第1章 小学校時代②
1.4 「女の子になりたい」
1.4.1 新しい担任・小野寺先生
陽太が5年生に進級した初日、新しい担任教師が教室に入ってきた。
小野寺さくら先生は、陽太の予想以上に若くて明るい印象だった。
彼女は温かい笑顔を浮かべて、「みんな、こんにちは!」と元気に挨拶した。
その声は、クラスの中に一瞬で明るい空気を作り出した。
小野寺先生は、黒板に名前を書きながら話し続けた。
「今日はみんなに自己紹介してもらうけど、まずは私からね。」
先生は軽く自己紹介をしながらも、すぐにクラス全体に向かって目を向け、「ここでは、みんなの個性が大切にされる場所にしたいと思っているよ。」と話した。
陽太はその言葉を聞いたとき、ふっと胸が温かくなった。
小野寺先生の言葉は、まるで陽太の気持ちをそのまま受け入れてくれるような、優しさを感じさせた。
「自分らしく、好きなことをして過ごしていこうね。」
その言葉に陽太は、何か大切なことを教わった気がした。
それは、今まで誰も言わなかったような言葉だった。
小野寺先生の優しさや、生徒一人ひとりに寄り添おうという姿勢が、陽太にはとても新鮮に感じられた。
これまでの担任の藤田先生は、優しくて温厚な人だったけれど、どこか保守的で、全体的な均一性を重んじる部分があった。
だからこそ、陽太が少しでも自分の違いを感じたときに、その空気を作り出すことが難しかった。
それに対して、小野寺先生は一人一人の違いを尊重する姿勢を見せてくれて、陽太は次第に心が落ち着いていくのを感じた。
放課後、小野寺先生はみんなに話しかけてきた。「今日は新しい一歩を踏み出す日だから、みんなが思っていることや、やりたいことを少しずつ教えてね。
もちろん、違っても大丈夫。それが、みんなの良さだから。」
陽太はその言葉をしっかりと心に刻み込んだ。
その後、クラスでの時間が進むうちに、小野寺先生の言葉はさらに陽太の中で響き始めた。
普段から仲の良い翔平や美月、凛、朱音たちとも、もっと自然に話せるようになった気がした。
先生が言うように、違ってもいいんだと、陽太は自分の中で少しずつその感覚を育てていった。
陽太がふと鏡の前に立つと、自分の髪が少し伸びていることに気がついた。
何も言われないままに、いつの間にか伸ばし始めていた。
それは、小野寺先生が言った「自分らしく過ごしていこう」という言葉が、心の中で少しずつ花を咲かせていたからかもしれない。
1.4.2 女子たちとの関係の変化
陽太は5年生になっても、クラスメイトとの関係は大きく変わることなく、以前と同じように過ごしていた。
翔平や美月、朱音たちとは相変わらず一緒に遊び、授業中も仲良くしていた。
陽太の心の中に少しだけ違和感が残っていたけれど、それは他の誰かに気づかれることなく、普通の小学生として過ごしていた。
だが、ある日、昼休みに教室で女子たちと話しているときのことだった。
陽太はその日も凛、美月、朱音と一緒におしゃべりをしていたが、凛が突然、陽太に向かって言った。
「陽太、髪もっと伸ばしたらどう?」その一言に陽太は驚き、言葉がすぐに出てこなかった。
周りの女子たちはみんな一瞬黙った後、同じように「いいかも!」と賛同してくれた。
陽太は内心、心臓が跳ね上がったような気がした。
凛はにっこりと笑って言った。
「だって、髪が長いと女の子っぽく見えるし、陽太ももっと可愛くなると思うよ。」
その言葉が陽太の胸にじわりと染み込んだ。
嬉しい気持ちが込み上げると同時に、どうしていいのか分からないような戸惑いも感じた。
自分が髪を伸ばすことで、何かが変わる気がしたけれど、それが本当に自分にとっていいことなのか、まだ確信が持てなかった。
その後、陽太は昼休みが終わるまで、凛の言葉を何度も思い返していた。
髪を伸ばすというのは、陽太にとって小さな変化に過ぎないように思えた。
でもその変化が、どんな意味を持つのかは、自分でも分からなかった。
「本当にそれをやっていいのかな?」
陽太は自分の内心に問いかけた。
凛の言葉が嬉しかったのは事実だけれど、それを実行することで、何か大きなことを変えることになるような気がした。
その変化に踏み込むことが、少し怖くもあった。
その日の放課後、陽太は家に帰ると、まず鏡の前に立った。
髪は今、耳が隠れる程度の長さだ。でも、凛が言っていたように、もっと伸ばしてみたらどうだろう。
思い切って髪を伸ばすことで、陽太は一歩踏み出せる気がした。
だが、同時にその一歩が、自分の「本当の気持ち」を見つけることにつながるかもしれない、という予感もあった。
陽太は鏡の中の自分を見つめながら、心の中で少しずつその決断に近づいていくのを感じていた。
そして、凛の言葉がまるで背中を押してくれているかのように、陽太は深呼吸をして決意を固めた。
1.4.3 家庭での葛藤と変化
陽太は、学校では少しずつ自分を表現できるようになってきていたが、家ではその感情をうまく伝えることができずにいた。
父親との関係は相変わらずぎこちなく、日々の暮らしの中で自分の気持ちに向き合おうとする度に、何かが重くのしかかるような感覚に襲われていた。
髪を伸ばし始めたことも、家ではあまり話すことができなかった。
学校では凛の言葉に後押しされて、少しずつ伸ばし始めた髪が、陽太にとっては新しい自分を見つけるための第一歩だと感じていた。
しかし、その一歩が父の目にはどう映るのかを考えると、胸が締めつけられるようだった。
ある日の夕食時、いつも通り父と二人きりで食卓を囲んでいた。
父はテレビを見ながら無愛想に食事を取っていたが、ふと顔を上げて陽太を見た。
「お前も男なんだから、しっかりしろよ。」
いつもと同じ言葉。
でも、今日の父の言葉は、まるで何気ない一言のように響いたが、陽太にはそれが深く刺さった。
父の言葉は、陽太が自分で自分を認めるために進んでいる道と真逆のものであるように感じられた。
陽太は少しだけ眉をひそめ、言葉を飲み込んだ。
胸の奥で何かがもやもやと渦巻いていた。
「しっかりしろ」という言葉が、陽太にとっては無力感と共に胸に広がっていった。
陽太は本当は、何かを変えたくて、少しずつ自分を表現しようとしているのに、その言葉がまるでそれを否定するように感じられた。
髪を伸ばすこと、そして自分の気持ちに正直でいることは、陽太にとって重要な一歩だったが、父の期待には背けないという恐怖があった。
「もし、髪を伸ばしたいって言ったら、お父さんやお姉ちゃんはどう思うんだろう?」
陽太は心の中でその問いを繰り返しながら、黙々と食事を続けていた。
だが、父の反応を想像するだけで、体が硬くなり、言葉にできなかった。
「男らしくしろ」という言葉は、陽太の中でますます重くなり、何度も頭の中でリフレインしていた。
それでも、陽太は何も言えなかった。
自分の気持ちを言葉にして反発する勇気が、まだなかった。
陽太は黙って食べ終わると、食卓を立ち上がり、自分の部屋へと向かう。
心の中では、父の言葉に反発する自分と、それを飲み込んでしまう自分が戦っていた。
しかし、どちらが正しいのか、答えを見つけることはできなかった。
部屋のドアを閉めると、陽太は鏡の前に立ち、ゆっくりと自分の髪を触った。
少しずつ伸びてきた髪が、陽太にとっては何かを象徴するような気がしていた。
それでも、父の言葉に縛られている自分が、どうしても抜け出せない。
「どうしても、言えないんだ…」
陽太は小さな声で呟いた。
胸の中で自分を解放するために、何かを言いたい気持ちがあるのに、それを口に出すことができない自分に、陽太は歯がゆさを感じていた。
1.5 少しずつ変わる自分
1.5.1 姉・真緒との会話
夏休み前のある日、陽太はリビングで一人テレビを見ていると、姉・真緒が帰宅するのが見えた。
高校生になった真緒は、忙しそうに学校から帰ってきたばかりで、制服姿でベッドに座った。
陽太は少し驚きながらも、姉の帰りを待ちわびていた。
「陽太、どうかしたの?」と、真緒は明るく声をかけてきた。
陽太は嬉しくなり、真緒の隣に座ると、何気ない会話が始まった。
しばらくは普通の会話をしていたが、ふと真緒がぽつりと聞いた。
「ねえ、陽太は何か変わりたいの?」
その質問に陽太は驚き、しばらく考え込んだ。
真緒はまったく深く考えていない様子で、ただの雑談の一環として言ったのだろう。
だが、陽太の心の中では、その言葉が重く響いた。
「変わりたい…」
陽太はその言葉を呟きそうになったが、すぐに口をつぐんだ。
心の中で自分がどうしたいのかを感じ取っていたが、その言葉を姉に伝えることはできなかった。
陽太は恐る恐る答えた。
「わからない。」
でもその答えの裏には、明確な気持ちがあった。
「女の子になりたい」という気持ちが、陽太の中で膨らんでいることを、真緒は気づいていない。
しかし陽太自身は、その気持ちをしっかりと感じていた。
髪を伸ばし、女の子のように振る舞いたい、でもまだそれを実行する勇気はない。
真緒は陽太の答えを受けて、「そっか、まあ無理に変わらなくてもいいんだよ」と軽く言った。
その言葉が、陽太にはなんだか胸にひっかかった。
姉はただ無邪気に質問しただけなのに、陽太にはその言葉がまるで未来に向けた扉を開くような気がした。
陽太はその夜、寝室に戻ると、ベッドに横たわりながら考えた。
真緒の言葉が心に残り、「変わりたい」と感じている自分が本当に何を求めているのか、答えがまだ見えない。
ただ、心の奥底で「女の子になりたい」という気持ちが膨らんでいくのを感じていた。
その瞬間、陽太は自分の気持ちに少しだけ向き合えたような気がした。
1.5.2 小野寺先生との個人面談
1学期の終わりが近づいてきたある日、陽太は小野寺先生に呼ばれて、放課後に個人面談をすることになった。
クラスメイトたちは楽しみにしている夏休みのことを話している中、陽太だけはどこか気が重く、面談の時間が近づくと少し緊張していた。
教室の後ろの小さな部屋に入り、席に座ると、小野寺先生はにこやかに「こんにちは、陽太くん。今日は少しだけお話ししようか?」と声をかけてきた。
その優しい声に、陽太は少しだけ安心したが、同時に胸の中にうまく整理できない気持ちが渦巻いていた。
「最近どう?」と、先生はまず日常的な質問を投げかける。
陽太はしばらく考えた後、「まあ、普通です」とだけ答えた。
心の中では、何か言いたいことがあるのに、言葉がうまく出てこない自分が歯がゆかった。
しばらく会話が続いた後、小野寺先生はふっと真剣な表情になり、陽太に優しく言った。
「陽太くん、覚えておいてほしいことがあるんだよ。大事なこと。それは、『みんなが自分らしくいられること』なんだよ。」
その言葉は、陽太の心に深く響いた。
「自分らしくいること…」陽太はその言葉を何度も反芻した。
自分らしくいることが大事だとわかってはいたけれど、実際に自分をどう表現していけばいいのか、陽太にはまだわからないことばかりだった。
「先生、僕は…」陽太は言いかけて、言葉を止めた。
自分の気持ちを伝えるのが怖かった。
心の中で何度も繰り返している「女の子になりたい」という思いを口にする勇気がなかった。
それでも、小野寺先生は優しく微笑みながら、続けた。
「大丈夫だよ。急がなくてもいい。自分のペースでね。」
その言葉に、陽太は少しだけ勇気をもらった。
先生は無理に何かを言わせようとせず、陽太の気持ちを尊重してくれる。
陽太は少し肩の力を抜き、「自分らしさ」って何だろう、と思いながら、少しずつ自分の気持ちを整理し始める。
面談が終わる頃、陽太は心の中で少しだけ前を向いたような気がした。
小野寺先生の言葉が、陽太にとっての小さな支えとなり、次の一歩を踏み出すための力になった。
それでも、まだその一歩が踏み出せない自分がいることも感じていて、心の中で葛藤は続いていたが、確かに少しだけ自分に向き合う勇気を持てた瞬間だった。
1.5.3 自分らしさを模索する陽太
夏休みが始まり、陽太は毎日を何となく過ごしていた。
姉・真緒との会話や、小野寺先生の言葉が心に残りながらも、クラスメイトの前では自分を完全に表現することはできなかった。
まだ、周りの目を気にしてしまう自分がいたからだ。しかし、心の奥では少しずつ変わりたい気持ちが膨らんでいった。
陽太は、朝起きて鏡を見るたびに少しずつ長くなっていく髪の毛に嬉しさを感じる一方で、周囲の反応が気になって仕方がなかった。
朝、父に見られるのが怖くて、髪を隠しながら支度をすることもあった。
夏休みのある日、陽太は一人で公園に行き、ふとその日の陽気に合わせて髪を少しまとめてみた。
公園のベンチに座りながら、陽太は自分の姿を鏡で確かめてみる。
髪が少し伸び、少しだけ自分が変わった気がした。
その変化に嬉しさと同時に不安も感じたけれど、何かが少しずつ自分に馴染んできたような気がしていた。
その日の午後、姉・真緒が家に帰ってきて、「陽太、最近髪伸ばしてるの?」と尋ねた。
真緒は何気なく言ったが、その目には何の疑問もなかった。
ただ、陽太の変化を素直に受け入れてくれているようだった。
「うん、少しだけ。でも、なんだかちょっと恥ずかしいな」と陽太は答えた。
「気にしなくていいよ。少しずつ変わっていけばいいんだから」と真緒は優しく言った。
その言葉を聞いて、陽太は少しだけ勇気をもらった。
自分を少しでも変えていくことに対して、前よりも少しだけ強い気持ちを持てるようになった気がした。
しかし、学校に戻ると、まだクラスメイトたちの目が気になって仕方がない。
髪を伸ばしていることに気づかれるのが怖くて、陽太は学校ではあまりそのことを強調しないようにしていた。
それでも、陽太は自分を表現することの大切さに気づき始めていた。
外見を少しずつ変えていくことで、自分が何かを肯定できるようになるのではないかと、心の中で模索していた。
完全に自分を出すことはまだ難しかったけれど、少しずつその一歩を踏み出している自分に、少しだけ誇りを感じ始めていた。
ある日、鏡を見ながら陽太はふと心の中でこう思った。
「これでいいんだ。少しずつ、でも確かに変わっていくんだ。」
その瞬間、陽太は自分に向き合うことができたような気がした。
自分を肯定することができる、その第一歩を踏み出したような気がした。
1.6 友達は変わらない
1.6.1 翔平の気づき
陽太は鏡の前で、以前と比べるとかなり伸びた髪を整えていた。
耳は髪で完全に隠れ、ショートボブくらいの長さだ。
まだその長さに少し戸惑っている自分がいた。
髪を耳にかけたり、ゆっくりと指で触れたりしながら、「これでいいんだ」と自分に言い聞かせるようにしていた。
その日の放課後、いつものように教室を出た陽太は、友達と一緒に校庭を歩きながら笑い合っていた。
翔平はいつも通り元気そうで、みんなを引っ張っていくタイプだ。
しかし、その日、翔平は何かに気づいたようだった。
「陽太、だいぶ髪伸びたよな?」
翔平が突然、陽太に声をかけてきた。
陽太はその言葉に驚き、少しドキッとした。思わず足を止めて、翔平の顔を見上げる。
翔平の目には特別な驚きや疑問の色はなかった。ただ、何気ない一言だった。
「え、あ、うん。ちょっと伸ばしてみたんだ。」陽太は少しだけうろたえながら、返事をした。
翔平は一瞬微笑んで、「おー、いいじゃん」と軽く言った。
何事もなかったかのように、翔平は陽太の髪を気にせず、そのまま他の話題に移った。
陽太はその言葉に少しほっとしながらも、心の中で小さな不安を感じていた。
(翔平は、僕が変わっていくことに気づいているのかもしれない。でも、それを気にしていないんだ。)
翔平の何気ない言葉に、少しの不安と、でも安心感も同時に感じていた。
翔平が「陽太、だいぶ髪が伸びたよな」と言ったことは、ただの気づきに過ぎなかった。
それでも、陽太はその時、翔平が何も変わらず自分に接してくれることが嬉しかった。
翔平が陽太をどう思っているのかは分からない。
けれど、陽太はその瞬間、翔平の態度が変わらないことに深い安心感を覚えていた。
陽太は心の中で、何度も何度も自分に言い聞かせるように思った。
「大丈夫。翔平は変わらない。私がどんな姿になっても、何も変わらずにいてくれる。」
翔平の無邪気な一言が、陽太にとっては何よりも大きな勇気になった。
その後も、友達たちとの日常が続いていく中で、陽太は次第に、自分らしく生きることへの不安が少しずつ消えていくのを感じ始めるのだった。
1.6.2 美月と朱音の反応
陽太が髪を少しずつ伸ばし始めた頃、友達との日常の中で、次第にその変化に気づかれるようになった。
ある日、美月と朱音と一緒に3人で登校している時、陽太は思い切って二人に自分の髪型を見てもらおうと思った。
「ねえ、美月、朱音、どうかな?髪、ちょっと伸ばしてみたんだけど。」
陽太は少し照れくさい気持ちを抱えつつ、二人に問いかけた。
美月は陽太の髪を見て、少しの間黙っていたが、やがて静かに言った。
「うん、いいんじゃない?陽太に似合ってる。」
その言葉には、特別な感情や驚きの色は感じられなかった。
美月らしく、冷静で穏やかな言葉だった。
しかし、そのシンプルな言葉の中に、陽太は深い安心感を覚えた。
美月はいつでも自分の気持ちを冷静に表現し、陽太にとって心強い存在だと改めて感じた。
「ありがとう、美月。」
陽太は少しほっとしたように微笑んだ。
朱音は少しだけ眉を上げ、微笑みながら言った。
「似合ってるよ。」
その言葉に陽太は胸が温かくなるような嬉しさを感じ、思わず照れ笑いを浮かべた。
朱音は、いつも優しくて、陽太をそのまま受け入れてくれる存在だ。
朱音のその笑顔と、何気ない一言が、陽太にとって何よりの励ましとなった。
「ありがとう、朱音。うれしい。」
陽太は照れながらも心からの感謝を伝えた。
その時、陽太はふと気づく。
周りの友達、特に美月と朱音は、陽太がどんなふうに変わっていくとしても、変わらずに応援してくれることを感じた。
二人の反応はどこか温かくて、陽太はこれからの自分の変化に対して少しの不安もなくなっていった。
(周りは、僕がどうしても変わりたいなら、応援してくれるんだ。)
その思いは、陽太にとって大きな支えになった。
周りの人たちが自分を受け入れてくれていることを感じると、自然と心が軽くなるようだった。
そして陽太は改めて、変わることを恐れずに、これからも自分を大切にしていこうと心に決めた。
1.6.3 凛と圭也の自然な受け入れ
陽太が髪を伸ばし、少しずつ自分を表現していく中で、凛と圭也の反応もまた、陽太にとって大きな安心感を与えるものだった。
ある日、陽太が学校に向かうと、凛がすぐに駆け寄ってきた。
彼女の目はいつもより輝いていて、陽太の髪を見た瞬間、思わず声を上げた。「陽太、もっと可愛くしちゃおう!」その言葉に、陽太は少し驚いたものの、凛のエネルギッシュな反応に笑ってしまった。
「え、どういう意味?」
陽太は照れくさく聞き返す。
凛はにっこりと笑って、「もっと髪型とか可愛くして、おしゃれにしようよ!陽太、絶対似合うって!」と言った。
陽太はその明るく元気な言葉に、心の中で少し笑った。
「凛らしいな」と思いながら、そのエネルギーに元気づけられるのを感じた。
凛の言葉には、無理なく陽太の変化を受け入れ、さらには応援してくれる気持ちが伝わってきた。
その後、圭也が静かに近づいてきた。
彼は陽太をじっと見つめてから、特に何も言わずにそのまま自然に歩き出した。
圭也は陽太の髪型や外見に特に反応することもなく、いつも通り、穏やかな表情で接してくれる。
そのあまりにも自然な態度に、陽太は心が温かくなるようだった。
「圭也も、何も変わらず接してくれるんだ。」
陽太は心の中でそのことを再確認し、圭也の気持ちを深く感じ取った。
言葉にしなくても、圭也は自分を理解してくれている。
その温かな存在が、陽太にとってとても心強いものだった。
陽太はその日の帰り道、ふと思った。
「僕、みんなに支えられてるんだな。きっと、これからも変わらず応援してくれる。」
その思いに、陽太は心から感謝の気持ちを抱きながら、静かな歩みを進めた。
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