無しのドゥが魔女の屋敷で暮らすようになってから、三年の月日が流れた。

 仔は意外なことに、まだ死んではいなかった。むしろ近頃は、皮膜を突き破らんばかりに手足が伸び、中を満たす血の量もいくらか増えたようだ。相変わらず泣き声のひとつも上げないが、何か言いたげに肉塊を動かして、その音やジェスチャーでコミュニケーションを図ろうとしている。その動きは益々化け物じみていたが、魔女達は仔の成長を素直に喜んだ。


「流石は主様の仔、成長が早いですわ」

「エリーザの飯が美味いからでしょ。にしても…ここまで生命感強まってくると、何とかしてやりたくなるわ」

「何とかって?」

「なんて言うか、せめて話ができるようにしてやりたい、とか? いつまでもガキを赤ん坊扱いするのも変でしょ。器は人間なんだから」

「ふむ、ジャンヌの言うことにも一理ある」


 三人寄れば何とやら。魔女達は名無しの仔を人間の形にする為、知恵を出し合った。


「そもそも主君は、どうやってあのガキを創ったの? 私達の血肉を使った割には、どのパーツも赤ん坊サイズだったじゃん」

「主様は…確か『完成直前で壊れた』と。恐らく、当初の予定では、普通の人間の大きさに膨張することで完成する試みだったのではないかしら? 膨らし粉を入れたパンみたいに…」

「ふぅん、その時与える魔力量の計算が狂って四肢爆散したってわけ? もしくは他人の肉片同士を繋ぎ合わせた結果、拒否反応が生じて結合が緩くなったの?」

「いや、魔神殿の偉大なる計画なぞ、儂らのような魔女に理解できる筈もなかろ。何にせよ、坊やの生命構築術式の解析が必要不可欠なのではないかね?」

「はぁ? それこそ理解できるわけないじゃん。見たことも無い神々の問いかけを、方程式も途中式も無しの暗算で解き明かすようなもん」

「もしくは魔法の上書きなら…? 術式を上から変換させ、ドゥを人間の形に創り直す…いえ、そもそも完成された術式に干渉するなら主様が意図的に残した抜け道を探さなくては。そんな大それた事、エリーザ達にできるかしら」

「ふむ、こういう複雑な呪いは、実際解くとなると存外単純だったりするものだ。どれ、坊やにキスでもしてみようか」

「やめた方がいいんじゃない。今、あのガキの口の裏側に睾丸が貼り付いてるから」

「あら、本当に男の子だったのですね」


 魔女達の会議は何日にも渡って繰り広げられたが、具体的な解決策は得られず、さらに数ヶ月が経過した。エリーザが毎日祈りを捧げても、魔神オズワルドからはなんの応答もなかった。魔女達に預けた仔のことなど、綺麗さっぱり忘れている可能性が高い。




 晴れた日曜日の昼下がり。三人の魔女と仔は、黄金色の草原まで足を運んだ。ジャンヌの手には、サンドイッチと鳥の卵と赤ワインを詰め込んだ大きなバスケットがあったが、彼女たちは決してピクニックに来た訳ではない。


「レイミア、居るかね?」


 草原の真ん中にポツンと立った林檎の樹に、レオナルドが呼びかける。すると、目的の彼女はじわじわと身体の色を変え、姿を現した。


「なぁー、にぃ?」


 間延びした、独特の喋り方。黄金色の大蛇のような鱗付きの下半身と、黒髪の美しい女の上半身。魔蛇レイミアである。

 レイミアは元々ただの長生きな蛇だったが、魔神オズワルドの血を飲んで魔力を手に入れた事で、美しい人間の姿に化けることができる。実は三人の魔女達がかつて人間だった頃に、オズワルドと契約するように誘惑したのは、この小賢しい蛇、レイミアだった。

 頭が良く、長生き故に物知りで、嘘つきで、気が狂っていて、信用ならない。三人の魔女達、特にエリーザは、このレイミアという蛇が苦手だった。


「眠そうだの。急に起こしてすまなんだ。実はひとつ、お前さんに聞きたいことがあって訪ねたんだが」

「なぁ、にぃ、レオニャちゃぁん」

「この子…魔神殿がお創りになった生命だが、年月を重ねればそれとなく成長するものの、全く喋るようにならん。膜の器も不安定で、いつ潰えるとも知れんのだよ。お前さんなら、この子がどうすれば人の子らしく生きられるか、知っていると思ってな」

「ンンンー?」

「もちろん、タダでとは言わんぞ。教えてくれたら、エリーザお手製の卵サンドイッチとゆで卵盛り合わせ、野ねずみの赤ん坊、それに人間の村から取り寄せた高級な赤ワインを…」

「いら、なぁいぃ」

「え?」


 ぐるん、とレイミアは身体をくねらせ、波打つように木から降りて、エリーザの抱っこする仔を覗き込んだ。ギョッとして、エリーザは一歩後退り、仔を守るように抱き締める。それは脳蟲の下した指示より早く、エリーザの体を動かした母性本能だった。


「この子を、正しい“形”に、して、あげるぅ」


 レイミアは、呪われた惨めな姿の赤ん坊が愉快で堪らないみたいに、ぐつぐつと喉の奥で笑った。


「そのか代わり、うぅちの子、に、してあげる、ねぇ」


 おぞましい。三人の魔女はこの蛇に対して、明確な恐怖と敵意を抱いた。彼女達の反応は正しい。レイミアは正しく貪欲な蛇で、卵と赤ん坊を食すのが大好きな悪食家だった。

 すぐさまジャンヌは剣を抜き、音もなく、レイミアの首を切り落とす。


「断るに決まってんじゃん…」


 ジャンヌが不機嫌そうに言うと、落ちた首はゲラゲラと笑いだした。


「あぁん、ひ酷い、わ、ぁぁ」

「気持ち悪…」

「ジャン、あたしのこと、ぉ、きらいぃ? げらげらげらげら!」

「あー、もういいよ。レオ、こんなクソ蛇ホラー女に頼るぐらいなら、一生ガキがこの姿の方がマシ」

「うむ…それはそうかも知れんが、レイミアの口振りからすると、やはり何かしら解決策を知っているのではないかね?」

「知って、るぅ、よぉーーー、げらげら!」

「どうせ得意のハッタリでしょ」


 魔女達は名無しのドゥを連れて、草原を後にした。エリーザはまだどくどくと心臓が嫌な音を立てていて、振り向くのも恐ろしかった。


「き気が、向い、たら、また来てねぇえ、あたしぃ、君達がだぁい、すき、なの!」


 いつの間にか首と身体を繋げ終わったレイミアは、ゾッとするほど美しい笑みで、いつまでもいつまでも、可愛い三人と呪われた赤ん坊を見送っていた。




 それからまた暫くの月日が流れた。

 名無しのドゥは人間で言うところの五、六歳くらいの肉塊へと成長していた。仔は体力もついて、指先を自由に操ることができるようになった。これにより一層、魔女達とのコミュニケーションが円滑化するようになったのだ。

 例えば「YES」なら親指を突き出して他の指を曲げる。「NO」なら親指を隠して手を握る。「ありがとう」なら人差し指と中指でピースサインをして、「ごめんなさい」なら親指と人差し指を合わせて涙の形を作る。「エリーザ」と言いたければ脳みそを指差して、「ジャンヌ」と言いたければ心臓を指差し、「レオナルド」と言いたければ胃袋を指差せば、それで大体伝わった。

 ただ一つ、中指と薬指を曲げて、他の指を伸ばしたジェスチャーだけは、三人の魔女にはまだ解読できていなかった。


 ある夜、名無しの仔はレオナルドの提案で、真冬の天体観測に来ていた。屋敷から滝の方へ登った先には丘があり、そこは絶好の天体観測スポットなのだった。

 レオナルドと仔は度々この丘を訪れて、魔術の訓練をしていた。危ないからと他の二人には止められているが、仔は魔術を扱えるようになりたかった。数年に渡るレオナルドとの秘密の訓練は、今のところ成果は全く出ていない。それでもこの魔女と仔は、訓練を辞めようとは一度も口にしなかった。


「北東の空に三本槍の星が出ている。ふむ、新しい事を始めるには良い兆候だが、同時に未来への強い影響力と不安も予感させるのぅ。坊や。お前さんの運勢を占ってみるかね?」


 仔はすぐさま親指を突き出した。「占ってほしい」という意味だ。

 レオナルドは星占い含め、魔力による占い術を得意としていた。魔女は指先を振ると、どこからとも無く臙脂色のキリムの絨毯とタロットカードを取り出して、そこで占いを始める。絨毯はお香の匂いが染み付いていた。仔は、レオナルドが占う時の神秘的な表情を見るのが特別好きだったので、魔女の機嫌がいい時はよくそれをねだるのだった。

 しかし、楽しい時間は中断を余儀なくされた。途中で、レオナルドが冷たい声を上げたのだ。


「誰かね?」


 空気が凍り付く。

 テントの向こうの茂みの中で、がさりと音がする。森に巣食う魔物だろうか。仔は怯えるように血袋を揺らした。以前ハーピー族の群れに襲われた記憶が甦る。


「邪魔して悪ぃな」


 思ったより年若い、変声前の少年の声がする。茂みから顔を出したのは、狼の耳を持つ焦げ茶色の髪の少年だった。人間で言うと十歳くらいだろうか。目つきは凶悪で、牙は刃のように鋭い。

 伏魔族だ、と仔は思った。実際に見たのは初めてだが、森の奥のさらに奥には、犬のような狼のような姿をした、不死身の魔族の群れが棲むと、以前レオナルドが教えてくれた。きっと腹を空かせて、魔女と仔を食べに来たに違いない。

 しかしレオナルドは臨戦態勢をとるでもなく、不思議そうに頬杖をついたまま、狼の少年に問うた。


「お前さんは…伏魔の者ではないのぅ。魔力はあるが、ただの狼だ。何故人の言葉で話す?」


 森には確かに、魔女や魔物以外の動物も住んでいる。しかし彼らには基本魔力がなく、魔法を使えない。人間の姿に変身することも無いはずだ。

 狼の少年は頷いた。


「先生の言う通り、俺はただの狼だ」

「先生? 儂が?」

「俺はいつもここで、あんた達が魔法の訓練をしているのを聞いてた。それでこんな風に、変身術を覚えた。やりゃ出来るもんだな」

「マジでか。やるの、お前さん」


 仔は戦慄した。

 何年も手取り足取り修行を付けてもらっている自分が一向に魔法を使えないのに、傍で聞いていただけの野良狼があっさり魔法を習得しただなんて。

 凄いヤツだ。友達になりたい。でも同時に、何だろう、何か、こいつに負けたくない。

 箱入り息子ならぬ膜入り息子だった仔の中に、生まれて初めてライバル意識が芽生えた瞬間だった。


「頼みがある。俺に正式に、魔法の修行を付けてくれ」


 狼の少年は深々と頭を下げた。


「ふむ、その理由は?」

「俺は『弱い』」

「故に魔法で強くなりたいと? 愚かな。尻尾を振って伏魔族の群れにでも混ざる気かね?」

「ンな訳ねぇだろ、伏魔族は天敵だ。奴らは群れの仲間を皆殺しにした。俺一人だけ生かしやがったんだ」


 声を絞り出すみたいな恨み言だった。夜空の下で、狼の少年は身の内を語る。

 魔女と名無しの仔は黙ってそれを聞いていた。


「あんたらは知らねぇだろうが、今日日どこの森でも、動物たちの数は激減してる。魔物が多いせいだ。やつらは命を喰らい過ぎてる。知恵があって高度な魔法を使う。どう足掻いたって、俺らみてぇなただの動物が勝てる相手じゃねぇ」


 少年は溜息を吐く。

 魔物。それは、魔神との公平な契約ではなく、その血液や涙や肉などを啄み、腹を満たしたことで、強力な魔力を得た【十二始祖】の末裔である。魔蛇レイミアはその始祖の内の一人だ。彼らは圧倒的な力を得る代わりに、対価を払わず魂の形を歪めてしまった罰として、常に抗いようのない飢餓感に襲われ、末代に至るまでただ呪われ続けている。

 魔物が森を荒らしているのは、恐らくその飢餓感によるものだ。


「別に、それが悪いとは言わねぇよ。俺たちだって、腹が減りゃ兎や鹿を喰うからな。弱肉強食。それがこの世界のルールなら、淘汰される俺たちはただ弱かったってだけだろ。俺の目の前で母親が伏魔族に腹をくり抜かれたのも、弟が頭を踏み潰されたのも。世界がそう定めたんだろ?」


 最後は問いかけるように、少年はまっすぐ魔女を見たが、レオナルドは答えられなかった。

 かつて人間だった頃の記憶が蘇る。隣国の町外れにある教会で、恐ろしく美しい魔蛇の女が笑っていた。聖歌隊の子供達が、笑う蛇に喰い殺された夜のことを、魔女は思い出していた。


「奴らは、笑ってた。笑って俺に言うんだ。恨むなら家族も守れない『弱い自分』を恨め、って」


 少年の独白に、気付けば名無しの仔は泣いていた。滅多に泣かない我慢強い仔だが、家族を殺された狼の少年に、強く感情移入したらしい。こんなに泣いたのは、ジャンヌにハッピーエンドで終わらないお姫様の物語を読み聞かせてもらった時以来だ。

 狼の少年は、人間の形をした自身の手を見つめて、声を絞り出すように話し続ける。


「だが、俺にはどうやら魔力があるらしい。これは俺の『強さ』ってやつじゃねぇのか? 自分を本当に『強い』と認識できたなら、こんなはぐれ狼でも、まだ生きていてもいいって事にならねぇか?」

「ふむ、成程の…」

「だから、先生。俺は『俺』に賭けてみようと思ったんだ。あんたは、どうする?」


 少年は真っ直ぐ魔女を見すえて、あえて挑む様にそう言った。

 それがあんまりにも不遜な、ふてぶてしい幼子みたいな態度だったので、思わず仔はグッと親指を立てて、少年の勇気を讃えた。

 レオナルドは愉快そうに大声で笑う。成程、狼なりに覚悟を決めて、一世一代の大博打を打とうという訳だ。全く人に物を頼む態度とは思えない。だがこの魔女は、売られた喧嘩は必ず買うタイプの女だった。


「であれば、決まりよの。坊や、お前さんにふわふわの弟弟子が出来るぞ」

「ふわふわ…、えっと、弟子にしてくれるって事でいいのか?」

「勿論、手加減はせんので、そのつもりでな」


 魔女は狼の少年の頭をわしわしと撫でる。狼はむず痒そうに耳を震わせて、安堵したように、初めて笑った。


「望むところだ、先生。俺に名前を付けてくれ。あんた程の魔女が名付け親なら、俺はもっと強くなれる」

「名付け? 良かろう」


 レオナルドはうーんと小首を傾げ、やがて名案を思いついたみたいに顔を上げた。


「トットはどうかね? 儂が昔人間だった頃に飼っていた仔犬の名よ。お前さんまだ子供だし…」

「仔犬って…話聞いてた? 俺は強くなりたいって言ったんだよ」

「今よりもっと強くなったら、もっと良い名前を与えてやろう。今のお前さんにはこれぐらいがお似合いよ」

「はぁ…まぁ、何でもいいけどよ」


 トット、と名付けられた狼は、不思議と影の色が一層濃くなったような、全身を巡る魔力が増したような心地がした。確かに今の俺にはこれぐらいが丁度いい、とも思った。

 名付けとは実に複雑なもので、遡れば古代神の唱えた創世魔法に通じるという。正しい名を告げることで、その者の正体を明らかにする。逆に、名付けの儀式によって対象に実力以上の強い名前を与えた場合、世界に間違った報告をしたペナルティとして、名付け親は反動の呪いを喰らうこともあるのだ。

 トットはふと、足元に転がった血袋の怪物…もとい名無しのドゥを見つめて、レオナルドに尋ねた。


「それで、先生。この怪物は何なんだ? 匂いは人間に似てるが、こんな形のは見たことがねぇ」

「怪物とは失敬な! 坊やは儂らの信仰する神の創造物だぞ。名前は名無しのドゥという。お前さんの兄弟子だ。仲良くせんか」

「ドゥ? それって、つまり名前が無いって事?」

「その通り」

「…何で名前付けねぇの?」


 訝しげに、弟子のトットは首を傾げる。それは強さの為に名付けを求めた元無名の狼にとって、至極当然の疑問であった。

 しかし、魔女レオナルドは微動だにせず、彼の言葉を反芻している。

 何で坊やに名前を付けないのか。


 え? 何で?


 そんな事、思い付きもしなかった。だって、魔神オズワルドが「仔に付ける名前は無い」と、そう言ったのだから。この仔は「名無しのドゥ」なのだから。知らぬ間に、そういうものだと決めつけていた。顔もない、身体もない。勝手に可能性の限界を決めて、安全な皮膜と手押し車の中に閉じ込めて、成長を妨げていた。仔を育てるようになってからの数年間、三人の魔女は誰一人、名無しの仔の名付けなんて思い付きもしなかったのである。

 まさか、こんな簡単な事だったのか?

 魔神の呪いを解く方法が!


「ヘウレーカ!」


 レオナルドは空に向かって狂ったように叫んだ。トットはびくっと尻尾を逆立てる。仔は不思議そうに魔女を見上げていた。

 

「トット! お前さん、マジで魔法の才能あるぞ!」

「は?」


 レオナルドはトットと名無しの仔を連れて、一目散に魔女の屋敷へと戻ってきた。そこでリビングに集めた他の魔女、エリーザとジャンヌに、自分の推察を話した。


「解呪の条件は恐らく、名付けだ」

「「名付け?」」


 二人の魔女は同時に聞き返した。


「名は体を現す。ほれ、儂らの可愛い坊やをご覧。魔神殿より『無名』の称号を冠した坊やは、皮膜のコーティングがなければ肉が崩れて形を保つことさえできん。今のままでは、坊やは何者にもなれんのだよ」

「つまり名前を与えれば、人間の形を得る、と? そういう事ですか?」

「エリーザよ、お前さんは忘れてしまったやも知れんが、かつて人間だったお前さんも、人の名を捨てて魔神殿より魔女の名を与えられたことで、その美しい案山子のような形を得たのだ。それと同じ事よ」

「あら、そうなのですね。昔の事はあんまり覚えていなくて…」

「あー、とにかく、ガキに名前を付ければいいんでしょ? それなら納得がいく。あのクソ蛇もその方法を知ってたんだ」

「レイミアが?」

「そう。あいつ、ガキを見て『正しい形にしてあげる』『代わりにうちの子にしてあげる』って言ってた。今思えばあれは解呪に対する正当な対価じゃない。本当は『名付け親になってやる』って意味だったんだね。マジでホラーだわ」

「成程の。しかし、彼奴のような太古の魔獣が、坊やに名と魔力を与えれば、最悪十二始祖の均衡が崩れる。戦争待ったナシよ。断って正解だったのぅ」


 ジャンヌとレオナルドは深く頷き合う。ぼんやり話を聞いていたエリーザも、「どうやら、名付けの儀式というのは、本当に大切なものなのだわ」と納得し始めた。

 トットと名無しのドゥは、話についていけずにダイニングテーブルの下でおはじき遊びをしていた。


「それで提案なんだが、坊やの名付け親は、エリーザが相応しいと思うてな」

「え」

「それはそう。だってエリーザが一番世話してるし、初めに主君から預かったのもエリーザだし」

「えっと…」


 名指しされたエリーザは困惑する。

 魔神の仔の名付け。解呪。仔の人生を左右する責任感。これらの情報量は既に、脳みそが空っぽのエリーザのキャパシティを、遥かに凌駕していた。

 いつだって、想定外の事が起きた時は、頭の中の脳蟲に選択を委ねてきた。エリーザは咄嗟に頭をノックして脳蟲に指示を仰ごうとする。が、その直前で手を止めた。これは脳蟲ではなく、エリーザが決めるべきことだった。


「ええ、任せて頂戴。エリーザは、この子の名付け親になるのです」


 その日から三日三晩、エリーザは脳蟲の指示を無視し続け、ひたすら机に向かっていた。ブツブツと何かを唱えて羊皮紙や机の脚や床に殴り書きして、空っぽの頭を抱えて呻くのだ。普段ぼんやりとして、滅多なことでは動じない彼女にしては珍しい姿だった。


「エリーザって意外と、ノイローゼになりやすいタイプだったんだ…」


 ジャンヌは哀れむようにそう言って、エリーザの代わりに苦手な料理に取り組んだ。レオナルドは屋敷の掃除と慣れない畑仕事で腰を痛めた。新入りのトットは、ひたすら薬草の収穫と調合を手伝わされた。


「テオドール」


 そして遂に、その時が来た。

 エリーザが名無しのドゥ、案山子の下の仔、カボチャ畑の泥被り。つまり彼に、名前を付ける瞬間が来たのだ。


「テオドールはどうでしょう? 神の贈り物、という意味です。長ければ略してテオと呼んでも…」

「また古風な名前だね。まぁいいんじゃない?」

「神を意味する響きはちと強過ぎる気もするが、不相応という程でもなかろ。うむ、良い名だ」

「テオドール、どうですか? 貴方は気に入りましたか?」

「うん!」


 力強く、名無しのドゥ…否、テオドールは返事をした。それは産声と言うには余りにも強い意志と意味を持っていた。魔女達が息を飲んで見守る中、肉塊の仔はみるみる姿を変えていく。


「おれ、テオドール、うれしい、ありがと」


 醜く崩れていたはずの口が正しく動き、手足は胴体に繋がって、脳と心臓と腸は正しい位置に収まった。皮膜が破れ、羊水が弾ける。サナギから蝶へ羽化するかのように、名前を与えられたテオドールは今、正しい形に成って生まれ変わった。


「エリー、ジャン、レオ。だいすき。だいすきだよー」


 人間の少年の姿を得た仔、テオドール。彼は大好きな魔女達に、生まれてからずっと伝えたかったことを、告げた。

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