キリキリバラン(前編)

私の最終学歴は専門学校である。

高校時代は地元では有名な進学校に通っていたし、成績も自分でいうのもなんだが悪くはなかった。

しかし、受験シーズンになるとプレッシャーからか体調を崩して受験した大学は全て落ちてしまった。

判定も良かった為、私が試験に落ちた事を伝えるとクラスの担任がひどく驚いていたのを今でも表情込みで覚えている。

私立大学は受験していなかったし浪人するモチベーションもなかった為、専門学校へ通う事になったのである。

そんな中、同じクラスのあまり成績が芳しくなかったF君はセンター試験の成績も好成績を納め、地方の国立大学にも合格していた。

夏頃に話した時には模試の判定が悪かったとぼやいていた彼が猛勉強したのかと思っていたのだが、卒業式の日に彼と話す機会があり興味深い話を彼から聞かせてもらった。


F君は両親共に教師をやっている教師家系の長男であった。

弟や妹は成績も良く学年トップクラスの成績なのだが、F君はクラスでも後ろから数えた方が早い位の成績だった。

中学生まではある程度の成績は残せていたのだが、高校生になった辺りから授業で聞いた内容が頭に残らず、全て滑り落ちていく感じだったという。

そのせいで、特に暗記が必要な教科は散々だった。

高校三年生の三者面談の際には担任に模試の判定を基に私立の大学も受験することを勧められたが、F君にはプライドもありどうしても国立に行く事を譲らなかったそうだ。

夏の補習を終えた頃ですら合格に必要な点数の5割程しかとれず、いよいよ私立の受験も考えなければならないかと思っていた時だった。

その夜も自室で勉強をしていたF君の部屋に弟が入ってきた。

漫画を借りに来た弟は棚の漫画を数冊取り、

「まだ勉強しているの」

とF君の横に立った。

F君が勉強のストレスから追い払おうとした時、弟が

「キリキリバラン」

と言って弟は部屋を出ていった。

一瞬、弟が何を言ったのか分からなかったそうだが勉強を再開して少し経ってからある事をF君は思い出した。

F君がまだ小学生の頃、夏休みの間は祖父母の家に兄弟共に預けられていた。

昼ご飯前に居間で兄弟揃って夏休みの宿題をしていたのだが、夏休みの宿題なのでそれほど難しい問題はないのだがF君は宿題が捗っていなかった。

それに気づいたのか、近くでテレビを見ていた祖母がF君兄弟に話しかけてきた。

「勉強は楽しくないかもしれないけど、将来きっと役にたつから頑張りなさい。でも、もしも、勉強で悩んだり分からない事があったら″キリキリバラン″って唱えてから勉強続けてみなさい。スッと頭に内容が入ってくるから」

と言って、祖母は近くのチラシの裏に鉛筆で″キリキリバラン″と書いた。

「ほら、二回言ってごらん」

と祖母が言ったのでFさんは

「キリキリバラン、キリキリバラン」

と唱えてみた。弟もそれに合わせて唱える。

祖母は頷いた後、にっこりと笑うと部屋を出ていった。

F君は半信半疑で麦茶を飲んでから再度宿題に手を付けた。

すると、先程よりも問題がスラスラと解ける。

先程まで、どのように解けばいいのか分からなかった問題も糸がほどける様に簡単に解けていく。

全てとは言わないが、先程まで苦戦していた部分もある程度片付け、分からなかった部分を教科書を広げて復讐してみる。

その時に、F君は頭の中で教科書の内容が整理されて記憶されるような不思議な感覚を覚えたという。

その日までは一日で数ページしか進まなかった宿題が、日記以外はそれから二日ほどで完了したという。

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