第8話

「なぁ〜この訓練まだ終わらねぇのか?」


 一週間もこの訓練しかやってないためかウンザリしたのかしびれを切らしたのか諒太が問う。


「う〜ん終わりと言ってもこの訓練に終わりはないからなぁ。でもそうだねぇ確かにこの訓練だけでは飽きちゃうよね〜どうしよっかなぁ〜。テストでもする?」

「テスト」


 少し顔をこわばらせた諒太は不安そうに繰り返した。それを見たモニカは苦笑して続けた。


「大丈夫だよ。別に難しいことをする訳では無いから安心してよ。うんそうだね魔衣と廻魔を同時使用しようかな。あとこれを魔力操作訓練の最終目標としよっか。今できなくても大丈夫!まぁもしできたら次の訓練移ろう!」

「マジ!?これ終われる?」


 繰り返すこの訓練に辟易していたのか諒太はかなりの勢いで食いついてきた。モニカはそこそこなスピードで来た諒太に面食らいながらも続けた。


「うん。終わってもいいよ。まぁ諒太は一回も同時使用をしてなかったから一発でできるなんて思わないけどね」

「いやいやまずやらせろよ。絶対クリアして見せるからな」

「まぁやってみたら?多分できないけど」

「うるせぇ!やる気なくすこと言うな」


 諒太は廻魔を発動させる。体の魔力が高速で廻りすべての体の機能が上昇する。そこから魔力を体外に放出…できなかった。


 やっば!?廻ってるまま外に魔力放出できないんだけど!?そもそもこの中から一部の魔力選ぶのめっちゃムズイんだけど!?


「できないでしょ?」


 モニカは当然だといったふうに言う。


「そもそも諒太はまだ魔力を同時に違う事に運用する訓練をしてないからできなくて当たり前。ま、これは同時使用しなくてもできないこともないけどね。でもこれは教えることはできないかなぁ。」

「いや何でだよ。教えてくれる流れだったじゃん」


 少し戸惑った様子でツッコむ。


「この技術ってけっこう解釈依存なんだよね。魔衣と廻魔の場合だと、ボクだったらこの体が一回り大きい体になってその体の中でに魔力を廻らせるようにするんだ。意味わかる?」

「わからん!」


 いっそ清々しいほどに元気にわからないという返事をする諒太にモニカは呆れた。


「…でしょうね…。ボクも他の人のイメージ聞くとマジで意味わからんかったしこんなもんだよ。だからちゃんとじぶんのイメージでできるようになった方がいいよ」

「ぽいな」

「さ、わかれば訓練しよ?」

「いや待ってくれ訓練はするからここで魔衣と廻魔の同時使用の解釈を考えてさせて欲しい」

「…そっか…うん…そうだねぇ…」


 モニカの言い分に納得したのおイメージをさせて欲しいと言う諒太の言い分にモニカは少し考える様子を見せる。


「まぁいいよそれ位の休憩を許してあげよう」


 …んげぇ…バレてんじゃん…


「どうしたの?バツが悪い顔してるね?」

「べッ別にそんな顔してねぇよ!?」

「いーやしてたね。どうせ休憩とか考えてたことがバレたとかそんなこと思ってたんでしょ。」

「…そんなことねぇ…」

「はいはい、ちゃんとイメージしてね」


 ───────────────────────────────────────────────────


「やぁ、イメージ三日目だけどできそ?」

「全くだ。イメージの足がかりを捕むことさえできそうにない」


 諒太は少し参ったような顔をしてモニカを見上げる。その目にはちょっとヒントを期待する色が宿っている。


「だろうね。そう簡単にこのイメージって掴めないもんなんだよね。まぁだから難しいんだけどね。ちょっと王宮に呼ばれてるからボクはちょっと行ってくるけどちゃんと訓練しててね」

「何しに行くんだ?」


 諒太は怪訝な顔とガッカリした顔を混ぜたような器用な顔をしていた。


「ちょっと諒太それどうやってやるの?」


 モニカは堪えられないと言ったように吹き出して言った。


「まぁちょっと招集がかかったみたいでね。たぶん王国七賢人も王国七天剣豪もみんな招集されてるんじゃないかな。あ、そうだ七天剣豪のなかからいい感じの人探して剣の師匠にしよう!」

「え!?そんなすごい人の教えを受けさせてくれるのか?」

「大丈夫大丈夫。ボク王国七賢人の第一席だからそれくらい大丈夫。それに意外とみんな協力してくれると思うけどなぁ。七賢人と七天剣豪には勇者降臨について知ってるからね」

「へえそっかぁ〜よっしゃ!俄然やる気になってきた!」


 諒太は目を輝かせワクワクが隠せないようだった。


「現金なやつだなぁ。まぁしっかり同時使用できないと剣術教えてくれるかわかんないけどね」

「マジかちょっと頑張るわ」


 よっしゃー!とわかりやすくテンションを上げ訓練に取り組む諒太は今までで一番真剣で一生懸命に訓練に取り組んでいた。


「えぇ…なんでだよぉ…今までもちゃんと訓練に取り組めよぉ…」


 しかしその声は諒太に一切届いていないようだった…。


 ───────────────────────────────────────────────────


「お前が最後だぞモニカ。お前はいつもちょっと遅刻してくる。何とかならないか」


 厳かな雰囲気を纏う男性は老齢ながらもその目からは刺すような視線が放たれており一切の衰えを感じさせない。老齢の男性は圧力をかけるような強い口調で言った。


「何とかする気が無いから無理です!第一席のシェンディさん?」


 モニカの馬鹿にしたような声に円卓に座る一人の魔法使いの顔を歪めさせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る