2ピリオド~舞台⑩~

 本屋戸中は、効果が薄れ始めたトラップディフェンスを諦め、マンツーマンディフェンスに切り替えたが、鶴賀中の勢いは止まらない。


 本屋戸中のオフェンス。セットプレーは失敗に終わるが、ショットクロック残り5秒で放たれた三津紀(7番)のフェイダウェイミドルが、執念でリングにねじ込まれた。


 スコア:鶴賀中 24 - 16 本屋戸中


 しかし、鶴賀中はすぐに切り返す。鶴賀中のスローインを本屋戸中の選手がカットしたが、四季がかずみのいる場所にボールを叩いた。こぼれたボールをかずみが拾い上げると、高速のトランジションへ移行。かずみがそのままレイアップを沈める。


 スコア:鶴賀中 26 - 16 本屋戸中


 さらに、本屋戸中PG(4番)の強引なドライブを、かずみが冷静に前に回り込み、オフェンスチャージングを奪い、鶴賀中がオフェンスになる。


 鶴賀中は時間をかけてボールを回した後、五月からのパスを受けた二乃がフリーになり、スリーポイントシュートを放つ。


 ザシュッ!


 鶴賀中がこのピリオドの主導権を完全に握り、点差を広げた。


 スコア:鶴賀中 29 - 16 本屋戸中


 残り時間が2分を切った。13点差は、このピリオドの展開を考えれば決定的だった。本屋戸中のベンチは重い沈黙に包まれている。 本屋戸中のオフェンス。PG(4番)は時間をかけ、慎重にボールを回す。ここで打つべきは、確実に決められるシュートか、流れを変えるスリーポイントだ。


 PG(4番)は、ディフェンスを揺さぶり、インサイドへドライブ。鶴賀中のディフェンスが寄ってきたことを確認すると、ローポストにいたC(11番)へパスを出す。


 C(11番)は五月のマークを受けていたが、五月がPG(4番)のドライブのヘルプで一瞬ボールから目を離したその隙を突き、ボールをキャッチ。そのままフックシュートでねじ込む。


 バスッ!


 スコア:鶴賀中 29 - 18 本屋戸中


 鶴賀中の攻撃。PGのかずみはボールをトップまで運び、試合時間を使い切るようにボールをキープしている。二乃がアイコンタクトを送り、すぐに攻める意思を伝える。かずみは無言で応じ、右ウイングにいた二乃へパスを出す。 二乃がボールを受け取り、かずみ(PG)は、二乃からボールを受け取るハンドオフのふりをして走り寄る。


 ディフェンダーの視線が一瞬かずみに奪われたその隙に、二乃はボールを渡さず、自らフリースローライン(エルボー)方向へドライブを仕掛けた。


 C(11番)がゴール下を離れ、二乃の正面の進路を塞ぎにヘルプに出る。


 二乃はドライブと見せかけ、体を反転させ、ディフェンスの誰もが予測できなかった場所へパスを放った。


 右ローポスト付近で静止していた三久が、その一瞬の隙にディフェンスの死角を通り、ベースラインの下、ゴール下の最も深いスペースへカットインしていたのだ。


 二乃のノー・ルックパスは、完璧なタイミングで三久の胸元へ吸い込まれる。三久の前には誰もいない、完全なノーマーク。


 ザシュッ!


 三久が放ったレイアップは、ディフェンスの努力を嘲笑うかのように静かにネットを揺らす。本屋戸中にとって、これは痛恨の失点だった。


 スコア:鶴賀中 31 - 18 本屋戸中


 この痛すぎる失点で、本屋戸中の選手たちの足が止まる。残り時間は約1分。


 本屋戸中は焦りから、フロントコートへ一気にボールを運ぼうとロングパスを試みるが、それをかずみがパスカット。かずみはそのままドリブルでフロントコートへ運び、トップでボールをキープし、時間を使い始めた。


 鶴賀中は時間をかけてボールを回した。 残り時間15秒。二乃はトップからボールを受け、積極的に仕掛けずにディフェンスとの距離を取る。本屋戸中のディフェンスは、このままシュートを打たれるのを避けるため、一歩距離を詰めた。


 二乃は、残り時間を確認すると、ロングレンジからスリーポイントシュートを放った。


 しかし、このシュートはリングの右側に嫌われ、大きく弾かれた。


 リバウンドは本屋戸中が確保するが、残り時間はわずか5秒。


 本屋戸中のPG(4番)は、急いでボールをコート中央へ運ぶ。しかし、そのボールは、センターラインを越えようとした瞬間、猛然と戻ってきた三久の手に渡った。


 電子タイマーが残り3秒を示したところで、三久はボールを持ち、時計を見ながらハーフコートライン付近から超ロングシュートを放った。


 ボールはリングに嫌われたが、直後にピリオド終了を告げるブザーが鳴り響いた。

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