第23話

驟…篠津さんがシャワーに入っている間に身支度を整えてわたしはさっさとホテルから出ていた。もっと一緒にいたいという思いと、これ以上一緒にいたらきっとわたしは自分で決めたことなのに篠津さんとの関係を続けてしまうという確信があった。



だから未練を断ち切るようにわたしは肌を重ねあったあの場所から逃げ出した。



高いヒールが歩くたびにカツカツと音を立てる。家の近くまできてやっと体が心に付いてきたのかぽろぽろと涙がこぼれ落ちていく。



終わった…終わっちゃったんだ。これでわたしと篠津さんとの関係は終わり。



まだぬくもりを覚えてる。肌の感触も、抱かれた時の力強さも、匂いも全部わたしの中に残っているのにすぐにそれはなくなってこれから一生再び感じることはない。



ポツリ、と頬に何かが当たる。それはすぐに全身に降りかかってあっという間にずぶ濡れになってしまった。



子どものとき、大好きだった飼い猫が死んだのも雨だった。祖父母が亡くなったときも、両親が離婚したときも、家から追い出された時も、彼氏と別れた日も。全部が雨の日だった。



そして今回、初恋を失ったのも雨の日。



雨の日はすべてをわたしから奪っていくのに、雨はわたしのすべてを洗い流して綺麗にして、何かをくれる。だから雨は嫌いで、どうしても嫌いになれない。



わたしはそのまま雨が涙をすべて洗い流してくれるまでその場に佇んでいた。

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