美談
ふじざくら
微蜜
私は彼のことが大嫌いだ。
私が持っていないものを全て持っている。
美しく、儚く、男も女も惑わすような毒のような
私がどんなにオシャレをしようと、あの子たちは、私には振り向かず、彼ばかりに人々は目を向け、甘い声を出し、擦り寄っていく。
まるで、一輪の花のように美しく咲き誇り、
どんなに静かに咲いていても、自分から声をかけなくても、彼の周りには大勢の人がやってくる。毎回、私が声をかける前に。
そんな私の姿を見て彼は勝ち誇ったかのような顔をしてくる。
まるで、
「自分の方が全てを持っている勝ち組」
とでも言いたそうな顔。声を聞かなくてもわかる。
いつ見ても腹が立つ。
そんな彼の周りに集まっている友人に私は声をかけ、私は彼の周りから彼と話している友人を遠ざける。
その時の彼の顔は悔しそうで、いつ見ても爽快である。
「今回も私に取られて残念でしたァ〜」
私は目線で彼と会話する。
しかし、彼からの
私を気にしている余裕もないのだろう。
そういうところも腹立たしくて、大嫌いだ。
そんな、彼にも一つだけ欠点がある。
それは、動けないことだ。
彼は自分の足で歩けないし、ましてや、走ることも、話すことも、声を出すことさえできない。それが唯一の欠点である。
だから、私は彼の唯一の欠点を上手く使い友人を、彼から引き剥がしている。
今日もそうだ。
「もぉ〜!!みんな!また、
「え!?!?もうそんな時間!?ちょっと待ってぇ〜!」
そう言いながら私の友人たちは階段をおりてくる。
ほら、今日も私の勝ち。
キミは動けないから、私の友人たちを追いかけたり、呼び止めたりできないもんね。可哀想に(笑)
でも、そんなキミは私に興味が無いかのように目を背ける。
そうか、キミは逃げるのか、
わかった。徹底的に
の熱い戦いはまだ始まったばかりである。
「楽しみにしているよ。」
そんな声が遠くから聞こえた気がした。
そんなところも大嫌いだ。
〜終〜
テーマ:鏡を敵対視している女の子
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