第4話:別人
(ハッ!)
俺はまた突然意識が目覚めた。
目の前にはまた白い天井が見える。
(ここはさっきの病院か?)
とにかくまず体が動くか確認のため、ゆっくりと手を動かしてみる。
するとちゃんと指が動いている感覚がある。
それから、腕を自分の目の前に持ってきて手を開くと握るを繰り返して、視覚的にも確認する。
(ちゃんと動いている・・・それに拘束もされてない。)
体は動くようになったが、まだ頭がぼんやりする。
ゆっくりと上半身を起こし、まず自分の姿を確認する。
首から下にピッタリとした白い服・・・いやアニメのパイロットスーツのような物を着ている。
何でこんなコスプレをしているのかわからないが、体に密着しているせいで脱ぐことは困難だ。
次は周囲を確認する。
白くて殺風景な部屋で、俺の寝ていたベッドと出口の扉以外何もない。
(なんだここは?まさか・・・この服は無菌服?ここは隔離部屋?)
俺が困惑していると、プシューと言う音と共に扉が空き、女性が入ってきた。
看護師かと思ったが、日本人とはかけ離れた容姿とその姿を見てギョッとした。
透き通るような白い肌と青い目、ショートカットの銀髪、そして首から下はピッタリとした白い服・・・俺と同じパイロットスーツのような物を着けていた。
彼女は驚いている俺に静かに近づき話しかけてきた。
『ごきげんいかがですか?』
「?」
さらに俺は困惑した。
日本語ではない・・・が、なぜか理解できる。
(容姿から見て外国人だから言語が違うのは理解できる。しかし、俺は日本語しか知らないはずなのに、なぜか理解できる。まるでいつも使っていた言語のような感覚・・・どうゆう事だ?)
自分でもよくわからないが、とにかくコミュニケーションを取る事が大事だと思い、とりあえず日本語で確認してみる。
「日本語ってわかる?」
「ニ・・ホン・・ゴ?」
やはり通じないようだ。
では彼女の言語で試しに話してみる。
『ダイジョウブだよ。トコロでキミはダレ?ココハどこ?』
何故か話せる・・・が、緊張して少しカタコトになってしまった。
『それは良かったです。私の名前は№07(ナンバーゼロナナ)といいます。ここは7号船の一室です。』
『ナンバー?それが名前なの?7号船?ここは一体どの国のどこなんだ?』
『ここでは固有名称はなく、みなナンバーで読んでいます。私には7号船の一室としか説明する事を許されていません。』
その容姿と奇抜な服装、謎の言語、そして彼女の名前や説明を聞いているとまるで現実味がない。
俺の病気が特殊で、治療のために海外の無菌室に隔離された・・・という可能性はないだろうか?
いや・・・それなら、コスプレによるドッキリの方がまだ信じられそうだ。
『どうされましたか、ガレリア様?』
『え・・・ガレリアって俺の事?』
『そうです。あなたはこの船の乗組員ガレリア様です。』
『・・・?いや違うけど。』
『いえ、そうです。』
この女性が何を言っているのか理解できなかったので、一から自分の事を説明した。
『あなたは地球という星の日本に住んでいる岡田 正則で30歳の派遣社員で無能で生きる価値のない人間だという事ですか?』
『いや・・・そこまでいってないけど・・・まあ大体あってはいるけど。』
(聞いてて悲しくなってきた。)
『にわかに信じがたいですが、あなたの話が真実なら体と中身が違うという事ですね。』
『体と中身が違う?』
『ではお見せしましょう。』
彼女が中空で指を素早く動かすと、俺の目の前の空間に画面が現れた。
そこには見たことがない黒髪のアジア系の若い男性が映っている。
『それがガレリア様、つまり今のあなたの姿です。』
『いや、これが俺の姿だと言われても・・・って・・え?』
俺が喋ると画面の中の男も口をパクパクさせる。
まさかと思い、表情を変えたり、顔を動かしたりすると全く同じ行動をとる。
『これはカメラに映った俺を映像で見せているのか?』
『そうです。』
(姿が変わっている?まさか脳移植したとか?それとも前世の記憶が蘇ったとか?)
『ちなみに体に不具合などありませんか?』
言われて体を動かして調子を確認すると、思うままに動く。
前の不摂生していた年老いた体に比べて、健康な若い体だから当たり前ではある。
『問題ない。』
『承知しました。中身が違おうとも体がガレリア様なら、何の問題もありません。』
『いやいや、問題あるでしょ。』
『ありませんよ。私の使命はガレリア様の子孫を残す事ですので。』
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