第27話

ごくりと無意識のうちに飲み込まれそうになる自分を律する。危ない。そんな言葉が頭の中に浮かぶ。



そう、この状況、しいて言うなら危ない。それ以外ない。明確に説明はできないけど危険信号が頭の中に響いていますはい。




「あ、えっと、」



「あ、逃げようなんて考えててもだめだよ?そろそろはるちゃんにもわからせてあげないと」




ひえっ、と心の中で叫んだのも仕方ないはず。せんかたなしだよ。



だってだってなんで逃げようとしてるってわかったのエスパーか。しかもわからせるっていったい何をわからせようとしているんだ恐怖しか感じないんですけども。



あわあわととりあえず無駄な抵抗と知りながらも逃げる努力をしてみるものの悟の手のひらに強く押さえつけられて動けない。貼り付けにされた標本の蝶が頭の中で自分に置き換わる。怖い。




「さっ、さと、さとる、」



「ふふ、怯えるはるちゃんもかわいい」




天使の微笑みを浮かべながらの危ない発言はやめてくれ。いろんな意味で心臓に悪い。



いつもは庇護欲掻き立てられる愛らしい小動物な悟も今は捕食する側の動物にしか見えない。ちなみに言うまでもなく捕食されそうになっているのはわたしだ。なぜにこんな展開になったのか。解せぬ。



ぷるぷると震えるわたしに悟はこれ以上はないんじゃないかというニッコリとした笑顔を向ける。誰かオーラが仄暗く見えるのは気のせいだと言ってくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る