第5話 昼飯?と装備。

「最後まで音を上げずに訓練を終えた褒美に、飯でも奢ってやろう」


「ぜぇ、ぜぇ、……はぁ、はぁ……あ、ありがとうございます」



 筆頭騎士のガランド様が、一通りの武器スキルの稽古をつけてくれるというのでお願いしたら、朝飯を食べた直後から、昼もとっくの前に過ぎた今まで、ぶっ続けで武器を振らされた。


 なんなんだよこの世界はよ!!!

 何で剣だけで、大剣、長剣、片手剣、短剣、刺突剣なんて5種類のスキルに分かれてんだよ!!! 

 そのせいで一通りの武器スキルの訓練だけでもうこんな時間だし。

 今日は、午前中に訓練、午後は下級ダンジョンの下見でもしようと思ってたのによう!!!



「うむ。夕飯まで、あまり時間も無いから軽めのものにしよう、ついてこい」


「は、はい」











 こ、これで軽め?


 俺の前には、俺の小指の長さほどに厚みがあるステーキと山盛りのパン、丼ぶりのような容器に入ったスープが置かれている。

 そしてガランド様の前にも同量。



「さぁ、冷める前に食べるとしよう」


「…………はい」



 俺は食った。

 親の仇の様に、壮絶に、凄絶に、壮烈に食った。

 そして、この戦場で最後まで立っていたのは……俺だった。



 熱い戦いを終えた俺たちは、その身を冷ますため食後のアイスハーブティーを飲んでいる。


 あれっ? なんか普通に全部食えた。

 俺はフードファイターの才能を秘めてたのか?



「どうした? そんな顔をして」


「えっ、あのー、思ったより、いっぱい食べれたなー、と思って」


「うむ。冒険者は大量に食べるものだ。そう言うシムナも、昨晩はギルドで、かなりの量を食べておったではないか」


「いやぁ、昨日は朝から何も食べてなかったので……」



 ギルドの食堂は、一人前が多かったのだが、意外とおいしかったうえ、なんと、お代わり無料だったので何回もお代わりしてしまったのだ。



「なに! 何故それをあの時に言わなかった! 知っておれば先に飯を食わせてやったものを……」


「いやぁ、あの時は夜になる前に人里に着けたことが嬉しくて空腹どころじゃなかったので……あっ、あの、そんなことより、ちょっと質問いいですか?」


「子供が腹を空かす事はそんな事ではないだろう……まあ、いい、答えられる事なら答えよう」



 きのう読んだ本に書いてあったが、なかなか子供を作れないからなのかベテラン冒険者は大抵子供好きってのは本当だったみたいだな。

 ガランド様! ショタ好きだって疑ってゴメンなさい!

 って、あれ? ガランド様って……



「ガランド様も冒険者なんですよね?」


「ん? 言ってなかったか? 私もジョブに就いておるよ。とはいえ、父が領都で衛兵をやっていた縁で『発現』前から衛兵の見習いをしておったから、『発現』して直ぐにフェフミオ騎士団で従卒になったものでな。普通の冒険者の生活は、あまり知らんぞ。」


「あぁ、そうなんですね。では、あのぉ、一般的にどうジョブを育成するもんなんですか?」


「どう、とは?」


「えーと、たとえば、初ジョブが見習い剣士の人は、見習いから剣士になって上級剣士に、という感じなのか、それとも何個か系統を同時に、たとえば、見習い剣士から別の見習い、そしてまた別の見習い、と何系統か修了した後に剣士になったりするのかなんですけど……」


「ああ、そういう事か。うむ、騎士団では三つ以上の系統で同時に育つ事を推奨しておる。できればさらに一つ以上の生産者系統のジョブでも同時に育つとなお良い」


「生産者ですか?」


「うむ、大工や土木士、鍛冶師や木樵きこり等は軍務でも重宝するしの。一般の冒険者も薬師や錬金術師等で育ち、作った物をギルドに納品する事で安全に義務を遂行する者も多いと聞くぞ」


「そうなんですね」


「ああ、一つの系統だけで育ってしまうとな、行き詰ってしまった時に取り返すのが大変なのだ」


「行き詰まるんですか?」


「ああ、才能にもよるがの。初ジョブ神授で見習い剣士になれば、上級剣士までは就けるだろうが、剣豪やその先の剣聖に就けるかは、その者の才能の高さに依るのだ。だが行き詰まってから別の見習いに就くのは大変なのだ」



 ガランド様は一口お茶を飲むと続けた。



「まだ見習いのシムナには分からんかもしれんが、上級剣士等の二次ジョブともなればその身体能力等の補助はそれなりのものになっての。それを失い見習いの補助では、それまでと同じような仕事はできんので若い時から貯め込んでおかねば金に困る。それに無能感とでも呼べばよいのか、二次ジョブの補助がある事が普通の事になってしまうと見習いや一次ジョブの補助では自身が無能になってしまった様に錯覚していまうのだ。」


「そんなことがあるんですか」


「そうなのだ。そうなると人としてもおかしくなってしまう事もある。なので、もう育つ事のできない二次ジョブに戻ってしまう者も多いのだ。もし、その者が魔法使い等としても育っていれば魔法剣士等の複合ジョブにも就けたかもしれんのにの」



 やっぱり複合ジョブとかもあるんだな。

 しかし、上位のジョブに就ける条件は下位のジョブの修了と才能か。

 ほかに就き方は無いのか?

 無いなら才能のみが物を言うクソ世界。

 まあ、この世界はすでに結構クソだからクソ要素が増えるだけだが。

 それに



「でも、ジョブを修了することで、ほかのジョブに就いても持ち越せる補助があるんですよね?」


「ああ、ある。だが、修了後の補助はジョブに就く事で得られる補助とは少し違っての。補助の効果が少ないし鑑定機でも見れんから、どんな補助なのか分からん物も多いのだ。分かっている物で有名な物と言えば、見習い魔法使いを修了する事で得られる補助では、スキルの『魔力回復』とは別に魔力の回復が少し速くなるらしい。」


「そうなんですか」



 やっぱりそうか。

 ジョブに就くことでの補助はステータス補助。

 ジョブ終了後の補助はジョブマスターボーナスって感じか。

 で、ジョブマスターボーナスの方はマスクデータになってて、よくわからないと。



「でも、どのジョブにも修了後の補助は有るんですよね?」


「ある、と言われておるな。まあ、冒険者は手の内をあまり見せたがらんからな、就いている人数が少ないジョブの事は、よく分らんのだ」



 ふむふむ。

 思ってたとおり。

 育成計画は今のままでいいかな。


 あっ!? 今、何時だ?

 ここに来てから結構時間経ったよな。

 早くしないと閉まっちまう。



「すいませんガランド様! 用事を思い出したんで失礼します!」


「ああ、わかった」


「ごちそうさまでしたー!」



 やばいやばい、走れ、俺!

 なんとしても今日中に手に入れなければ。


 俺はギルドの裏手にある体育館のような大きな建物に急いだ。











「だあ、はあ、はあ、はあ、あ、あの! まだやってますか!」


「ああ。やってる」



 よかった! 間に合った!

 でも、何で受付にスキンヘッドに髭の筋肉ダルマが座ってんだ?

 場所、間違えた?



「あ、あのぅ、ここってギルドの生産部で合ってますか?」


「ああ。合ってる」



 なんでこんな厳ついのが生産部の受付なんだ?

 用心棒か?



「用心棒ではない。生産部長のマキシムだ」


「部長さんだったんですか……あのぅ、俺、口に出して」


「いや。初めて生産部ここに来る者は皆、用心棒と間違える」


「あ、あぁ……そうなんですね」



 そりゃぁそうだろ!

 こんなグローブみたいな手ぇしてるヤツが生産部長なんて思うわけねぇ!



「あの! 昨日、冒険者になったんですけど、着の身着のままで来たって言ったら、ここで服を一着もらえるって聞いたんですけど」


「ああ。聞いている。ギルドカードを」



 取り出したカードを渡した。



「……確認が取れた。カードを返すぞ。ついてこい」


「あ、待って、待ってください」












「おお、すごい、ピッタリだ」


「俺が手直しした。当然だ」



 もらった服は、厚みはあるが柔らかく動きやすい物だった。

 そしてなぜか、服一着と聞いていたのにズボンも付いてる上下一セットだったうえにブーツまで用意されていた。



「コレ、結構いいものなんじゃないんですか? 本当にタダでもらっちゃっていいんですか?」


「いい。この大きさでは着れる者は少ない。この服は本来は鎧下として作られた物で素材は大角デーモンシープの毛と人喰いコットンから取れる綿の混紡だから衝撃をよく吸収し斬撃にもそれなりに強いのに厚みの割に柔らかい生地だから戦闘用にも普段用にも使え乾きやすいので維持も楽で色を灰色に染めたので汚れも目立ちにくい。編み上げ靴はクレイジースモールブルの革製だからしなやかなのに普通の刃物では傷も付かず水にも強い」

「へっ? あっ、はい」



 服のことになった途端、息継ぎ無しで喋ったぞ。

 なんなんだこの人。



「ガランド様に訓練していただいたと聞いた。スキルは得たか」


「はい、短剣と短棒と総合格技を」


「待っていろ」



 出てっちゃったぞ。

 ほんとなんなんだよこの人。



「これを持ってみろ」



 戻ってきたと思ったら、鬼の金棒を50cmぐらいに縮め、細くしたような物を渡してきた。

 

 お、おもい。

 でも短棒として何とか使えるのがわかった。



「どうだ」


「使えそうです」



 軽く素振りしてみると、俺には重心が先のほう過ぎる感じがする。



「重心が先だな。短い短棒はそれしか無い。我慢しろ。気に入らなければ金を貯め特注するか鍛冶師になってここで作れ」


「えっ? 武器までいただいていいんですか?」


「いい。あとこれとこれとこれだ」



 マキシは、鞘に入ったナイフと肩掛け鞄と紐の付いたカード入れを渡してきた。



「短棒は昔ギルド員が軽めの棍棒を作ったつもりが出来たら短棒判定だったので倉庫に置いてった物で鉄製だナイフも鉄製の鍛造だが刃がそれなりに長く厚みもあるから解体用にも戦闘用にも使える物だ鞄とカード入れは編み上げ靴と同じクレイジースモールブルの革だカード入れは普段は首から下げて服の下に入れておけ」


「ええ!? こんなにいいんですか?」


「いい。そろそろギルドの食堂の晩飯の時間だ。帰れ」



 いきなり帰れかよ。

 さっきあんなに食ったから、あんま腹減ってないんだけどなぁ。

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