第30話 退職者カルーシャル=ジュライの証言

 この眼帯ですか、ああはい、そうです。その仕事の時に。


 いえいえ。あの家は良くしてくれましたよ。仕事中の事故です、事故。しかも私のうっかり。それでも医療費と退職金も持たせてくれたんですから。


 え? やだな、止めて下さい。そんなスキャンダルみたいなもんじゃないですって。あそこのお嬢さんはご病気で、外に出れないんですよ。だから世話人が要るんです。

 少し難しい方でね。一度ミスをすると基本、辞めなきゃならないんですよ。


 いやそれは違う。厳しいとか意地悪とか、そういうんじゃないですよ。職務上の必要があってそうなっているんです。守秘の契約をしたんで言えませんけどね。その分のお金も貰ってますから。


 食い下がりますねえ。じゃあ貴方も応募したらいいじゃないですか。きっと良い稼ぎになりますよ。

 でも、ヘマした人の最短はその日の内だったかな? その人にも一ヶ月分の給金と見舞金を渡してましたからね。大したもんですよ。


 え? ああそう、その人も怪我しました。目をね。


 ああ、だから違いますって……………………。


(数分間、押し問答が続く)


 ……もう、仕方ないな。絶対に私が言ったって言わないで下さいよ。名前も出さないで。いい? ……実は、失敗した人でも働き続ける事は一応出来るんですよ。ただ、条件がある。

 あそこの仕事はですね――――


(ここから、録音データは急速に乱れている。声らしき音は聞こえるが、機材不良と思われる雑音が酷く、音声抽出も不可能)


 この取材以降、ジュライ氏との連絡は途絶している。縁者の話によれば、頼み込んでホオズキ家へ復職したという。

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