世界を一度滅ぼしたラスボスの息子でも、世界を救ってもいいですか?

佐藤ゆう

第1話 魔女英雄

 夕焼け空と、それに赤く染まるビル群がとても綺麗だ。


 それが『気球』に乗り、東京都心を上空から見下ろした、俺の感想だった。


 ――直後。俺は気球から落ちた。


 ビル群の真ん中に――。


 誰かに落とされた気もするけど、一瞬のことでわからなかった。

 落下する身体が、ガ ク ン と大きく揺れた。


 閉じたまぶたをゆっくり開けると、誰かに片手をつかまれ、宙に浮いていた。

 つかまれながら、宙ぶらりんになりながら、その者を見上げた。


 背中には、白い翼が生えており、夕焼けに重なる姿は美しく、まるで天上に住まう――。


「天使……」


 俺のつぶやきを聞いて天使は無邪気に笑う。


「ブーブーっ。ハズレ」


 このときの彼女の笑顔を、俺は永遠に忘れることはないだろう。


「あたしは魔女。よろしくね、坊や」


 このとき決めたんだ『魔女』になろうって。


 彼女のような『魔女』に――。

 

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