かわいいあの子の正しい飼育方法

第1話

ふわりと感じる甘い香りで目が覚めた。この匂いは…うん、フレンチトーストだな。間違いない。



ということは一緒にミルクたっぷりのカフェオレがあるはず。想像だけでおいしい。



カーテンからこぼれる朝にふさわしいすがすがしい光に目を細めながらぽやぽやと覚醒していない頭でそんなことを考える。



眠い。低血圧だから朝弱いんだよ。眠い。二度寝したい。でもフレンチトーストの誘惑は抗いがたい。



夢と現実の間を行き来していればトントンと階段を上がる音がして控えめなノック音がした。



カチャリという音がして「はるちゃん、起きたー?」という声が聞こえてきてタイムリミットがきたことを悟った。



あぁ、でもまぁ頭で理解したのと体は別物なわけでこの睡魔はいきなりどこかに行ったりはしないんだよね。つまりはまだ眠い。




「はるちゃーん?朝だよ?」




ゆさゆさと揺さぶられてここまでかと目を開ける。



光に照らされたマロンブラウンの髪が視界を覆い、見慣れた愛らしい顔立ちの幼馴染みが嬉しそうにニッコリを笑みを作った。




「おはよう、目は覚めた?」



「んー、おはよ。悟」




ふぁ、と隠しもせずに欠伸をしながら体を起こすと悟も「おはよう、はるちゃん」とかわいらしい笑みを浮かべた。




「もうごはんできてるよ。今日ははるちゃんの好きなフレンチトースト作ったんだ」



「カフェオレは、」



「ちゃんと用意してるよ。だから早くおりて一緒に食べよ?」




こてん、と首を傾げておねだりする姿に朝から癒されつつ頷きを返してベッドからおりると「じゃあ待ってるね」と一足早く出ていった悟。



眠気はまだあるもののあそこまで言われて二度寝しようものなら悟が怒らなくても周りが黙っていないだろう。それぐらい我が幼馴染みの人気は果てしなくすごい。

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