第8話 式神

 初めての特訓から1ヶ月がたった。


 この1ヶ月間は正直えげつなかった。陰陽術は夕陽お姉ちゃん。武術・体術はお父さん、治癒術はお母さんに毎日叩き込まれた。


 何回死ぬッと思ったか分からないくらい、死にかけたな。

 自分から死ぬ気で頑張るから教えてくれって言ったのにも関わらず途中で毎回心が折れかけた。その度にまだまだ自分は未熟だなと思うようになったのはひとつの成長かな。


 そして、ついに明日霊力検査らしい。


 霊力検査とは、陰陽師の名家では恒例の行事らしく、まあ、簡単に言うと、毎年の6歳の霊力量を把握しておきたいのだろう。

 なぜ6歳なのかと言うと霊力の成長段階のひとつの区切りだかららしい。


 で、だ。その霊力検査の前日だからと体を休めるよう久々にオフを貰ったのだが、こんなところで休んでいる暇なんてねぇぇぇってことで何をしようかな〜って考えてたんだけど、小さい頃読んだ本に面白そうなことが書いてあったことをちょうど思い出したんだよね。



 それが "式神"



 この世には俺たち人を脅かす魔物がいる。そいつらを退治するのが陰陽師の仕事である。


 だが、それとは別に古来より存在する妖怪というものもいる。陰陽師はその妖怪を使役する味方のことを式神って言うらしい。

 ひとつ難しいポイントを挙げるならば、自分の方が上であることを示さなければいけないことだ。

 当たり前のことだが、妖怪だって人間の手下として働きたくない。俺も働きたくないしな。



 ということで早速妖怪を探しに行きたいんだけど、せっかくなら強い妖怪がいいよなーと思っていたところ、ナイスタイミングと言うべきかこのタイミングに欲しい言葉が、知らぬ間についていたテレビのニュースのアナウンサーの口から放たれた。



「次のニュースです。先日、栃木の那須連山(なすれんざん)に神級妖怪である九尾の目撃情報がありました。九尾は最高峰の神級妖怪であり、絶対に近づかないでください。」

「これだ!」

「どうしたの?」

「ママちょっと出てくる。昼はいらないから」

「ちょっ。ちょっと……」



 そのテレビの言葉を聞いた瞬間、俺はお母さんに心配かけまい、と一言言い残し、家を飛び出した。お母さんが何か言ってた気がするけどまあ、いっか。


 家を飛び出した俺は東京駅に向かった。栃木まではそこそこ距離があるからね。



 * * *



 ◇栃木県 那須連山


「ここに九尾がいるのか、これは結界か?」



 山の周りに分厚い結界が張ってあった。九尾の目撃情報があったからベテランの陰陽師達が安全のため、張ったのだろう。

 だが、今の俺にはこんな結界無いに等しい。



「はぁァァァァ」



 俺は霊力を全力で放出した。すると、結界が全壊した。見るからに崩れていく光景を見ながら俺は、思わず呟く。



「やべ、大事になるかな」



 まあ、バレるまでに逃げれば問題ないか。



「それよりも本当に九尾はいるのかよ。ん?」

「呼んだか?小僧」



 声が聞こえた瞬間、ものすごい威圧感が俺に襲いかかってきた。



「くっっっ、な、なんだこの威圧感」

「人間には珍しく凄まじい霊力だと思ったが、こんなガキだとはな」

「ガ、ガキで何が悪いんだよ」



 俺はできるだけ平然とした顔で言う。


(なんだよ、これ。これが神級かよ。近くにいるだけで死が迫るような恐怖に襲われる)


 だけどなぁ、こんなとこてビビってちゃあ、一族の復興なんて夢のまた夢なんだよぉぉ。



「な、なあ九尾俺の式神にならねえか」

「なぜ、わらわがお主のようなクソガキの下につかなければならぬ?」

「じゃあお前は何を望む?」

「話す気にはなれぬな」


(やはり、そう簡単には行かねえか、なら、覚悟を決めろ、俺)


「じゃあ力づくで話す気にさせてやるよ」

「ほう、お主のようなガキがわらわに勝てると?」

「勝てるかはわからんが必ず認めさせてやる!」

「ふん、面白い」



 九尾は、ニヤッと笑い、戦闘態勢に入った。俺と戦う気満々みたいだ。


(啖呵は切ったが、本当に勝負になるのか?いや、今までの特訓を思い出せ。死にものぐるいで食らいついてきたこの1ヶ月間の努力は絶対に無駄にはならない。さあこい、九尾。必ずお前を調伏させてやる)


 

 互いに戦闘態勢に入り、式神を懸けた戦いが今始まる。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る