第21話

わかってはいるのにやっぱり自分の感情はままならなくて、逃げようとしたのか後ずさる彼女を無理やり抱きしめた。




「篠津さん、やめてっ、どうして、こんな…っ」



「それを君が言うの?俺はずっとキョウカを…君を待ってたのに…」




もう黙っていても同じ事だろうとキョウカの名前を出せば彼女は目を見開いて驚いているようだった。本当に気づいていないと思っていたのだろうか。



ずっと見てきた。キョウカのときの彼女も、仕事場で働く彼女も。ずっと見てきたのだから気づかないわけがないだろうに。



腕の中に確かに感じる存在にずっと乾いていた心があたたかなもので満たされる。乾ききった大地を潤すようなそれはあの日彼女との繋がりを作ってくれた雨のようで。



もう二度とこのぬくもりを失いたくないと思った。他の誰かに渡したくないと思った。ずっと自分のそばにいてほしくて、それが叶わないのなら本当に死んでしまうのではないかと思った。



それぐらいに大切で独占したくて、大事で愛おしくて、どうしようもなく好きだ。

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